聖女の結婚~逆ハー強制ルート?~聖女は性女、伴侶達は腹黒最強S夫でした!?

しろくまさん

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二章「結婚の儀」

閑話「イオとコレウス」前編

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「貴方のせいで、一人寝ですよ」恨みがましく呟いた。パクレットがパースランの側で寝てしまい、聖女は伴侶の間で眠る日だから、今夜は大人しく寝るしかない。

 コレウスが食事を終えてお茶を飲む横で、テーブルを片付けている。通常より遅い食事でも、ゆっくりと楽しめるコレウスは、やはり貴族だからだろうか。

 神殿は規則正しい毎日で、自分の身の回りのことは自分でしていたから、時間になると体が自然と決まったように動いてしまう。

「タリー、タッカの疲れは抜けたか?」わたしの言葉を無視して、コレウスが声を掛ける。
「まだかな、今夜はゆっくり眠らせたい」確かに、タッカの動きはいつもより緩慢だ。

「寝仕度が整った頃に、伴侶の間へ治癒魔法を掛けに行こう」コレウスが提案し、
「助かるよ。儀式も始まるし、疲れを引きずってほしくない」タリーがほっ、と息を吐く。

「タリーにも掛けるぞ。しっかり休め」コレウスの言葉でタリーを見直すと、目の下の隈が濃いし、怠そうにしていた。
「バレちゃったか。うん、僕も疲れてる」コレウスは頷いた。

「ヴェロニカは聖女の間で寝かせるぞ。イオが相手をしてくれる。もし夜中に元気になれば、二人でこちらに来ればいい」なるほど、そうきたか。わたしもタリーに頷きかける。

「そうですね。二人とも、しっかり休んで下さい。明日と順番を逆にしましょう。多分、ヒビスクスは夜通し働くでしょうし」タッカを寝かせるなら、そうなるだろう。

 コレウスはパースランを潰すほど、精霊に奉仕した後だ。流石に聖女の相手までは出来ないから、わたしに任せるということか。恨み言の返事なんだな、と納得した。

 欠伸をし始めたタリーとタッカを伴侶の間へ促し、ヴェロニカを聖女の間へ誘う。お風呂に入って待ってるね、という返答で勃ちかけた。あいかわらず無邪気に煽ってくれる。

「侘びになったか?」うきうきと片付けるわたしを笑いながら、コレウスが立ち上がる。
「それ以上ですよ、ありがとう」パクレットも愛しているが、聖女と過ごせる時間は貴重だ。

「『楽しんでね』と、パクレットから伝言だ。健気な恋人だな」伸びをしながら自室に向かう、大きな背中に驚きの目を向ける。

 そう言えば先日パクレットに、御子を孕んだ聖女を独占していた時期が懐かしい、とぼやいたことを思い出し、頬が熱くなった。

 侍女を呼び、汚れ物を持ち出して、ヒビスクス用の夜食と夜間用の飲み物を準備しておいて貰う。今夜はタッカは出かけない予定だが、急に誰かが呼び出される事もよくある。

「あまり手を掛けさせて頂けないので、寂しいくらいです。もう少し、我が儘を言ってくださいませ」遅くなったことを謝ると、気にしないでいいと笑顔で返された。

 使用人には仕事、恋人には気遣いが必要だ、と心に留める。
 いつものように戸締まりをして、神殿で祈りを捧げて献灯を消し、今日の仕事を終えた。

 優しいパクレットと、いつも周囲に気を配る癒やし手コレウスに心中で頭を下げて、聖女の間へ向かった。
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