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公主の求めた者
5 シャイリーの行方 5
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見ていることしかできないシャイリーにとって、1日1日と成長を遂げていく子狐達に愛着が湧いてしまって仕方がない。母狐が外出してしまうと、まるで親代わりの様な気持ちになって、触れる事はできないけれどもなんとなしに自分の腕に抱き寄せてしまいたい衝動に駆られて仕方がないのだった。
(皆元気ね。もうこんなに動き回れる様になって…!)
野生動物という物は非常に逞しい。母が赤子を置いて狩りに行く。そうしなければ母狐が飢えてしまうために仕方のない事だとしても、その間産まれたての子狐達は丸裸も同然でひたすらに母の帰りを待たなくてはいけないのだから。もし、母狐に何かあったならば、この子狐達は皆飢えてしまうだろう。
(大丈夫。お母様はすぐに帰ってきますよ。)
いつか……いつか…もし、初夜の晩に夫である公主トライトスがシャイリーの元を訪れていたのならば、自分にもこんな未来があったのだろうか?
(その前に、きっとまた凍死してしまうわね…)
自分自身の体質がこの地と非常に相性が悪いのだから、どんな未来があったとしても遅かれ早かれ結果はおなじだったかもしれない。
(けれど…こんな愛おしい子供達が居たのなら、殿下は優しく微笑んだくださったかしら…)
野生動物とて非常に母性に溢れているのだから、人である自分達の子だとしたらどれだけ愛情を豊かに注げる事だろうか。
(よしよし……無理な事は願わない方が良いのだわ…殿下の中にはきっと愛情なんて無かったでしょうから。)
霊廟での懺悔の言葉は、良心に従って自責の念から出たもので違いないだろうから。
白狐を守り神の様に大切にしているトライトスがこの光景を見たら、きっと大喜びするかもしれない。
この子達が私の子なら良いのに…どう考えても、どんなことを考えてもシャイリーの考えは成就しない事はわかっているのに、溢れ出す考えは止まりそうにもない。
(これを、未練だとか言うのかしら?)
供物姫としての役目も果たせず、幸せな未来も覗く事は叶わない。シャイリーの心はこの巣穴の氷結の様に冷たく、硬く、固まってしまいそうだ…
(魂もですけれど…心も迷子になってしまいそうだわ…)
迷路に迷うと中々抜け出せなくなる時があるだろう。ゴールがあるのはわかるのに、幼ければ幼い程にゴールさえも希望とはならない。果てしない寂しさと、心細さと、この後起こる恐怖に震えて、縮こまってしまいそうになる。
(迷宮には迷った事など無いはずなのに……)
不思議と、シャイリーには迷路に迷う者の気持ちがよく分かった。今の自分の心境もどこか深い深い出口のない迷宮に閉じ込められたかの様だった。
(皆元気ね。もうこんなに動き回れる様になって…!)
野生動物という物は非常に逞しい。母が赤子を置いて狩りに行く。そうしなければ母狐が飢えてしまうために仕方のない事だとしても、その間産まれたての子狐達は丸裸も同然でひたすらに母の帰りを待たなくてはいけないのだから。もし、母狐に何かあったならば、この子狐達は皆飢えてしまうだろう。
(大丈夫。お母様はすぐに帰ってきますよ。)
いつか……いつか…もし、初夜の晩に夫である公主トライトスがシャイリーの元を訪れていたのならば、自分にもこんな未来があったのだろうか?
(その前に、きっとまた凍死してしまうわね…)
自分自身の体質がこの地と非常に相性が悪いのだから、どんな未来があったとしても遅かれ早かれ結果はおなじだったかもしれない。
(けれど…こんな愛おしい子供達が居たのなら、殿下は優しく微笑んだくださったかしら…)
野生動物とて非常に母性に溢れているのだから、人である自分達の子だとしたらどれだけ愛情を豊かに注げる事だろうか。
(よしよし……無理な事は願わない方が良いのだわ…殿下の中にはきっと愛情なんて無かったでしょうから。)
霊廟での懺悔の言葉は、良心に従って自責の念から出たもので違いないだろうから。
白狐を守り神の様に大切にしているトライトスがこの光景を見たら、きっと大喜びするかもしれない。
この子達が私の子なら良いのに…どう考えても、どんなことを考えてもシャイリーの考えは成就しない事はわかっているのに、溢れ出す考えは止まりそうにもない。
(これを、未練だとか言うのかしら?)
供物姫としての役目も果たせず、幸せな未来も覗く事は叶わない。シャイリーの心はこの巣穴の氷結の様に冷たく、硬く、固まってしまいそうだ…
(魂もですけれど…心も迷子になってしまいそうだわ…)
迷路に迷うと中々抜け出せなくなる時があるだろう。ゴールがあるのはわかるのに、幼ければ幼い程にゴールさえも希望とはならない。果てしない寂しさと、心細さと、この後起こる恐怖に震えて、縮こまってしまいそうになる。
(迷宮には迷った事など無いはずなのに……)
不思議と、シャイリーには迷路に迷う者の気持ちがよく分かった。今の自分の心境もどこか深い深い出口のない迷宮に閉じ込められたかの様だった。
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