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睦月のむつごと
15.
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「津田さん…… 」
熱を放出し、息が整うまでの間ずっと、津田の薄い身体を下から抱きしめた。汗ばんだ素肌に触れているだけで、嬉しくて気持ちがいい。この人の中で果てた、その高揚と同時に、乾は激しい罪悪感に苛まれていた。
「すみません、俺、だけ…… 」
空想や夢の中では、こんな展開になったことなどなかった。主導権はいつも自分にあって、津田はしとどに濡れてよがり、快楽に溺れて喘ぎ乱れたのに。
そんなのは、まるで童貞の妄想だった。
現実は、男としては散々な結果で。痛い思いをさせ、気を遣わせた上に自分だけが満足して終わるなんて。
不甲斐なさにため息が出た。
すっかり落ち込んで自己嫌悪に陥る乾に、津田は困ったように微笑んだ。
「あのさ」
「はい?」
「言うかどうか、迷ったんだけど…… 」
そこまで言って、まだ迷っているような間をあけた津田は、硬さを失った乾の性器をゆっくりと自分の身体から抜いた。
「…… んっ、俺、実はさ…… 」
乾の隣にうつ伏せになると、一つ息を吐いてから、言いにくそうに言葉を継ぐ。
「タチなんだ」
「…… は?」
乾はその短い言葉の意味がすぐには理解できず、津田の横顔を見つめた。彼はベッドに肘をつき、前髪の生え際を掻いている。
「え…… っと…… で、でも、産んだんでしょう?」
「うん」
「うんって…… だって、それなら…… 」
「だから、俺はほんとはタチなんだけど、Ωの俺がタチだと、やっぱ生殖能力ゼロみたいでさ。佐伯が早く子ども欲しい、家族になりたいって言うから…… 妊活の間だけ、交換したんだよ」
「妊活…… 」
「そう、妊活」
「交換…… 」
乾にとっては、思いもよらない告白だった。あまりに驚いたので、おうむ返しにしか言葉が出ない。
「わりとすぐに凛花ができたからさ、俺が挿れられたのって…… 3回くらいだったかな。それっきりだから、俺、実際ブランク16年、なんだわ」
熱を放出し、息が整うまでの間ずっと、津田の薄い身体を下から抱きしめた。汗ばんだ素肌に触れているだけで、嬉しくて気持ちがいい。この人の中で果てた、その高揚と同時に、乾は激しい罪悪感に苛まれていた。
「すみません、俺、だけ…… 」
空想や夢の中では、こんな展開になったことなどなかった。主導権はいつも自分にあって、津田はしとどに濡れてよがり、快楽に溺れて喘ぎ乱れたのに。
そんなのは、まるで童貞の妄想だった。
現実は、男としては散々な結果で。痛い思いをさせ、気を遣わせた上に自分だけが満足して終わるなんて。
不甲斐なさにため息が出た。
すっかり落ち込んで自己嫌悪に陥る乾に、津田は困ったように微笑んだ。
「あのさ」
「はい?」
「言うかどうか、迷ったんだけど…… 」
そこまで言って、まだ迷っているような間をあけた津田は、硬さを失った乾の性器をゆっくりと自分の身体から抜いた。
「…… んっ、俺、実はさ…… 」
乾の隣にうつ伏せになると、一つ息を吐いてから、言いにくそうに言葉を継ぐ。
「タチなんだ」
「…… は?」
乾はその短い言葉の意味がすぐには理解できず、津田の横顔を見つめた。彼はベッドに肘をつき、前髪の生え際を掻いている。
「え…… っと…… で、でも、産んだんでしょう?」
「うん」
「うんって…… だって、それなら…… 」
「だから、俺はほんとはタチなんだけど、Ωの俺がタチだと、やっぱ生殖能力ゼロみたいでさ。佐伯が早く子ども欲しい、家族になりたいって言うから…… 妊活の間だけ、交換したんだよ」
「妊活…… 」
「そう、妊活」
「交換…… 」
乾にとっては、思いもよらない告白だった。あまりに驚いたので、おうむ返しにしか言葉が出ない。
「わりとすぐに凛花ができたからさ、俺が挿れられたのって…… 3回くらいだったかな。それっきりだから、俺、実際ブランク16年、なんだわ」
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