繋がる想いを

無月

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恋人編

15.その銀世界で

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響也も俺と添い遂げたいと思ってくれている。
それが俺の想いに勇気をくれる。

「わあ!凄いね侑真パパ。光が反射してキラキラしてるっ」

田舎故の頭の固さが目立つ実家。
帰る度に結婚と子供の二文字が飛び出る環境。
息が詰まる俺は次第に帰郷の足が遠のいていた。
でも……。

「懐かしいな。この景色も」

今日見る故郷は懐かしさだけが胸に宿っている。
帰って来たという気持ちはいつからしなくなったのだろうか。

「私は実家住まいだから故郷のある侑真が少し羨ましく感じるよ」
「響也……」

そのアルカイックスマイルプライスレス……!
いかん。響也がイケメン過ぎるのに可愛過ぎる。雪上の光が乱反射して降り注いでいるように見える。
そしてそれを見逃さない尊がとても良い笑顔をしている。君の能面みたいだった表情が豊かになってパパは嬉しいです。

ガタンゴトンと揺れる電車の車窓から見える雪景色に迎えられ、辿り着いたのは慣れ親しんでいた駅。降り立ち改札を抜けたホールで固まった体を「うん」と上に伸ばして解した。横を見れば響也は涼しい顔で見慣れない田舎を興味深そうに眺めている。

「侑真!」

そこへ掛かる俺を呼ぶ声に俺も響也と尊も外を見た。
そこにいたのは母さんだ。少し老けたな。
母さんは上げた腕を振って注目を集めている。そこに響也と尊を伴って近付くと何故かビキリと固まった。

「母さん?」
「!ゆ、侑真!おまんどがんしたと!?なんねこの美丈夫はっ!」

間抜けな顔で惚ける母さんを呼びかければ顔を真っ赤にさせて俺と響也を交互に見る。
ああ、うん。俺やっぱ母さんの子だわ。響也まじで良い男だよな。
でも母さん。今回の帰郷はこのイケメンを俺の生涯の伴侶として紹介する為なんだぜ。
とは今は言えまい。

「初めまして。私は榎本響也と言います。こちらは息子の尊です」
「初めまして」
「侑真さんには大変お世話になっております」

興奮する母さんに対し、何処までも冷静に自己紹介をする響也と尊。絵面の対比が凄いことになってるけど、口をパクパクさせる母さんが珍しくて面白いから良しとしよう。

「ほら、母さん。家まで乗っけてくれるんだろ」
「あっ、ああ、ええおほほほほ!失礼致しましたわ!こちらへどうぞ!滑りますのでお足元にお気をつけ遊ばしてくださいましね!」

おいおい言葉が乱れてるぞー。大丈夫かな。こんな調子で紹介して。
俺の不安を他所に浮かれる母さんの運転で久し振りの実家に帰って来た。相変わらず雪に埋もれているな。でもまあ例年より少ないって言ってたのは本当だったか。
俺は一階の窓半ば程度の雪の高さを見て一つ息を吐いた。
これのお陰で大雪で身動き取れなくなる心配をせずに予定より早い帰郷となった訳だ。

「あなた!あなた!」

家に着くなり玄関から父さんを呼ぶ母さんの今までにない声に、さしもの父さんも心配になったらしい。「なんだどうした」という声とドタドタという足音がが居間から聞こえる。そして最後に見た時より白い毛が増えた頭を覗かせた。

「何だ侑真じゃないか。なんねそがいに慌ててみっともない」

眉間に皺を寄せて丸めた新聞を握りしめていた父さん。流石に男同士だけあって響也を見ても片眉を上げるだけだった。

「こりゃこんな田舎に似つかわしくないビシッとした身形の男だな」
「ちょっ!父さん止めろよ!」

むしろ敵意剥き出しに威嚇しやがったよクソ親父がっ。
まあ、父さんも昔ながらの田舎の男って感じで、都会の色男は敵に見えるのかもしれないな。俺も最初は響也の美形っぷりに目が据わった自覚あるし。
そんな肝の小さい男なんてどこ吹く風。響也は日頃からそういう視線に慣れているのか、何処までも落ち着いた顔つきで母さんにしたのと同じ挨拶をした。

「む。ま、まあ最近の若者にしては出来た子じゃないか」

響也の物腰の柔らかさに父さんの敵意が霧散した。てか照れてない?いそいそと丸めた新聞広げて皺伸ばす必要今あったか?

「きみ江、外は寒いから中に入って貰いなさい」
「あらまあそうだったわ!ごめんなさいねぇ気が利かなくって。さあ入って入って」

威厳を保とうと必死なゆっくりとした足取りで居間に戻る父さんに、母さんも慌てて中に招き入れてくれる。
俺も冷たい風を遮断する為に玄関扉を閉めた。

「古いだけの家だけど中は暖房効いてるから入って温まってくれ」
「ありがとう。お言葉に甘えさせて貰うよ」
「お邪魔します」

先に居間に2人を通して座らせて、俺は2階の俺の部屋に荷物を運ぶ。久し振りの俺の部屋は掃除はされているけど元のままだった。
母さんも父さんもそのままにしてくれてるんだ。
ちょっと昔を思い出して両親の愛に感動してしまう。

俺、響也とのこと後悔してないけど、でも。きっとこれから告げる告白は親不孝になるんだろうな。

綺麗に磨かれたもう使う事のない勉強机を撫でて、俺の胸はツキリと痛んだ。
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