ただΩというだけで。

さほり

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逡巡

27.

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  社の内外に研究室ラボをもち、人員も増えたヒート抑制剤開発室は上役からの期待も大きい。予算を割いている以上、何年も成果を残さないままでいるわけにはいかない。
  ヒート抑制剤開発研究自体は河野がASVを発表する前から暗礁に乗り上げていると言っても過言ではない状態なのに、乾はその開発研究の重責を、若い両肩に担っているのだ。

  そんな立場にありながら、乾には人事権がほぼ与えられていない。津田のようなΩの契約社員が部下として配属されたことは、正に予期せぬ災厄だったのだろう。
  彼の立場を知る今となっては、4月の採用の時点で乾が嫌悪と失望を隠しもしない目で津田《じぶん》を見ていた理由がよく分かる。

  部下を少数精鋭で固めたいと考えるのは当たり前のことだ。そこに突然Ωの契約社員を押し付けられ、当人が残業も最低限の付き合いも断るような有様では、頭を抱えたに違いない。
  しかも乾には、意図せず番にしてしまった養うべき家族がおり、人一倍Ωを嫌悪していたに違いないのだ。

  ベッドサイドに置いた携帯から、メッセージ受信を知らせる音がした。津田が裸のまま腕を伸ばすと、先ほど出ていった乾からの連絡だった。

[服は夕方までに仕上がるそうです
  部屋に届くまでゆっくりしてください
  もし律君のお迎えに間に合わないようなら連絡ください]

  行きがけにフロントに寄り、津田の汚れた服をクリーニングに出してくれると言った乾は、でき上がり次第部屋に届くよう手配してくれたのだろう。チェックアウトは鍵をフロントに返せばいいようにしておくからと言われていた。

[受け取りの時、くれぐれも裸で出ないでくださいね]

  再びメッセージを受信したと思えば、そんな注意が追送されてきた。
  なんだか甘やかされてるなぁ、と、大きなベッドに寝転がりながら津田は思う。
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