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恋人編
14.過去と今
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2月。
もうそんな時季が来た。
思い起こせば去年のバレンタインには元カノと結婚の話をしていたんだ。
それがまさか一年もしない内に新しい恋人が出来るなんて、当時の俺は思いもしなかった。
「どうするか……」
悩むのは当然。
去年までは彼女が俺にくれるものだった。
けど今付き合っているのは同性。男同士でチョコを貰うも無いだろう。
でもなー。折角のバレンタイン。去年の苦い思い出を上書きしたい気持ちもあるし、良い日にしたい。したい、が。去年の二の舞になるのも怖い。
いや。響也がそういう事する人じゃないのはわかってる。わかってるけど、一種のトラウマになってんのかなぁ。
「俺ってこんなに弱かったっけ」
手にした市販のチョコを見て思わず呟いた言葉。
それに対する反応なのか、男なのにバレンタインコーナーでチョコを持っている事に対する好奇心なのか、視線をビシビシと感じてハッとする。
冷や汗を掻いた俺はチョコを棚に戻して足早にその場を離れた。
いかんいかん。今日の食材を買いに来ただけだった。
その場を離れてもチョコの事が頭から離れなくて、俺は今までで一番の速さで買い物を終わらせ響也宅へ帰宅した。
「おじゃまします」
合鍵で開けて中へ入れば温められた空気にホッとする。
リビングに入ると丁度響也が尊に勉強を教えているところだった。
「いらっしゃい侑真」
「おかえり侑真パパ」
同棲をしている訳じゃないのに尊はいつでもここが俺の帰る場所だと主張してくれる。その姿に俺も響也もむず痒い苦笑を漏らしてしまう。
「ただいま尊」
買った食材をキッチンに置いてコートを脱いだら俺も尊の隣に座った。
広げている教材を見るに英語の勉強中か。凄いな今の小学生はこんなに深い所まで教わるのか。これ最早移住出来るレベルじゃないか?
幸いにも俺も英語はそこそこ出来る。普段使わないから忘れかけてたけど、響也の両親が海外暮しなのもあって最近再勉強をしだした俺と同レベルの問題を解いている。尊が凄すぎて俺の立つ瀬がない気がする。
「凄いな。日常会話なら普通に出来るんじゃないのか?」
俺が尊の頭を撫でて褒めると、尊はとても真面目な顔で俺を見た。
「何時でも海外に移住出来るようにしたいからね」
「え!?尊留学したいのか?そんな直ぐ?折角俺とも仲良くなってこれからなのに」
いまさら響也と2人きりな生活に戻るのは恥ずかしい半分、寂しい半分だな。せめて中学上がるまではこのままパパの元にいて欲しいと願うのは身勝手か……。
「留学じゃないよ。父さんと侑真パパが結婚するにはカナダとか行かなきゃでしょ。勿論その時には僕も連れて行ってくれるんだよね?」
「「ぐっ!」」
尊の思いがけない言葉に俺と響也の息は同時に詰まった。
「あはは。なぁに?2人して。仲が良くて良いけど」
この子は何処まで大人の事情を把握しているのだろうか。末恐ろしすぎて聞くのが怖い。
「あ。それとも新婚生活には僕みたいなコブは邪魔だから置いて行くの?」
捨てられた子犬の目で俺を見上げる尊。
俺は父性がせり上がり爆発して尊を抱き上げた。そのまま俺の膝の上に座らせて抱き締める。
「勿論一緒だ!!置いて行ったりなんかするもんか!」
「本当?良かったぁ」
弱々しく抱き返してくれる尊が尊い。
抱き締めているが故に俺の目には尊の顔が見えない。けれどさぞかし寂しい目をホッとさせてくれていた事だろう。
そう思っているのに何故か尊を見ていた響也は狼狽えていた。その理由は獲物を捕らえた肉食獣の目で響也を見て親指を立てていた事だなんて知らない俺は、ただただ響也の様子に不安が募る。
「若しかして、やっぱり、響也は俺と結婚まではしたく……ない……のか」
さっきのスーパーでチラリと頭を過った事をまた過らせて、心臓が、痛い。
思わず尊を抱く手に力が籠る。もぞりと動く尊にハッとして力を緩めたけど。
でもその動きに触発されたのか、響也が珍しく尊ごと俺を抱き締めに来た。
「きょ……」
「そんな訳。無いだろう。共に人生を歩みたい相手だから、私は侑真と付き合っているのだよ」
響也と名前を呼ぶ前に吐き出すみたいに告げられた言葉に、俺の心がキュウッと掴まれる。
トラウマが、トラウマじゃなくなる。
「それじゃ、俺と、結婚を前提に付き合っててくれますか?」
過去は、
「勿論。初めからそのつもりだよ」
今、ただの過去になる。
もうそんな時季が来た。
思い起こせば去年のバレンタインには元カノと結婚の話をしていたんだ。
それがまさか一年もしない内に新しい恋人が出来るなんて、当時の俺は思いもしなかった。
「どうするか……」
悩むのは当然。
去年までは彼女が俺にくれるものだった。
けど今付き合っているのは同性。男同士でチョコを貰うも無いだろう。
でもなー。折角のバレンタイン。去年の苦い思い出を上書きしたい気持ちもあるし、良い日にしたい。したい、が。去年の二の舞になるのも怖い。
いや。響也がそういう事する人じゃないのはわかってる。わかってるけど、一種のトラウマになってんのかなぁ。
「俺ってこんなに弱かったっけ」
手にした市販のチョコを見て思わず呟いた言葉。
それに対する反応なのか、男なのにバレンタインコーナーでチョコを持っている事に対する好奇心なのか、視線をビシビシと感じてハッとする。
冷や汗を掻いた俺はチョコを棚に戻して足早にその場を離れた。
いかんいかん。今日の食材を買いに来ただけだった。
その場を離れてもチョコの事が頭から離れなくて、俺は今までで一番の速さで買い物を終わらせ響也宅へ帰宅した。
「おじゃまします」
合鍵で開けて中へ入れば温められた空気にホッとする。
リビングに入ると丁度響也が尊に勉強を教えているところだった。
「いらっしゃい侑真」
「おかえり侑真パパ」
同棲をしている訳じゃないのに尊はいつでもここが俺の帰る場所だと主張してくれる。その姿に俺も響也もむず痒い苦笑を漏らしてしまう。
「ただいま尊」
買った食材をキッチンに置いてコートを脱いだら俺も尊の隣に座った。
広げている教材を見るに英語の勉強中か。凄いな今の小学生はこんなに深い所まで教わるのか。これ最早移住出来るレベルじゃないか?
幸いにも俺も英語はそこそこ出来る。普段使わないから忘れかけてたけど、響也の両親が海外暮しなのもあって最近再勉強をしだした俺と同レベルの問題を解いている。尊が凄すぎて俺の立つ瀬がない気がする。
「凄いな。日常会話なら普通に出来るんじゃないのか?」
俺が尊の頭を撫でて褒めると、尊はとても真面目な顔で俺を見た。
「何時でも海外に移住出来るようにしたいからね」
「え!?尊留学したいのか?そんな直ぐ?折角俺とも仲良くなってこれからなのに」
いまさら響也と2人きりな生活に戻るのは恥ずかしい半分、寂しい半分だな。せめて中学上がるまではこのままパパの元にいて欲しいと願うのは身勝手か……。
「留学じゃないよ。父さんと侑真パパが結婚するにはカナダとか行かなきゃでしょ。勿論その時には僕も連れて行ってくれるんだよね?」
「「ぐっ!」」
尊の思いがけない言葉に俺と響也の息は同時に詰まった。
「あはは。なぁに?2人して。仲が良くて良いけど」
この子は何処まで大人の事情を把握しているのだろうか。末恐ろしすぎて聞くのが怖い。
「あ。それとも新婚生活には僕みたいなコブは邪魔だから置いて行くの?」
捨てられた子犬の目で俺を見上げる尊。
俺は父性がせり上がり爆発して尊を抱き上げた。そのまま俺の膝の上に座らせて抱き締める。
「勿論一緒だ!!置いて行ったりなんかするもんか!」
「本当?良かったぁ」
弱々しく抱き返してくれる尊が尊い。
抱き締めているが故に俺の目には尊の顔が見えない。けれどさぞかし寂しい目をホッとさせてくれていた事だろう。
そう思っているのに何故か尊を見ていた響也は狼狽えていた。その理由は獲物を捕らえた肉食獣の目で響也を見て親指を立てていた事だなんて知らない俺は、ただただ響也の様子に不安が募る。
「若しかして、やっぱり、響也は俺と結婚まではしたく……ない……のか」
さっきのスーパーでチラリと頭を過った事をまた過らせて、心臓が、痛い。
思わず尊を抱く手に力が籠る。もぞりと動く尊にハッとして力を緩めたけど。
でもその動きに触発されたのか、響也が珍しく尊ごと俺を抱き締めに来た。
「きょ……」
「そんな訳。無いだろう。共に人生を歩みたい相手だから、私は侑真と付き合っているのだよ」
響也と名前を呼ぶ前に吐き出すみたいに告げられた言葉に、俺の心がキュウッと掴まれる。
トラウマが、トラウマじゃなくなる。
「それじゃ、俺と、結婚を前提に付き合っててくれますか?」
過去は、
「勿論。初めからそのつもりだよ」
今、ただの過去になる。
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