[完結]凍死した花嫁と愛に乾く公主

小葉石

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淋しい婚姻の果てに

5 一人きりの夜 5

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 寒さに震える妃シャイリーに、時折抗いきれない睡魔が襲って来た。手足はじんじんと痛み出して到底眠る所ではないと言うのに次から次へと波が覆いかぶさって来る様に眠気の波が来て、とうとうシャイリーは耐えることが出来なくなった。

(窓を、閉めなければ…)

 暖炉の火が消えて久しいこの部屋はきっとバルビス公国の侍女達にも耐え難い寒さだろうと思う。

「ベッド……行かなきゃ……」

 立ちあがろうとしても足に力が入らない。仕方なしに手に触れている襟巻きでしっかり襟元を覆い直してシャイリーはなんとか暖を取ろうとした。

(あの方の手、温かかった……)

 寒さに震えながら睡魔に引き摺られるシャイリーの脳裏にたった一度だけ触れた、ここにはいない名ばかりの夫の手の温かさが思い出されて仕方がない。

(温か、かった………)

 シャイリーは何とか自分で侍女に知らせようとした様に思う。精一杯の事をして去ろうと思っていたのだから。侍女を呼んで、体を温めて、温かいベッドで大きく伸びをするのだ。寒くて寒くて仕方が無くてすっかりと縮こまって固まってしまった身体が十分にリラックスできる様に…


 次の日の早朝。バルビス公邸は今までにない程の騒ぎとなった。ここ最近国境を荒らしていた盗賊団を捕縛した為に一週間ぶりに公主トライトスが邸に帰って来た次の日にである。
 勿論、トライトスの帰還は昨日の内に公主邸に知らせていた。盗賊の捕縛に輸送、アジトを改める作業が思いの外早く進み、トライトス一行は昨日深夜に帰還したのである。本来であれば公主の妻であるシャイリーが先陣切って出迎え、騎士達を労わなければならない所だが、夜も遅くシャイリーは少々体調を崩して休んでいると報告を受けていたトライトスはシャイリーが出迎えていない事を了承した。騎士達もやっと休めるのである。まだまだ国境の警備、輸入品を乗せた荷馬車の護衛、食糧の確保とこの時期には誰もが仕事を抱えているのだ。休める時に休んでおこうと思っても誰をも責められはしないだろう。
 寝覚め良く起きられた早朝にローニーがトライトスの部屋に飛び込んでくるまではそれぞれ皆が清々しい朝の微睡を堪能していたのだろうから。









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