ただΩというだけで。

さほり

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睦月のむつごと

16.

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  津田の視線が、チラリと隣を伺った。驚いた顔のまま固まっている乾を見て、目を逸らして苦笑する。

「だからさっきはさすがに、ちょっときつくて。発情期じゃねえと…… 自然には濡れねえから、分かってたけどまぁ、きつい…… よな」

  息で笑ったのか、短い吐息が津田から漏れた。

「まさかΩオレがタチだなんて、思わないもんな」

  彼の言うとおり、Ωの津田がそちら側だとは、考えたこともなかった。なぜそうなのかは分からない。Ωは「抱かれる存在」という勝手な思い込みが、乾の中にも確かにあった。

  でも、そう言われてみれば、発情期で我を忘れた津田はどこか攻撃的だった。医務室で乾を襲い、首筋に跡をつけるようなキスをした彼の振る舞いも、タチだと言われれば納得の力強さで。
  先程も、受け身でいた時よりも上になってからの動きの方が、明らかに滑らかで自然だった。

「…… がんばって彼氏に手料理をご馳走したら、彼は実はシェフでした、って気分です」

  乾は頭に浮かんだ気持ちを、そのまま伝えた。

「別に俺はプロじゃねえけど」

  そう言って笑った津田は、なんとも色っぽくて。でもその色気は、そうと知ってみれば確かに、牡の魅力を匂わせている。その彼を、ただΩだというだけで、当然自分に抱かれてくれるものと思っていたことが、恥ずかしかった。
  しかも、露骨な言い方をすれば、テクニックも経験も、相手の方が格段に上なのだ。乾は渦巻く感情に、思わず大きなため息をついた。

「だからさ、何が言いたかったかっていうと、俺がきつそうにしてたのは、ブランクが長かったからであって、お前のせいじゃないってこと。仕方ねえこと。そんだけ」

  素っ気ない言い方に不安になって隣を見ると、津田はシーツに頬杖をついて乾を見つめていた。目が合うと、まつ毛の長い目を細めて微笑む。
  その顔に、敵わないな、と乾は思った。
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