婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。

藤宮

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兄上登場

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『さて、壇上ではこのように、真偽の確認が難しいことが起きております。そしてこれは日常に発生しうることでもあるのです』

 いやいや、怪我なんかどこにもないよね、そう私が思い浮かべた瞬間、殿下の声を遮り、魔法で会場内に響き渡る音。あの勢いでは、処刑だの追放だのなんの根拠も資格もなしに叫びそうだったから、間に合った、というところだろうか。

「っ、この私の言葉を遮るとは、だれだっ」
 だが殿下の声は、講堂内に響く声に再度かき消された。

『私が以前にご提案させて頂いた「真実を写したもの」≪写真≫は、皆様の大切なひと時を後世に残せるものとして開発いたしました。そして、本日私が提示いたします魔道具は、この写真をさらに進化させたものとなります』

 一度舞台の明かりがすべて落ち、再度灯りがともると、壇上に銀の髪をきらめかせた男が立っていた。

 それは今日のこの観覧席にいる人々がその登場を待ち望んでいた人物の姿でもあった。
 わっ、と声が上がり、その登場だけで拍手を受ける美麗な男。

『ご来賓の皆様、急ではございますが、プログラムを変更いたします。発表者はローズ・ロレーヌ・ローザリア、そして私、ハーデンベルギア・エスター・ローザリア。我々二人による最新の魔道具。コンセプトは、「煌めく笑顔を、貴方に」』

「きゃあ~っ! エスター様ぁ~っっ!」

 先程まで勝ち誇ったような笑みを私に投げかけていたティルナシア嬢が、我が兄上の登場に頬を染め、キラキラしい笑顔を浮かべる。その瞳には、兄上だけが映っているかのように。

「エスター様ぁ、わたしぃ、ず~っとローズ様に虐められていたんですぅ。今日も、本当は、エスター様と一緒にこの舞台に立って、一緒にカメラの発表ができるはずでしたのにぃ~」
 もじもじと、潤んだ瞳で兄上を見つめ上げるが、兄上は彼女を一顧だにせず、私に向かって耳にある魔具を指し示して合図を送る。

 私は軽く頷くと、舞台袖に向かって指示を出した。
 予定とは違う兄上の行動に、舞台袖にいる少女--次の発表予定者だ--にのみわかるようにハンドサインを送る。本来ならば、この耳にセットされている魔具の紹介実演があってからの兄上登場だったわけだが。
 ちなみに、魔具と魔道具の違いは曖昧で、兄上は大体サイズ感の違いで使っている。 

【ローズ、大丈夫かい?】
 耳元で兄上の声がする。
 今日、お披露目するはずの魔具からの音。

 次の発表者、奇才たるアイリス・イリス・アリアリス侯爵令嬢と兄上の共同開発である遠隔通話機--テレインフォーム、アイリスはテレテレと命名すると言い張っていた--からの音はクリアだ。

 まだ限られた相手との通話にしか使えないため、アイリスにも兄上にも不満だらけの魔具ではあるが、本日の発表の最後を飾るに相応しい研究成果であるはずだった。
 …いや、まだ、取り返せる、そう信じたい。

【はい、兄上】
【予定よりは早いが、せっかく婚約破棄と叫んでくれたんだ、この機をみすみす見逃してなるものか、だ。もう我慢する必要もないしね。ここは私に任せなさい】
【ですが、】
【いいからいいから。おにいちゃまに任せなさい】

 茶目っ気たっぷりに微笑む兄上の姿に、舞台袖の役員たちは頬を染める。
 ついでに殿下の腕に縋っていたはずのティルナシア嬢が、兄上に駆け寄って、兄上のその手に自分の手を重ね、己の胸に引き寄せた。

「エスターさまぁ、早くあの子を公爵家から絶縁してください~、わたし、わたし、本当につらくってぇ…」

『気持ち悪いな、触らないでくれないか。大体君は誰?、何故私の名を知っている?、私は君に名を呼ぶことを許した覚えはないのだが?、貴族としての心得もマナーも教養もないと一見してわかる気味の悪い君にファーストネームもミドルネームもファミリーネームも、軽々しく口にしてもらいたくないんだが?、とにかくその気持ち悪い手を離してくれないかな?』

 感情の乗らない兄上の声は怖いが、何故か彼女は頬を染めた。

「もぅ、そんなこと言ったら、めっ。なんですよぉ?、エスターさまぁ、本当にあの子、性格悪いですよね!、エスター様の邪魔ばっかりして!、あんな子のせいで、エスター様は苦労したんですよね~、私もあの子に、いっぱいいっぱい虐められたんですぅ~、わがままばっかりで、エスター様もずーっと大変だったんですよね、公爵家の恥晒しな娘はさっさと捨てましょう~、それがエスターさまの、公爵家の、そしてこの国のためなんですぅ~」

 拡声魔法を維持したまま、兄上は淡々と続ける。ついでに彼女の声にも拡声魔法をかけたようで、隅々まで、甘ったるい声が響いている。

 会話にならない会話が続く異様さを、客席の方々が眺めている。
 時間が勿体ない、と私はひっそりため息をついた。

 彼女の瞳にはたっぷりの涙。それでいて、しっかりと兄上の手を握りしめ、自身の胸で挟むかの如く押し当てている。私は、ふと、こういった場面を大型の幕に映し出せれば面白いのではないかと思い浮かべた。

 例えば今。舞台下で観覧する諸兄には、遠視の魔法や魔術を行使しない限り、細部を知ることは難しい。
 だから、こう、演劇のように舞台上を同じ大きさで見せるのではなく、強調したい場面を切り取って見せることで、話を盛り上げる…今ならば、兄上の言葉をなぞらえて、兄上の手に焦点を当てて、大きく映す。握られている手、胸元に引き寄せられ…うん、多分胸を触らせられている、兄上の手。…からの、眉間に縦筋の入った兄上のお顔とうるうるの彼女の顔を対比させるようにこう…兄上ー。

 考えがまとまらないので、とりあえず忘れないように反芻しよう、兄上に伝えようと心のメモに追記する。
 舞台中央付近では、兄上の不機嫌な声が続いていた。

『私が公爵家の人間と知っての無礼なんだね? 再度いう。私の名を軽々しく呼ぶのはやめたまえ、そして即刻その手を離したまえ』

「大丈夫ですよ、エスターさまぁ、いくらエスター様が発明好きの変人でも、ご両親はエスター様を愛していますわぁ。癇癪持ちのわがまま娘のせいで、お寂しかったのですよね、でも、その寂しさがエスター様の才能を開花させたのですぅ。だから、大丈夫ですわ~」

 発明好きの変人…兄上は確かにその通りの人物だが、見ず知らず(と兄上が言っている)の、男性に胸を押しつけるような破廉恥令嬢に言われたくはないだろう。差別と言ってくれてもかまわない。

 軽くディスリスペクトしながらもキラキラとした瞳で熱心に兄上を見つめ、兄上の手を自分の胸から外すと、今度は彼女自身の頬に押し当てた。兄上の手の甲にすりすりと頬を。
 兄上の眉がしらがぎゅぎゅっと寄る。
 兄上は視線は客席に向けた。

『さて、例えばこのような場面』
 気を取り直せなかったか、多少低い声。つらつらと語り始める。

『もし、≪写真≫でこのような一場面を切り抜かれたと致しましょう。皆様がその≪写真≫を目になさったら、どうお思いになるでしょう。二人の関係は?、少女との逢瀬?、約束を交わしたところ?』

「きゃっ、いやん、エスターさまったらぁ、そんな、私たちの関係だなんてぇ、恥ずかしぃ~」
 兄上の手を握ったまま、ティルナシア嬢は腰から肩から髪から、フリフリ、フリフリ。

『例えば私に妻がいたり、婚約者がいた場合。あるいは皇家の一端たるこの私に身持ちが悪い男であると噂を付けたい場合。
 今此処で皆様がご覧のこの場面の≪写真≫を撮り、こちらを、と端的に告げるだけで充分と思われませんか?
 あとは≪写真≫を目にしたものが邪推してくれますから。
 婚姻関係は破綻し、同時に家同士、ひいては国同士の契約も泥沼になるでしょう。悪辣な計画です』

「えぇ~、エスター様には、婚約者も夫人もいないじゃないですか~、何言ってるんですか~、ふふ。私とお・そ・ろ・い、ですねっ」

 いやいや、何をもってお揃いなのかと問いたい。
 兄上は片眉を上げてティルナシア嬢を一瞥すると、再度、名前を呼ぶな、その手を離せ、と口にする。
 殿下が(一応)侍らかしている娘なので、無礼者とか身分を弁えろとか、口にしにくいところが身分社会の闇だ。

『しかし、実際は、皆様が今ご覧になっていらっしゃるように---私にとっては名前も知らないどこぞの小娘が、無礼を通り越して頭がおかしいとしか思えない様子で公爵家の長子である私の名を許しもなく何度も何度も呼び、何処の無頼漢か襲撃者かのごとく駆け寄り、うらぶれた路地か道端の辻君娼婦のごとく私の手を勝手に掴み、品のないしなをつくりながら何処の性犯罪者なのか胸や頬に無理矢理触れさせ、離せという私の言葉をまるっきり無視し続け、皇族の血も入る我が公爵家自慢の美姫、優秀で思いやりにあふれた心優しい私の小さな姫君を、こともあろうに性格が悪い我儘娘と侮辱し、我が家の姫を追い出せと公爵家に命令しているのです。現状皇国に公爵家は皇帝陛下の姉君、我が母の名であるところのローザリアのみ。つまりは皇帝陛下の甥である私に、皇帝陛下の姪である妹姫を、公爵家から絶縁しろ、切り捨てろと命令しているのです。それは遠回しに殺せ、と言っているに等しい。この、どこの馬の骨とも知れぬ小娘は、公爵家直系長子に向かって、次代のローザリア公爵を弑するよう命令しているのです。そしてその娘はイヴァン・カイ・アロー第二皇子殿下の新たなる婚約者だと第二皇子殿下ご本人がおっしゃる。まだ陛下と公爵家の話し合いは終わっていないにも関わらず、あたかも決定済みであるかのように、第二皇子殿下の意思が陛下の意思であるといわんばかりに。ああ、勿論ローザリア公爵家は粛々とこの婚約解消を受け入れましょう。何せ、第二皇子殿下は政を無視し、公爵家の姫をないがしろにし、陛下の意思を翻したのです。二転三転することはありますまい、そのような、公爵家を、皇家をも下にみたような、何が重要か十七にもなってわからぬものに、今後の期待が出来ましょうか、いいえ、できません。するつもりもありません。そう、彼らは、自身が何を口にしているのか理解できていないのでしょう、もう十五の成人を二年も経過しているにも関わらず。この皇国魔法学園に在籍しているにも関わらず。それはつまり、「そういった考えの持ち主」なのです。こちらに来られている貴兄方にはお分かりいただけるでしょう、イヴァン第二皇子殿下がローザリア公爵家をどのように考えているのか、陛下をどう思っているのか。翻って私は、第二皇子殿下の姿があるせいで、この声の調子だけで頭の悪いベタベタな甘ったるい、だが言っている内容は傲慢な、この傲岸不遜な小娘の手を振り払うことすらできず、我が家の麗しの姫は常に一方的に誹りを受けねばならないのです。しかしながら、≪写真≫はそれを語れない…っ』

 ……兄上、絶好調ですね…身分社会ですよ?
 さらっと演繹法と帰納法を混ぜ合わせた事実と推測が、あたかも殿下「が」陛下と我が家「に」敵意をもっているのだと示す。
 実際は、主導しているのはそのお嬢さんだろうし、つけられた難癖はきっちりただの難癖でしかないことを証明してはいるのだが。

「ハーディ!、貴様!!」
 兄上に向かって殿下が声を上げるが、兄上にとってはどこ吹く風、だ。

「ひどぉい、エスターさまぁ、私を無視するなんてぇ。もぉー、ぷんぷん」
 ぷくり、と頬を膨らませてから、小首を傾げてにこり。兄上の手を離さない。
 兄上は上座に冷たい視線をやって、顎先をちょい、と動かした。

 弾かれたようにキュベレ君と宮廷魔術師長の孫であるディーン君ことディーン・ドロテア・ディードナルド君がティルナシア嬢の元に駆け寄ると、彼女を兄上から引き離した。兄上の目力に負けたようだ。

 ディーン君が背後から彼女を抱えるように引き離したが、いやぁん、えすたぁさまぁん、と口走り、その細い腕を兄上に向けてぱたぱたと動かす。慌てて彼女の口を押えるディーン君。
 とりあえず、キュベル君、その髪飾りを返してもらいたいのだが。

 浄化の魔法を身に纏う兄上。
 キラキラしい光に包まれてから、客席に顔を向けた。

『さて、そもそも、私が≪写真≫の魔具を作り出すきっかけとなったのは、此処にいる我が妹、淑女の鑑たる美しきローズ・ロレーヌ・ローザリアの言葉からでした』

 兄上の(盛っている)言葉に、私は客席に向かって一礼した。
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