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バルビス公国への旅立ち

18 供物姫の結婚 2

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「お初にお目にかかります。シャイリー・ヨル・アールスト王女殿下。」

 体調を気遣おうとするバルビス公主と大丈夫を押し通すシャイリーの間に涼やかな声が割って入る。

「ホートネルか。」

「お待ちしておりました、殿下。」

 声の方に目をやれば、銀髪に近い髪に黒い瞳の見目麗しい者が二人の方へと歩いてくる。

「王女殿下。私はこの神殿に努めます神官
、ホートネルと申します。どうぞお見知り置きを。」

「神官様であられたのですね。」

 恥ずかしい所を…先程からどうにもシャイリーは粗相してばかりだと頬を赤らめてしまう。目の前の神官を名乗ったホートネルは男性というよりは中性的で不思議な雰囲気がある。

「神官様…!では、私が乗った馬車やこの神殿の周囲の魔法は?」

「はい、私が施したものにございます。」

「そうなのですね。とても温かく過ごせましたわ。」

 実際馬車の保温機能が無くこの神殿内が外気と同じ位の気温であったならシャイリーは今頃凍っていたに違いない。

「それはよろしゅうございました。」

「ホートネル様のお名は家名ですの?」

 (今後短くても深く付き合っていかなければならない立場の方でしょう。しっかりと覚えていかなければ。)

「いえ、名でございます。王女殿下。神官は家を捨てますれば、家名はございません。」

「まぁ……そうですの…」

 家を捨てる、など嫁いで行く女性と、自分と一緒だ。

「ホートネル、準備は?姫を余り疲れさせたくはない。」

「はい。もう既に、万全に整っております殿下。」

「よらしい。では…やや姫君の体調が心配ではあるが、参るとしましょうか?」

「ええ、私ならば大丈夫ですもの。」

 体調は問題なし、と敢えて見せる為にシャイリーは背筋をさらにピンと伸ばす。

(やっと、これで使命が果たせるのだわ。)

 供物姫の条件は相手の国の王族に嫁ぐ事だ。婚姻後の条件は無く、子が出来なくても問題は無い。婚姻さえ結べば和平の証となる。

 シャイリーはトライトスに手を引かれ、神官ホートネルを伴って婚礼の儀へと進んで行った。







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