時田の高校生活

時田総司(いぶさん)

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Kとのコト

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Kの父が死んだ。


葬儀は俺、時田の所属する野球部の部員全員が、何故か出席するという事態となった。この野球部の監督の(監督さんと呼ばれている)方針で、部員の家族に不幸があった時に全員で出席するというふうになっているらしい。
葬儀中、会場の後ろに居た大人達が、その弔事という儀式にも関わらず薄気味悪く何故か笑顔で居たのが、甚だ理解できなかった。

時間が進んでいき、お焼香をあげるとき、俺の世界がまるで死後の世界に居るかの如く、灰色で無機質、温かみのまるで無い世界に変わっていった。

(これは……何だ……?)

俺はこの現象を経験したことがある。曾祖母が死んだ日と、同じだーーーー。

(回想)

「時田、全然泣かないね」
「アイツ、中学生の分際で、人が死んだ時に涙も流さないのかよ」
「人の心が無いんだよ……」

「……」

曾祖母の遺影に顔を向け、俺はお焼香をあげに、まるで生気を失った顔でゆっくりと足を進めていく。

その時ーー、


『死ねって言え』


幻聴(?)が聞こえてきた。心無い、残酷で無惨な、幻聴がーー。


(『死ね』? ひいばあちゃんは死んでいるのにーー?)


『死ねって言え』


『死ねって言え』
『死ねって言え』
『死ねって言え』
『死ねって言え』

(ああ、幻聴か。今年、精神科に入院してる。病気か……)

俺は遺影の目の前まで歩き、ひとり立っていた。お焼香をあげ、手を合わせる。


『死ねって言え』


(し……? ……)

俺は手を合わせ、肘を張り背筋を伸ばした。そして、


ーーーー。


只、まっすぐ立っていた。


(回想終了)

Kの父の遺影。俺は灰色の世界でその目の前に立っていた。


『死ねって言え』


!? ーー。

手を合わせ、肘を張り背筋を伸ばした。



(くたばれ)



((!?))


自分自身を、


疑った。


(何で、人が死んだ時に、人でなし、Kの父、他人の家族に、自分が、自分の言葉なのか、死者の冒涜、冗談ではすまされない、何が起きた、弔事という儀式にも関わらず、キモチワルイ、俺 は 最 低 だ)

ふと、灰色の世界がはれていたことに気付く。そして、遺影のすぐ脇の席に居た、Kの顔に目がいった。泣いていた。

恐らく、俺があんなことを思ったコトは知らなかっただろう。単純に、父親の死が辛かった、父親の思い出を思い出していたんだと、予想した。

震える声で言った。

「が……、頑張れよ……」

Kは少しだけ頷いていた様に見えた。

ーーーー

葬儀の帰りの車で、


「アイツら、大人達がムカつく」


「!」


「ああ、後ろで笑顔になってやがった」
「Kが可哀想だ」

先輩達が大人達の態度に不満を持っていることが分かった。


(大人達がおかしかったから、それで、精神病の発作が起きて……)


言い訳を見つけようとしている自分が醜くて嫌だった。


その日か、数日後の夜、Kと話す機会があった。心苦しさでいっぱいだったが、やっとこさ言葉を選んで口を動かした。

「K、俺の家は離婚家庭で……、もうお母さんじゃないけど、お前の場合は、亡くなってもお父さんだから、まだマシだから……」
「離婚したって会えるだろーが。死んだら会えんわ」
「……」


その夜、心に決めた。


Kに対して、申し訳ない、悪いと思っているなら、Kが困った時に力になってやろう。助けてやろう。
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