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【第一章】チューニング
ある日の風景
しおりを挟む閃光、跳躍、死の舞踏。
きらめくビジョン。暗闇で戦う三人の少女。
意識を閉じると、いつもそれらが浮かび上がる。
巨大な敵と戦っている。満たされた表情で戦っている。
これは記憶。これは理想。
遠く離れた私の夢。
「──でね~──先輩が~────って言うの~!」
ノイズ。ビジョンが揺らめく。視界はぼやけた現実を映す。聞こえてはいないが記憶はされる。
「────キモ~い!──ありえね~!」
ノイズ。ビジョンが揺らめく。視界はぼやけた現実を映す。聞こえてはいないが記憶はされる。
「ね~! いっちーもそう思わない?」
ノイズ。ビジョンが崩れる。視界はくっきりと現実を捉える。望んではいないが再生される。
私は突っ伏していた上体を起こす。
照りつける嘘のような日差し、賑わう教室、吐き気を催す制汗剤の臭い。
現実の空気──同調の臭い。
「キモ~い! 死ねば?って感じだね~!」と私は応える。
「ちょっと、いっちーキツすぎっしょ~!」
周りのみんなが一斉に笑う。
休み時間、周回軌道上に私は居た。
※
ネットぎわ、バレーボールが高く浮く。
追いかける視線を天井の照明がキラリと刺す。
ポジション上、ここを決めるのは私である。
「いっけー! イチハー!」
クラスメイトの声がした。
私の跳躍に迷いはない。アドレナリンの分泌が私の肉体を突き動かす。
しかし──である。結果的に私はスパイクを諦めた。
ジャンプの瞬間、視界に相手チームのお粗末な守備が映ったためだ。
私はそれを見て冷静になった(授業レベルではこれが当然なのだが)。この守備に全力を叩き込むのは余りにもナンセンスであると思えたのである。
「ほいっ」
間の抜けた声を出し、私はプッシュでボールを沈める。
「やったー!」
クラスメイトたちが駆け寄ってくる。
大袈裟なお祭り。
──周回軌道上。
※
「ただいま~」
枯れた私の声に応えるように、母が家の奥からやってくる。
エプロン姿で手を拭いて。夕食の時間はとっくに過ぎているのだ。
「おかえり。今日もカラオケ?」
「うん。ハルカたちと」
ローファーを脱ぎ、母を追い越し、部屋へと向かいながら私は答える。
「ご飯は食べたの?」
「まだ。勝手に温めて食べるから大丈夫」
「そう?」
「ありがとう」
私は階段を上り、二階の自室のドアを開ける。
電気をつけず、カバンを投げ出し、制服のまま私はベッドへと倒れこむ。
「あぁ~……」
枯れた喉から奇声が漏れ出す。口から魂が出ているのかもしれなかった。
目覚まし時計の針がいやに大きく響いていた。
周回軌道上……、周回軌道上……、周回軌道上……。
時計の鳴き声はそう訴えているように感じられた。
乱れた髪が視界を埋める。時間経過とともに頭が次第に冷えていく。
やがて私は目を閉じ、今日一日を振り返った。
周回軌道上……、周回軌道上……、周回軌道上……。
「つまんなかった~……」
周回軌道上。
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