時田の高校生活

時田総司(いぶさん)

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時田の1本

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3年目の6月頃ーー、


俺は心身ともに疲弊しきっており、限界を迎えていた。イジメ体質の陰湿女子イニシャルHが、中学時代、俺が精神科入院に陥るイジメをこの年の5月にもしてきたからだ。

しかし俺は、この高校の冬の練習で培った精神力が……

そう自分に言い聞かせ、誰にも相談せず、ただひたすら石の様に耐え続けた。


それでもーー、


(今日がまた、始まってしまう……)

毎朝が苦痛で仕方がなかった。野球部の練習では、好きなコトをしているだけに、なんとか全力を出せていた。

そして今ーー、

3年生の思い出試合の打席に、俺はいる。
代打だった。


『初球を叩け!』


代打は、第1球目からフルスイングすると、昔から念仏のように経験者は口を揃えて言う。

しかしーー、

(ーーーー)

その時には、生気を失った俺がもう既に、まともに野球が出きる状態ではなくなっていた。

「ストライーク!!」


『ああっ』


ベンチから不安の声が今にも耳に届きそうだった。

呆然と立ち尽くすだけの俺は、3年近くやってきた高校野球の知識がギリギリ脳裏を過り、頭の中でそれを口にしていた。

(あー、俺は左だから、サードランナーコーチャーが相手キャッチャーの構えを……!!)

ふと、視線を向けた先のサードランナーコーチャー、キャプテンOの姿が、鮮明になりハッとした。

(ーーーー)

キャプテンが、何を考えていたかは分からないが、ただ真っ直ぐ打席にいる俺を見つめる凛とした佇まいに、自然と集中力が増した。

ーーーー!!


「キンっ!」


高々と上がった打球は真っ直ぐセンター方向へ。そして大きな放物線を描いたかと思えば、急に角度を変え、ドッと中堅手の手前へ落ちた。

あっ、フライだ。

打った瞬間そう思ったのだが、高校野球人生で最初で最後のヒットとなった。
ベンチはワッと沸いた。
あの時田が……! 誰もが目を疑った。初球からスイングできなかった後の、2球目をひと振りで……。

1塁ベース上で高々と拳を掲げるベンチに、そっと遠慮がちに右腕を上げ、返した。

(キャプテンが打たせてくれたヒットだ。後でお礼を言おう)

ーーーー

およそ2ヶ月後敢行した、『レギュラー全員のマッサージをする』イベントで、キャプテンにその打席でのコトを話しておいた。
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