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揺蕩い行く公主の妻

7 アールスト国の晩餐 3

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「殿下、その手紙少し拝見しても?」

 公妃宛の私用な物であるから、本来ならば勝手に封を開けることさえ罪になる。

「あぁ…構わん。内容を知らずして対策は立てられまい。」

 本人はもう読めないと言うのに、バルビス公主トライトスはシャイリー宛のものを開封すらせずに取っておいた様だ。ホートネルはトライトスの前に並べられた手紙を読むためにトライトスの隣へと座り直す。
手紙類はどれも上質な紙の物ばかりで、王家や高位貴族からの物だと一目でわかった。

 ホートネルは一つずつ丁寧に開封していく。

(ホートネル様!ゆっくりと開いたままで…)

 ホートネルは一通一通、ゆっくりと目を通していく。バルビス公妃と共に。

 どの手紙も特筆たる事は書いてはいない。ただ、バルビスでの生活はどうか、体調はどうか?困っている事はないかなどシャイリーの生活面に関することが主な内容であった。

(……お懐かしいわ……)

 静かにホートネルの後ろから手紙を盗み読みしていたシャイリーは、1人懐かしさに浸っている。

「どれも当たり障りはないような内容ですね?」

「だと良いのだがな…」

 次に王家の紋が付いている封はルシュルー妃からのもの。

「ルシュルーからだ。」
 
 これにはホートネルも優しそうに目を細める。ルシュルーからはバルビス公主であるトライトスや神官ホートネルにも時折手紙が届いていた。自身の近況を記したものが多く、その手紙からは不安を感じるような内容は無かった。しかし、その妹がシャイリー妃に書いたものはどうであろうか?
同じ供物姫としてのルシュルーには、供物姫としてシャイリーに思う所があるだろう。実際に当たり障りがない内容ばかりを送ってくるルシュルーであったから本音が書いてあると思うと少し身構えてしまう気持ちもあるのだが…

(まあ!義姉上からですわね?なんと書かれていまして?私からは便りも出せませんでしたもの…心配させてしまったのではないでしょうか?)

 ホートネルの後ろからは、シャイリーの不安そうな声がする。





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