Gレポート

働かざること山の如し

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国防総省が144件のUFOのうち、解明できているものは1件という報告を発表し、この国のニュースでも放送された。「宇宙船であることを特別否定もしていない」ということらしい。

なぜ「今」なのか。

この発表で利するものは何だろうか。

世界の覇権を競うような二大国間の「何か」に関わるものだろうか。

ポストパンデミックを想定した一手だろうか。

それともそれら全て含めて、近年独自路線で宇宙進出するあの国に対して先取権を主張でもするのだろうか。

私が聞いた話では、UFOは宇宙船ではなく乗員も宇宙人ではなかった。あれが偽りだったのだろうか。

私が「知る内容」を残しておこうと思う。意味があるのかないのかはわからない。いや、彼らがいうことが事実なら「意味はない」が残しておけば「意味が生まれる」かもしれない。

だから残しておこう。


――――――――――――――――


とある研究施設からいくつかの依頼を受けたことから始まった。
依頼主のIさんに依頼の物を届けた後、ちょうど休憩にはいるから・・・と食事に誘われた。研究施設付属の食堂ですけどね、と彼女はおどけて言った。

食事を終え、彼女は「コーヒーは無料で曳きたてが飲めるんですよ」と言って私の分まで持ってきてくれた。
UFOの話になるまで何を話したか、はっきりとは覚えていない。普通は食事後ソシャゲをしているのだとか、スマホを買い替えがどうとか、そんなことだっただろうか。

UFOの話からはしっかり覚えている、一連の内容は驚きだった。

「Kさん!あははUFOって、あれ宇宙船じゃないですよ!宇宙人でもないですし!」

彼女は言い切った。私はその断言する様に違和感を覚えた。いくつか彼女とやりとりする中で、彼女はいつも事実関係がはっきりしないことは強い言葉は使わなかったからだ。

「Iさんの断言珍しいですねぇ。」

「まぁ、そうですね。UFOのことは置いておいても、宇宙人がいるかいないかだと、おそらく“いる”と思います。確率的に、という感じですが。何より一例目が目の前にいますからね、私達地球人として。」

「あれですか?宇宙人がいるとしても銀河系の端にあたる太陽系に来る必然性がない・・・というのですか?」

「説明長くなりますよ。私は大丈夫ですけどKさんは時間大丈夫ですか?」

そこから彼女はUFOの乗員が宇宙人でない理由を語ってくれた。
それは、何をもって宇宙「人」とするかの定義にもよるけれど、「知性体」とするならば人型以外の可能性が考えられるのに、都合よく地球に来た宇宙人が分かりやすい人型であるのは確立的に低すぎる、ということから語りが始まった。

仮に地球と似た大気組成や環境の星で生まれた宇宙人が移住のために他の星を探した結果地球に行き着いたとしたら、それは星を挙げての大プロジェクトで小さな宇宙船に数人の乗員を乗せて行うようなことではないし、エネルギーの無駄遣いも甚だしい。

もし私たちが他の恒星系に移住するとしたら、驚くほど運よく人類が生き延び、太陽が膨張して地球が住めない状態になったときだろう。移住が目的なら小さな宇宙船ではなく自星から移住するための異星人を(どのような状態にせよ)乗せて、恒星間を移動できる機能を備えた巨大な移民船が周囲にあるべきだ。

それ以外の理由(人工爆発や環境汚染など)ならば同じ恒星系の別の惑星やコロニーなどへの移住した方がリスクも少なく、効率も良い。

また他の知性体を発見したからという理由で地球まで来るのは、さらに考えにくい。地球から一番近い恒星系まで4.37光年で、どのようなエネルギー資源を使ったとしても、恒星間の移動に利用するエネルギーをゼロにはできない以上は時間またはエネルギー、あるいは両方を莫大に必要とする。

地球の側から見たら地球とその異星の1対1に見えるが、異星の側から見たら地球を含む周囲の星を調査する宇宙船をいくつも飛ばすことになる、それは尋常ではない資源を必要とする。

さらに似た組成の星から来た生命体で地球に来るほど技術が発達した知性体が、病原菌のリスクを考慮せず、人前に姿を表す事態が考えにくい。せめて防護服を着用するくらいのことはするだろう。

というようなことを彼女は語った。
私は彼女の説明に宇宙船ではなく宇宙人ではない理由を納得しつつも、最初に彼女が語った内容の違和感がさらに大きくなった気がした。

彼女はUFOが宇宙人を乗せた宇宙船ではない説明をしたが、UFOの存在は否定していない、つまり「あれ」は「宇宙船」ではなく「宇宙人」ではない「何か」だとうことだ。

「Iさん・・・それってUFOが何がしらかの存在であることは否定していませんよね。」

「あ、はい。宇宙船じゃないよっていう説明ですから。」

「つまり・・・」

私は続きを尋ねようとしたところで、彼女は「そろそろ休憩終わりだぁ。」と時計を見ながら呟いた後、大したことでもないようにこう続けた。

「あれは未来の人類ですよ。人類と言っていいか分かんないですけど。」

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