子どもの心、大人の心

月澄狸

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子どもの心、大人の心

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 テレビで、子どもたちがいじめについて考える番組を見て驚いた。そこには私がすっかり忘れた「子どもの心」があった。子どもたちが「どんなことをされたら嫌な気持ちか」「やってもいいことといけないこととは?」と考えていた。
 その意見や言葉がハッキリとしている。私は子どもの頃、こんなハッキリとした意識で生きていただろうか……。

「人の嫌がることをしない」。そのテーマで純粋に語り合う子どもたち、いや人々の姿に心打たれた。

 人の嫌がることをしない……「嫌がることをされない権利」というものが人間にあることを、私は近年すっかり忘れていたのだ。


 子どもの頃はクラスメートはみんな学費を払ってもらって学校に来ており、平等な立場だった。たとえ私が勉強ができないからといって、クラスメートから罵られたり馬鹿にされたりする筋合いはなかった。お金がどうとか学生の状況がどうとかは理解していなかったけれど、学生同士は対等であるという理屈はなんとなく分かっていたのだ。


 が、大人になるとどうだろう。まわりの人から「おいお前仕事が下手だな」と嫌味を言われても、それは大抵「お前にゃ関係ない」と返せることではない。


 さらに大人は「相手が嫌がるかどうか」より「正しいか正しくないか」でものを見る気がする。

 たとえば私は結婚したくないのだけれど、世の中には「結婚しなさいよ」「結婚できないのはダメなヤツ」的な空気がある。
 これらの風潮に「そういうこと言われるの嫌なんです」と返したら「そうか、嫌だったのか。ごめんね」と言ってやめてくれるだろうか。いや、止まらないだろう。

「相手が嫌がっているかどうか」なんて関係ない。いじめじゃない、意見なんだから。大人なんだから。大人の攻撃はやまない。

 私は選挙に行きたくないから行ったことない。政治というシステムに納得できない。これはあえて主張しなければバレないかもしれない。でもバレたらしつこく「選挙には絶対行かないとダメだ」と言ってくるような人種も多分いることだろう。

 結婚でも選挙でも、直接関係ない人間に対して正義感を燃やす人は多そうだ。また、「直接人には言わない」けれど「多くの人がそう思っている」ことも多そうだ。


 そりゃ、学校でも避けて通れないこと、やらなきゃいけないことはある。ルールもあるし、ずるいことをしたらずるいと言われる。間違っていると仲間に注意されることもあるし、注意する側の言い分が間違っていることも多分ある。

 でも生徒と生徒の間は間違いなく対等だった。私はそれにすら気づかずいじめられていたけれど、本当は意地悪される筋合いなどなかったのだ。


 じゃあ大人は? 嫌なことを言われても、言い返す権利はないのか? 立場が弱いうちは。

 ……いや、それも思い込みかもしれないな。「仕方ない」なんて怯えていちゃ、対等な子ども同士でもいじめが起こってしまう。本当は格の違いなどないのにそう思ってしまう。
 大人だって本当は上とか下とかないはずだ。私は上下関係の必要性を感じない。立場なんて、今の社会が勝手に決めていることだ。植え付けられているんだ。


 そうは言っても難しいけどなぁ……。
 せめて、純粋な子どもの気持ちを忘れないようにしたい。

「人の嫌がることはしない」ものだと。





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みんなの感想(1件)

青空一夏
2020.11.01 青空一夏

おはようございます😃
「人の嫌がることはしない…」
絶対、嫌がるよね?ってことはしないけれど
青空は、気がつかないうちにしてることも、いっぱいありそうデス😅
いや、確実にあるなぁ💧クスン

2020.11.01 月澄狸

>青空さん こんにちは!
あー、それは私もありそうです(>Д<;)
面白がってくれていたと思ったら嫌がられていたとか……。

なんとなく距離を置かれた気がしても理由が分からなかったり(°ー°;)
一つ意見を言うのでも、誰かにとっては反対意見になったりしますもんね~。
やっぱり難しいですね。


昨日はお気遣いありがとうございました♪
嬉しかったです(ノ∀`*)

いつも優しい言葉をありがとうございます m(_ _*)m


それから、「(完結)皇帝に愛されすぎて殺されましたが、もう絶対に殺されません!」
3ページまで読ませていただきました!
なんだかかぐや姫みたいな歴史的でアジアチックな感じで、文章もすごかったです(*゚ロ゚)!
(アホ丸出しのコメントですみません(*>v<) )

解除

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