ただΩというだけで。

逡巡

11.

  そのポイントを確認するように行きつ戻りつした指に、身体は素直に反応する。退ひくはずの指は、何度もそこを撫で擦った。
 
(抜くって言っ…… ？)

  津田が顔を上げた瞬間、乾の手が濡れた屹立の先端を包み込んだ。

「んあ…… っ！」

  不意を突かれて、思わず大きな声が上がる。
  目が合うと眼鏡の奥の双眸が細められ、
「顔もぐちゃぐちゃ」
  唸るような低音でそう呟いた唇が、津田の首すじに吸い付いた。

  獣に喉笛を捉えられた錯覚に、一瞬背筋が冷たくなる。それを追い、首すじをαの口唇が這う本能的な快感が、腰の奥から指先までを甘く痺れさせた。

「………… っ！」

  膨らんだ前立腺を執拗に撫でられ、今にも弾けそうな先端を手筒で揉まれた津田は、声もなく白濁を放出した。
  少しずつ冷めていく身体の熱が、乱れた息を整える。吸われた首筋の痛みが、遅れて脳に伝わってきた。

(抜くって…… そっちか…… )

  吐き出した欲望の分だけ落ち着きを取り戻した頭で、津田は己の身体に残る熱を自覚した。
  抜いてスッキリした性器と違って、身体の奥は冷めやらぬ熱を孕んだままだ。かえって熱く、疼くようになった。

(モット奥ニ、モット熱イノガ欲シイ…… )

  自分の身体が、厳密に「何を」欲しがって泣いているのか、津田には分かっていた。認めたくない、目を背けたい、あまりに直截的な渇望。
「それ」がすぐそこにあり、望めば惜しみなく注がれるとわかっている身体は、それを味わうまで鎮まることはないのだろう。

「落ち着きましたか…… ？」

  首すじに唇をつけたまま、乾が聞く。話すついでのように首すじを伝う汗を舐め上げられ、より敏感になった身体がカッと熱くなった。

「指これじゃ…… 落ち着かねぇよ」