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第8章
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ライブハウスは俺の家と大学の間にあった。受付でチケットを渡してドラムがやっているバンドの名前と自分の名前を告げて金を払うと中へ入った。
照明などの機材や音響設備などで、ろくに客なんて入っていないのに狭苦しく感じた。開演時間をを五分過ぎたころに着いたのだがまだ始まっていなかった。ステージでは最初のバンドがスタンバイをしている。
やがてフロントマンが手を挙げてスタッフに合図をした。照明が落ちて曲が流れた。ポップな印象の洋楽だった。その曲と共にいったんはけたメンバーが袖からステージへ現れた。またフロントマンが手で合図をすると曲がフェードアウトして会場が静かになった。ドラムがスティックでカウントを刻んだ。そして曲が始まった。
退屈な曲だった。ありがちなメロディに、なにかの受け売りのような歌詞。なにも心に残るものがなかった。
俺の気持ちなどよそに、そのバンドのフロントマンはステージ上を激しく動き回ってギターをかき鳴らしながらがなりたてていた。
それを見ているとだんだん苛立ってくるのがわかった。こんなくそみたいなライブで金取るのかよ。
二つバンドを観終わったところで帰ろうかと思ったが誘ってくれた手前、そのバンドを見ずに帰るのも気が引けて結局とどまることにした。
誘ってくれたドラムの奴は四番目のトリ前に出た。その前の二バンドもくそみたいなバンドだった。ひとつはコミックバンドみたいでふざけた曲が売りなのだろうが、いかんせん演奏が雑すぎて、聞くに堪えなかった。何人かの客は出ていった。もうひとつはギターの弾き語りだった。愛だの恋だのと鬱陶しかった。
目当てのバンドもゴミ同然だった。死ねとさえ思った。
ライブを見ながら俺は自分の曲を省みた。聴かせられるようなものなのだろうかと。こんなバンドが恥ずかしげもなく出ているのだから、気にせずに出てみてもいいのではと思ったがやっぱり怖さのほうが強かった。
キューバリバーを飲みながら演奏を聴いている。最後の曲はバラードだった。これもくそみたいな出来だった。曲の中盤ごろにはドラムにどんな感想を言えばいいのか、それを考えていた。
考えているうちに曲が終わってメンバーがはけていった。次で最後か。どうしようか、もう帰ろうかと思っていると俺を誘ったドラムがやってきた。もう帰ると言うと彼は言った。
「トリのバンドは見たほうがいいよ。マジですげえから」
ここまでですげえバンドがいなかっただけに俺はにわかに信じられなかった。
「キッド・スターダストっていうんだけど、この間まで大阪でやってて、最近また帰ってきたんだよ」
照明などの機材や音響設備などで、ろくに客なんて入っていないのに狭苦しく感じた。開演時間をを五分過ぎたころに着いたのだがまだ始まっていなかった。ステージでは最初のバンドがスタンバイをしている。
やがてフロントマンが手を挙げてスタッフに合図をした。照明が落ちて曲が流れた。ポップな印象の洋楽だった。その曲と共にいったんはけたメンバーが袖からステージへ現れた。またフロントマンが手で合図をすると曲がフェードアウトして会場が静かになった。ドラムがスティックでカウントを刻んだ。そして曲が始まった。
退屈な曲だった。ありがちなメロディに、なにかの受け売りのような歌詞。なにも心に残るものがなかった。
俺の気持ちなどよそに、そのバンドのフロントマンはステージ上を激しく動き回ってギターをかき鳴らしながらがなりたてていた。
それを見ているとだんだん苛立ってくるのがわかった。こんなくそみたいなライブで金取るのかよ。
二つバンドを観終わったところで帰ろうかと思ったが誘ってくれた手前、そのバンドを見ずに帰るのも気が引けて結局とどまることにした。
誘ってくれたドラムの奴は四番目のトリ前に出た。その前の二バンドもくそみたいなバンドだった。ひとつはコミックバンドみたいでふざけた曲が売りなのだろうが、いかんせん演奏が雑すぎて、聞くに堪えなかった。何人かの客は出ていった。もうひとつはギターの弾き語りだった。愛だの恋だのと鬱陶しかった。
目当てのバンドもゴミ同然だった。死ねとさえ思った。
ライブを見ながら俺は自分の曲を省みた。聴かせられるようなものなのだろうかと。こんなバンドが恥ずかしげもなく出ているのだから、気にせずに出てみてもいいのではと思ったがやっぱり怖さのほうが強かった。
キューバリバーを飲みながら演奏を聴いている。最後の曲はバラードだった。これもくそみたいな出来だった。曲の中盤ごろにはドラムにどんな感想を言えばいいのか、それを考えていた。
考えているうちに曲が終わってメンバーがはけていった。次で最後か。どうしようか、もう帰ろうかと思っていると俺を誘ったドラムがやってきた。もう帰ると言うと彼は言った。
「トリのバンドは見たほうがいいよ。マジですげえから」
ここまでですげえバンドがいなかっただけに俺はにわかに信じられなかった。
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