【R18】【BL】籠の中の鳥は夏を歌う

サディスティックヘヴン

文字の大きさ
18 / 27
オマケ

風邪ひき立夏

しおりを挟む
 陽が傾き始めた18時半、立夏は自分のために中庭に建てられた、正方形の離れの部屋にひとりで座っていた。お気に入りの場所である肘掛け窓を開け放ち、気だるげにしゃぼん玉を吹いている。その後姿は昔と全く変わらない。

「立夏」

 星司が声を掛けると、容姿も精神も実年齢より幼い彼の恋人はゆっくりと振り返った。その白い肌がいつもよりも赤く、とろんと眠たげな目は潤んでいる。

「星司クン……」

 甘えた声で己の名を呼ぶ立夏。それが熱に浮かされてのことだと分かっていても、胸の高鳴りも昂ぶりも抑えられない。小柄で薄い体を抱き寄せると、いつになく素直に腕の中に収まった。唇を重ね、舌を滑り込ませるとかなり熱い。

「立夏、どうして俺を呼ばないんです」
「……だって、邪魔したら悪い思うて」
「布団を敷きます。少し、待てますか?」
「すんまへん」

 謝ることではない、と言おうとして、それよりもさっさと手を動かすべきだと星司は無言で立ち上がる。支度を整えて戻ってくると、立夏は先程と同じく肘掛け窓にもたれて座っていた。

 あやふやで危なげな眼差しはまるで自由に焦がれる檻中の小鳥のように窓の外を向いている。立夏は風邪に苦しんでいるというのに、星司には彼の少年を可哀想に思うと同時に嬉しくて仕方がなかった。ずっとこのまま何処へも行かずに、自分に世話をされてくれればと願ってしまう。

(もっとたくさん頼ってくれていいのに……)

 不器用で要領も悪く、星司のサポートが欠かせないと思われがちな立夏だが、その実、甘えたり頼りきりになるという事はない。何もかもを周囲の人間が取り上げてしまうから成長しないだけで、彼自身は時間をかければなんだってできるのだ。

 そんな立夏を愛しく思いながらも、星司もまた彼の先回りをしては彼のやるべきことを取り上げる。



 ☆ ★ ☆ ★




 母屋から住み込みの医師を呼び、薬湯を用意させた。それをきちんと全量飲ませ、口直しの牛乳飴を与えながら、星司は床に伏せる立夏の額に濡れ手拭いを乗せた。

「おおきに」
「いいえ。俺も、気づかずすみませんでした」
「あ、あかん、顔上げてや? 僕が悪いのや、ボケッとしとったから……」

 それでも、星司は深く下げた頭を起こすことはなかった。その膝の上でぎゅっと握られた拳に、立夏の柔らかな手が重なる。

「そないぎゅっとしたら、痛ぁなるよ? なぁ、僕が眠れるまで、なんか読んでくれへんかな。僕、星司クンの声、好きや」
「では、祈祷きとうでもしましょう。待っていてください、護摩壇ごまだんを持ってきます」
「ええって、星司クン。ええって! ……側に、おってや?」
「っ……!」

 さっと立ち上がった星司だったが、上目遣いで寂しそうな目をする立夏を置いては行けなかった。一晩中つきっきりで看病したおかげで、立夏は翌朝にはずいぶんと良くなっていた。その割に全く風邪菌を移してもらえず星司は少し悔しいのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...