[完]優しい竜の咆哮

小葉石

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51、竜の決断 3

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「りゅ、竜騎士カーリス殿!!番殿とは!?毒とは一体、どう言うことですかな!?」

 可哀想なくらいミルカイ国王は動揺していた。竜である者の番に毒を盛る…大昔のお伽話に出てくるような国の滅亡が今、ミルカイ国王の面前で展開していく……

「言葉の通りだ。どう始末をつける?」

 見たところ竜騎士カーリスは平静を保っている。番を害されたにしては怒り狂ってはいない。ならばまだ、話し合いの余地がある。ミルカイ国王の背中にじっとりと嫌な汗が伝い行く。返答次第によってはミルカイ王国は世界地図から消えてゆく………

「つ、番殿が、そちらに居られる方、で?
もしや、その方に、毒を盛った者がおる、と?」

 返答を間違わないためには確実に正確な情報を掴むべきと、ミルカイ国王は慎重に言葉を紡ぐ。

「そう言っているだろう……」

 少しだけ、カーリスの声が低くなった…

「そ、それは何とも許しがたい行為ではありませんか!」

 王の周囲にいた者達も騒然とし出すが余計な口を挟む者達は居らず、固唾を飲んで王と竜騎士カーリスの会話に聞き入っている。

「私が手を下したかったのだが、我が番が嫌がったのだ。」

 カーリスに任せていたら、きっとあの屋敷の者達は皆殺しになっていただろう……アースタ王国の王太子がサリャーナに触れただけで本気で殺意をぶつけていたくらいなのだから。
 
 止めて良かった……

 これからの事を考えるとそれが良かったかどうかはわからないけれども、目の前で人が殺されるのを見なくて良かったとサリャーナは心からそう思う。

「で、どこの者達なのでしょう?その不埒な奴らは?」

 落ち着きを完全に取り戻したミルカイ国王は王としての威厳も復活させたようだ。竜の番に手を出すなど、自分の責のみでは済まなくなるような大馬鹿な行為をした者達に、為政者としての怒りが湧き上がる。

「コロント伯爵家の者だ。」

「な!!」

「まさか!?」

「どうして!!」

 カーリスのこの返答には黙っていた者達も黙ってはいられなかった。なぜなればコロント伯爵令嬢ロデアンネは今まで竜騎士カーリスの番と称されてきた令嬢だからだ。なのに、一気に竜の番殺し未遂の犯人の一味として国王の前で他でもない竜騎士カーリスから訴えられているのだから……

「そ、それは…誠で?それは…いや、ロデアンネ嬢は貴方様の番で…しかし、番殿は別に今ここにいて……」

 再度ミルカイ国王は混乱しだす。

「……ロディ…ロデアンネが私の番であったのは本当だ…だが、ここにいるのは以前私の番であった者の魂を持つ者だ。それを害されて私は黙っていようなどとは思わない。」

「そ、それは……今の番殿が、かつての番殿を害そうと?嫉妬から……?…いや、周囲の者達の犯行かもしれませんな…だから、と、すると……」

 竜はどうあっても番を護る。もし、今カーリスの手の中にいる番と称される令嬢を手にかけようとした者がロデアンネ嬢だとしたら、ロデアンネ嬢を拘束し罰する事は更なる竜の逆鱗に触れることになりはしないか……ではこのまま見逃すが吉…?
 
 痺れるように混乱している頭の中で、ミルカイ国王は必死に考えをまとめようとした。










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