【R18】【BL】籠の中の鳥は夏を歌う

サディスティックヘヴン

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本編

十六羽

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 なんやいい感じになった僕と星司クンやったけど、さすがに僕の体がもたんくて、えっちなことはよぅでけんやった。……恥ずかしいしな。

 でも、星司クンは一緒のお布団に入って、僕の体を撫でながらいっぱいキスしてくれた。そして、たくさん話をした。ここまでのこと、これからのこと。

 一番に教えてくれたんは、お母はんのことやった。

「ほんま? お母はん、ほんまに目ぇ覚ましはるの!?」
「ええ。もしかしたら、もう目覚められたかもしれません。会いに行きましょう、近いうちに」
「うん!」

 星司クンの話では、僕を食べようとやって来る鬼たちから僕を守るために、お母はんは全部の力を使うてしもうてて、それで寝たきりになってたんやって。

 でも、星司クンの鬼が、僕を食べてしもうたから、もうそれに力を使う必要がのうなって、普通の生活に戻れるらしいのや。

「僕のせいで、今まで……」
「自分を責めないでください、立夏。貴方にはどうしようもなかったことです。それに、これからは普通に暮らせるんですから」
「そうやな」

 お母はん、ずっと寝たきりやったから、きっとすぐには退院でけへんやろなぁ。リハビリとかも必要やろし。

 まぁ、リハビリが必要なんは僕も同じや。
 星司クンに助けてもろうた後、僕にはようわからん術で壊れた僕の体を治してくれたんやって。ほとんど綺麗になったんやけど、鬼に舐められた左目の視力は元には戻らんやったって。元々色素の薄かった僕の茶色い目は、左だけちょっぴり青みがかった色になった。

 それから、骨盤周りもわややって、歩けるようにはなるけど、普通には戻らんって。

 星司クンはえらいすまなさそうにしてはったけど、そんなん構やしまへん。段差がキツイ言うても、普段から階段もそうそう使わんし、走ることもない。特に不都合があるとは思えんやった。

 ところで、鬼と同化してしもうた星司クンは、意識や姿はほとんど星司クンのままやけど、もう人間ではなくなってしもうたらしい。何を食べて生きていくんか、見た目が元に戻るんかは、これから追々やっていくらしい。

「あともうちょっとで卒業やのに……」
「構いませんよ。夏休み中にどうにもならなければ、そのまま中途退学します」

 もったいない話や。
 でも実際に、髪の毛や爪は切れても、牙や肌の色はどうにもでけへん。身長、いうか体の大きさも前と違うしな。

「それより、貴方自身のことを考えなければ。これからは、立夏、貴方が我々八咫の当主となるのですから」
「そう言われても、全然実感が沸かへんなぁ。……自信ないし」

 僕がそう言うと、星司クンは微笑んだまま頷く。

「俺が支えます」
「でも、なんで僕なんや……お父はん、いてはるのに……。やっぱり、僕じゃないほうがええんと違うかな、お父はんが当主のまんまで代役を立てるとか」
「立夏は、俺といるのは、嫌ですか?」
「えっ。そんなことあれへん! ……一緒にいたぁよ?」

 なんでそんなこと聞くのやろ。不安になって星司クンから目を逸らしてしまう。そしたら、顎を掴まれて星司クンの方を向かせられた。

「立夏、貴方にはもう結界は必要ない。どこにでも行けるし、好きなように生きられるんです。でも、穢れへの抵抗が弱いことに変わりはない。わかりますか」
「ウ、ウン……」
「見ての通り、俺は八咫を離れられません。今までもそうでしたが、なおさら、こんな体では他所で生きていけない。逆に、能力がなく、生贄としての価値を失った立夏はこのままでは八咫にはいられない。今まで貴方が自分では何一つできないように育てておきながら、奴らは貴方を追い出すでしょう、何の支援も与えずに」
「…………」
「俺が貴方と一緒にいるためには、これしか方法がなかったんです……。でも、今の立夏なら、嫌だったら出ていくことができます。今までみたいに、閉じ込められているわけでも、拘束されているわけでもないんですから。でも、でも……もしも出ていくときには俺には黙って出て行って欲しい」
「なっ」

 星司クンは片手で顔を覆ってもうて、僕にはどんな表情をしているんか見えんくなった。

「黙って見送れる自信がない……むしろ、監禁して一生どこにもいけないように縛り付けてしまいそうだ、いや、絶対にそうします。足がうまく動かないから、立夏は俺から逃げきれないでしょう? 座敷牢に閉じ込めて、食事も着替えも、お風呂も、何もかも俺だけが世話をするんです。立夏の可愛い顔も、可愛い声も、俺だけが知っていればいい。立夏を抱いて寝るだけの生活をしたい……」
「え……それは……、冗談、やんな?」
「……ええ、冗談ですよ。もちろん」

 星司クンはいたずらっぽい目ぇしてニコッて笑うた。
 もちろん僕かて星司クンがそんなことするなんて本気で思うてへん。でも、間ぁがあったしな……。
 ていうか、星司クンが言う「カンキン」って、僕にとっては今までとまるで同じ、どこも変わらへんのやけど。そうか、僕ってカンキンされてたんやなぁ。

「僕は、星司クンと一緒におるよ。そう言うたやろ? しやから、そのためやったら、なんでもやるわ。お勉強も、頑張るし……」
「ありがとうございます。立夏、俺の可愛い人……ようやく貴方を鳥籠のような生活から解き放ってあげられる。嬉しいです。でも、これからもずっと側で貴方を守らせてくださいね」
「星司クン……」

 星司クンに見つめられると胸がきゅうっとなった。星司クンの顔が近づいてくる気配がして、僕はそっと目を閉じる。降ってきた唇はいつもより冷たくて、歯が鋭かった。

「俺は貴方だけの鬼……俺は貴方のもので、貴方はもう、俺のものだ。貴方の魂のほとんど全部を、俺が食べてしまったんだから。俺と一緒に生きて、俺と一緒に死ぬんですよ、貴方は。死すら俺たちを分かつことはできない……」
「あっ、星司ク……はぁっ……」

 僕の鎖骨の下らへんを、星司クンの牙が撫でる。チクッとした痛みが走って、血を舐め取られてるのがわかった。

 星司クンの言うとおり、僕はきっと、八咫の家に囚われていた。そしてその鳥籠を出たとしても、今度は星司クンの腕の中に囚われるのや。

 それでもいいと思うた。
 こんなに心地良い檻の中なら、ずっと囚われていたい……。

 窓の外の夏を感じながら、僕はそっと目を閉じた。







――了――
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