5 / 11
レイとの約束
「レイ、助けて!」
彼が雇われている場所に行き、彼に事情を説明した。
「襲った男たちが、また来るかもしれない。だから、住処を変えよう」
彼は今までの職を失ってまで、居場所を変えてくれた。
大きな町だったから、きっとあの暴漢たちともすれ違うことはないだろう。
でも、場所が変わったせいか、今までよりも生活は厳しくなり、いつもおなかを空かせる生活が続いてしまった。
私たちは確実に追い詰められていた。
「ねぇ、私も働くよ。これ以上、レイに迷惑をかけたくない」
私がそう言うと、彼は崩れ落ちて泣き出してしまった。
「ごめん、ルミはお荷物じゃない。むしろ、役立たずは俺だ」
「どうしたの、レイ?」
なぜ彼が謝るのか私には分からなかった。
「きっとルミは何かの加護を持っている。カラスが暴漢から助けてくれるなんてありえない。だから、すぐに神殿に行けば良かったんだ。俺はそれに気付きながら、黙っていたんだ! 今までごめん。嫌だったんだ。ルミがどっか行っちゃうのが! 俺が、ルミを独り占めしたかったから!」
レイが苦しんでいるのが悲しくて、彼をすぐに抱きしめた。
「私だって、レイと離れたくないよ」
神殿は金を持っている人間や貴族が入れるところだ。
孤児の私たちには縁が全然ないところだった。
そんなところに行ったら、もう二度と会えない気がした。
「ルミ……」
「これからも、ずっと一緒にいてもいい?」
私がそう言うと、彼はますます泣き出していた。今度は感極まって。
透き通ったような青い目が、私だけを見つめている。
彼の手が私の体を優しく触れ、ぎゅっと愛おしそうに抱きしめてくれる。
彼の存在にいつも救われていた。
「ああ、もちろんだ。ルミ、好きだよ」
「私も」
彼と出会ったとき、私は腹ぺこの独りぼっちで、彼が温かく受け入れて食べ物を分けてくれなければ死んでいた。
そんな彼に感謝こそすれ、彼と別れるなんてできなかった。
私も優しい彼のことが好きだったから。
私を見つめるレイの瞳に熱が帯びている。
高鳴る胸の鼓動を感じなら、自然とお互いの顔が近づく。
初めて彼と口づけを交わした。
それから相手を押し倒して肉体関係を強引に迫ったのは私だ。
真っ赤だった彼が、とても愛おしかった。
この日から、私たちは仲間から恋人になった。
でも、彼の負い目は、ますます彼を追い詰める原因となった。
私を飢えさせたくないと、彼は盗みに手を出すようになった。
私に心配させまいと彼は新しい仕事が見つかったと嘘をついてまで。
でも、足の速かった彼だったけど、ある日油断して、とうとうお役人に捕まってしまった。
帰って来ない彼を心配して、私が彼の行方をやっと探し当てたときには、もう彼の判決は出ていた。
盗人は利き手を切り落とされる。
それがこの国の残酷な法律だった。
私が処刑場に向かったとき、彼は檻の中にいた。見せしめのように丸見えの状態で。
観衆がいる中、処刑人が大きな斧を振り上げ、台の上で固定された彼の手を無惨にも切り落とした。
すぐに切り口を焼かれて止血されるが、あまりの非情な状況に私はただ泣き叫んでいた。
処刑が済み、解放されたレイの元に駆け寄った。
血の気を失った彼は、今にも死にそうだった。
「やだ! 死なないでレイ!」
泣きながら彼の体に触れたとき、突然奇跡が起きた。
私の手から光が放たれて、失ったはずの彼の手が元に戻ったのだ。
大勢が見守る中での出来事で、その事実は到底隠せるものではなかった。
「腕が生えたぞ!」
「聖女だ。あの女は聖女だぞ!」
彼の手が切り落とされたときよりも大騒ぎで、私はあっという間にお役人に捕まった。
「やだ、離して!」
レイと引き離されるのが嫌で、必死に抵抗したけど、私は無力だった。
彼は私を取り戻そうと近づこうとしたけど、大勢の人が彼の体を押さえつけ、私たちを引き離した。
「レイ!」
無情にも連行されていく私に彼は必死に声をかけてくれた。
「ルミ、諦めるな。どんなことになっても、お前を絶対に迎えに行くから!」
その言葉は、私の心の支えになった。今は離れて辛いけど、いつか彼に会えると信じて日々を過ごそうと思えたから。
神殿では生活は保証されたが、自由はなかった。
保護の名の下、人が付き、常に監視されていた。
聖女になって数年後。神殿内での生活にも慣れ、私の能力の高さから神殿内での地位が高まったので、それを利用して慈善活動を行い始めた。
彼に会えるかもしれないと願って、貧民層への炊き出しや、治療行為を積極的に行った。
でも、彼が一度として私に会いに来ることはなかった。
慈悲の聖女として民衆に親しまれるようになったけど、私は同時に絶望していった。
レイはもうこの世にいないのかもしれない――と。
盗人として処刑され、しかも聖女の私と一緒にいたのだ。
彼が私を隠していたと誤解されていたとしたら、私がいなくなったあと、もしかしたら悲惨な目に遭ったのかもしれない。
私は聖女として尊ばれるようになったけど、その裏で私を助けて愛してくれた彼は、一人きりとなったあと、一体どうなったのだろう。
便りもなく、彼に一度として会えない事実が、私を不安で覆い尽くしていく。
苦しい生活の中でも、彼がいたから、幸せがあったのに。
私を優しく抱きしめてくれた彼はもういない。
その事実に今頃気づいたけど、受け入れることはできなかった。
さらに、愚王に妻として求められたとき、生きる希望さえも失いかけていた。
あんな男に身を汚されるくらいなら、その前に殺してやる。そんな風に思い詰められるくらい、私は自暴自棄になっていた。
――諦めるな。
もう彼の最後の言葉を信じられなくなっていた。
そんなとき、突然メイアス様率いる軍隊がこの国に攻め入り、サルサン国はあっけなく滅びることになった。
彼が雇われている場所に行き、彼に事情を説明した。
「襲った男たちが、また来るかもしれない。だから、住処を変えよう」
彼は今までの職を失ってまで、居場所を変えてくれた。
大きな町だったから、きっとあの暴漢たちともすれ違うことはないだろう。
でも、場所が変わったせいか、今までよりも生活は厳しくなり、いつもおなかを空かせる生活が続いてしまった。
私たちは確実に追い詰められていた。
「ねぇ、私も働くよ。これ以上、レイに迷惑をかけたくない」
私がそう言うと、彼は崩れ落ちて泣き出してしまった。
「ごめん、ルミはお荷物じゃない。むしろ、役立たずは俺だ」
「どうしたの、レイ?」
なぜ彼が謝るのか私には分からなかった。
「きっとルミは何かの加護を持っている。カラスが暴漢から助けてくれるなんてありえない。だから、すぐに神殿に行けば良かったんだ。俺はそれに気付きながら、黙っていたんだ! 今までごめん。嫌だったんだ。ルミがどっか行っちゃうのが! 俺が、ルミを独り占めしたかったから!」
レイが苦しんでいるのが悲しくて、彼をすぐに抱きしめた。
「私だって、レイと離れたくないよ」
神殿は金を持っている人間や貴族が入れるところだ。
孤児の私たちには縁が全然ないところだった。
そんなところに行ったら、もう二度と会えない気がした。
「ルミ……」
「これからも、ずっと一緒にいてもいい?」
私がそう言うと、彼はますます泣き出していた。今度は感極まって。
透き通ったような青い目が、私だけを見つめている。
彼の手が私の体を優しく触れ、ぎゅっと愛おしそうに抱きしめてくれる。
彼の存在にいつも救われていた。
「ああ、もちろんだ。ルミ、好きだよ」
「私も」
彼と出会ったとき、私は腹ぺこの独りぼっちで、彼が温かく受け入れて食べ物を分けてくれなければ死んでいた。
そんな彼に感謝こそすれ、彼と別れるなんてできなかった。
私も優しい彼のことが好きだったから。
私を見つめるレイの瞳に熱が帯びている。
高鳴る胸の鼓動を感じなら、自然とお互いの顔が近づく。
初めて彼と口づけを交わした。
それから相手を押し倒して肉体関係を強引に迫ったのは私だ。
真っ赤だった彼が、とても愛おしかった。
この日から、私たちは仲間から恋人になった。
でも、彼の負い目は、ますます彼を追い詰める原因となった。
私を飢えさせたくないと、彼は盗みに手を出すようになった。
私に心配させまいと彼は新しい仕事が見つかったと嘘をついてまで。
でも、足の速かった彼だったけど、ある日油断して、とうとうお役人に捕まってしまった。
帰って来ない彼を心配して、私が彼の行方をやっと探し当てたときには、もう彼の判決は出ていた。
盗人は利き手を切り落とされる。
それがこの国の残酷な法律だった。
私が処刑場に向かったとき、彼は檻の中にいた。見せしめのように丸見えの状態で。
観衆がいる中、処刑人が大きな斧を振り上げ、台の上で固定された彼の手を無惨にも切り落とした。
すぐに切り口を焼かれて止血されるが、あまりの非情な状況に私はただ泣き叫んでいた。
処刑が済み、解放されたレイの元に駆け寄った。
血の気を失った彼は、今にも死にそうだった。
「やだ! 死なないでレイ!」
泣きながら彼の体に触れたとき、突然奇跡が起きた。
私の手から光が放たれて、失ったはずの彼の手が元に戻ったのだ。
大勢が見守る中での出来事で、その事実は到底隠せるものではなかった。
「腕が生えたぞ!」
「聖女だ。あの女は聖女だぞ!」
彼の手が切り落とされたときよりも大騒ぎで、私はあっという間にお役人に捕まった。
「やだ、離して!」
レイと引き離されるのが嫌で、必死に抵抗したけど、私は無力だった。
彼は私を取り戻そうと近づこうとしたけど、大勢の人が彼の体を押さえつけ、私たちを引き離した。
「レイ!」
無情にも連行されていく私に彼は必死に声をかけてくれた。
「ルミ、諦めるな。どんなことになっても、お前を絶対に迎えに行くから!」
その言葉は、私の心の支えになった。今は離れて辛いけど、いつか彼に会えると信じて日々を過ごそうと思えたから。
神殿では生活は保証されたが、自由はなかった。
保護の名の下、人が付き、常に監視されていた。
聖女になって数年後。神殿内での生活にも慣れ、私の能力の高さから神殿内での地位が高まったので、それを利用して慈善活動を行い始めた。
彼に会えるかもしれないと願って、貧民層への炊き出しや、治療行為を積極的に行った。
でも、彼が一度として私に会いに来ることはなかった。
慈悲の聖女として民衆に親しまれるようになったけど、私は同時に絶望していった。
レイはもうこの世にいないのかもしれない――と。
盗人として処刑され、しかも聖女の私と一緒にいたのだ。
彼が私を隠していたと誤解されていたとしたら、私がいなくなったあと、もしかしたら悲惨な目に遭ったのかもしれない。
私は聖女として尊ばれるようになったけど、その裏で私を助けて愛してくれた彼は、一人きりとなったあと、一体どうなったのだろう。
便りもなく、彼に一度として会えない事実が、私を不安で覆い尽くしていく。
苦しい生活の中でも、彼がいたから、幸せがあったのに。
私を優しく抱きしめてくれた彼はもういない。
その事実に今頃気づいたけど、受け入れることはできなかった。
さらに、愚王に妻として求められたとき、生きる希望さえも失いかけていた。
あんな男に身を汚されるくらいなら、その前に殺してやる。そんな風に思い詰められるくらい、私は自暴自棄になっていた。
――諦めるな。
もう彼の最後の言葉を信じられなくなっていた。
そんなとき、突然メイアス様率いる軍隊がこの国に攻め入り、サルサン国はあっけなく滅びることになった。
あなたにおすすめの小説
救国の代償で白髪になった聖女、一度のミスを理由に「無能の戦犯」として追放される ~隣国の覇王に拾われ、愛され、奇跡の力を見せつける~
スカッと文庫
ファンタジー
聖女アリシアは、百年に一度の大氾濫から国を守るため、禁忌の魔力全解放を行い、単身で数万の魔物を殲滅した。その代償として、彼女の美しい金髪は真っ白な「白雪色」に染まり、魔力は一時的に枯渇してしまう。
しかし、その功績はすべて現場にいなかった「偽聖女セシリア」に奪われ、アリシアは「結界を一部損壊させた戦犯」「魔力を失った役立たず」として、婚約者の王太子ギルバートから国外追放を言い渡される。
「失敗したゴミに、この国の空気は吸わせない」
泥の中に捨てられたアリシア。しかし、彼女を拾ったのは、敵対国として恐れられていた帝国の「武徳皇帝」ラグナールだった。彼はアリシアの白髪が「高純度の神聖魔力による変質」であることを瞬時に見抜き、彼女を帝国の宝として迎える。
数ヶ月後。アリシアが帝国の守護聖女として輝きを取り戻した頃、王国では「一度きりの奇跡」だったセシリアの魔力が尽き、本当の滅亡が始まっていた。
「今さら結界が解けたと泣きつかれても、もう私の魔力は一滴も残っていません」
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。
木山楽斗
恋愛
平民であるフェルーナは、類稀なる魔法使いとしての才を持っており、聖女に就任することになった。
しかしそんな彼女に待っていたのは、冷遇の日々だった。平民が聖女になることを許せない者達によって、彼女は虐げられていたのだ。
さらにフェルーナには、本来聖女が受け取るはずの報酬がほとんど与えられていなかった。
聖女としての忙しさと責任に見合わないような給与には、流石のフェルーナも抗議せざるを得なかった。
しかし抗議に対しては、「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」といった心無い言葉が返ってくるだけだった。
それを受けて、フェルーナは聖女をやめることにした。元々歓迎されていなかった彼女を止める者はおらず、それは受け入れられたのだった。
だがその後、王国は大きく傾くことになった。
フェルーナが優秀な聖女であったため、その代わりが務まる者はいなかったのだ。
さらにはフェルーナへの仕打ちも流出して、結果として多くの国民から反感を招く状況になっていた。
これを重く見た王族達は、フェルーナに再び聖女に就任するように頼み込んだ。
しかしフェルーナは、それを受け入れなかった。これまでひどい仕打ちをしてきた者達を助ける気には、ならなかったのである。