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鶴山の科学者 2
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私は研究者としての栄光を掴んだと思うのと同時に、そろそろ女としての幸せも掴みたいと切に願うようになった。私の年齢も35歳を超えて、このまま独身で孤高の天才と言われることで人生を完結しようとしていたが、単に男と恋愛をして駆け引きで傷つく事や人に依存する事が恐ろしく怖かった。
ブラックホールの研究も終わり新たな課題である「ブラックホールの生成によって生じる時間軸のズレを利用して過去又は未来へ進む」研究を開始した。私は恋愛や恋などで現実から逃げる事はしたくないと、より一層研究に打ち込んでいく様になる。
しかし、1年ほどして軽い過労で2週間ほど入院することになった。病室のベッドから見える大きな木を眺め、青い空を見つめていた。毎日、毎日、色んな人と議論や打ち合わせ、研究に打ち込んでいた日々を思い出すといてもたってもいられなくなって病室から抜け出したい衝動が二、三日続いた。
3日目の夕方頃に孝がケーキとリンゴ3個を持って見舞いにやってきた。孝は椅子を私の横に持ってきて座り「倒れたんじゃな。無理したんじゃろう」 温かい視線を送りながらギュッと手を握って「ぼちぼちじゃな。すぐ元気なるよ」 穏やかな口調で微笑んだ。
私はうつむきながら「1週間も休むと仕事の事で不安になる。私は早く研究したいんだけどねぇ」 孝はリンゴの皮を剥いて一つ口の中に入れて「大丈夫。しっかり休めば体調もようなって、じきに研究させてもらえる。よお、やすみんさいよ」そう言って小皿に一口サイズのリンゴを並べて私の眼の前に置いてくれた。 切ったリンゴはいびつな形をしていて、私のために慣れないことしてくれたのだと思うと少し笑えた。
「あ、そうそう。これ」 真剣な顔で、かしこまった袋を手渡してきた。
「なにこれ?」 すると、ドヤ顔で「入院したら金かかるからな。これ、しっかり持っとくんで」
私は直ぐに封筒を開けて金を確認した。
「お、3万も入ってる。無理したなあ~。貰っとくよ」
孝は照れながら「ここで確認するなよ。あと、普通は一回断って申し訳なさそうに受け取るのが日本人の礼儀ってもんじゃぞ」
「意味わからんけど、とりあえずありがとう」
私はかしこまった袋を戸棚に入れた。
しばらくして「おう、そろそろ帰るけどケーキも置いとるから、しっかり食べて元気だせよ」と席を立った。
「待って。 明日も来てよ」咄嗟に伝えると孝は「ええぞ。病室おっても暇だろうから漫画か週刊誌でも持ってくるわ」そう言って帰って行った。 私は孝を好きとか、恋をしているとか、そんな感情は一切ない。世話を焼いてくれて、気にかけてくれる気のいいおじさんだ。だけど、一緒にいると心地よいし、このまま時が過ぎればいいなあと思うこともある。
だけど、私は孝以外の男の人と遊んだことが無いだけで、もしかしたら素敵な男の人と結婚できるかもと36歳ながら思っていた。 次の日、孝は少女漫画と週刊誌を持ってきた。「元気しとるか、里穂が読みそうなの買ってきたぞ」 私はきてくれたことに嬉しくなって「ありがとう。来てくれたんだね。」と漫画に目を通した。
しばらく、漫画の話や週刊誌の芸能人スキャンダルに花を咲かせた。孝は相変わらず、くだらない話をして笑わせてくれた。 そして、別れの時が来た。
「明日も来てよ」
私は孝と一緒にいたかった。
「ええけど、他の人は来ないのか? まあ、明日からは土産はないぞ」そう言って帰って行った。 また来てくれると思うと胸がソワソワしてきて、私の為に選んでくれた漫画を一気読みした。
だが、その日は気になって寝ることができなかった。なぜなら、孝が買ってきた漫画で最後の一巻だけないのだ。物語の最後がわからなくて1人悶絶して絶対に最終巻を持ってこさせようと思った。
ブラックホールの研究も終わり新たな課題である「ブラックホールの生成によって生じる時間軸のズレを利用して過去又は未来へ進む」研究を開始した。私は恋愛や恋などで現実から逃げる事はしたくないと、より一層研究に打ち込んでいく様になる。
しかし、1年ほどして軽い過労で2週間ほど入院することになった。病室のベッドから見える大きな木を眺め、青い空を見つめていた。毎日、毎日、色んな人と議論や打ち合わせ、研究に打ち込んでいた日々を思い出すといてもたってもいられなくなって病室から抜け出したい衝動が二、三日続いた。
3日目の夕方頃に孝がケーキとリンゴ3個を持って見舞いにやってきた。孝は椅子を私の横に持ってきて座り「倒れたんじゃな。無理したんじゃろう」 温かい視線を送りながらギュッと手を握って「ぼちぼちじゃな。すぐ元気なるよ」 穏やかな口調で微笑んだ。
私はうつむきながら「1週間も休むと仕事の事で不安になる。私は早く研究したいんだけどねぇ」 孝はリンゴの皮を剥いて一つ口の中に入れて「大丈夫。しっかり休めば体調もようなって、じきに研究させてもらえる。よお、やすみんさいよ」そう言って小皿に一口サイズのリンゴを並べて私の眼の前に置いてくれた。 切ったリンゴはいびつな形をしていて、私のために慣れないことしてくれたのだと思うと少し笑えた。
「あ、そうそう。これ」 真剣な顔で、かしこまった袋を手渡してきた。
「なにこれ?」 すると、ドヤ顔で「入院したら金かかるからな。これ、しっかり持っとくんで」
私は直ぐに封筒を開けて金を確認した。
「お、3万も入ってる。無理したなあ~。貰っとくよ」
孝は照れながら「ここで確認するなよ。あと、普通は一回断って申し訳なさそうに受け取るのが日本人の礼儀ってもんじゃぞ」
「意味わからんけど、とりあえずありがとう」
私はかしこまった袋を戸棚に入れた。
しばらくして「おう、そろそろ帰るけどケーキも置いとるから、しっかり食べて元気だせよ」と席を立った。
「待って。 明日も来てよ」咄嗟に伝えると孝は「ええぞ。病室おっても暇だろうから漫画か週刊誌でも持ってくるわ」そう言って帰って行った。 私は孝を好きとか、恋をしているとか、そんな感情は一切ない。世話を焼いてくれて、気にかけてくれる気のいいおじさんだ。だけど、一緒にいると心地よいし、このまま時が過ぎればいいなあと思うこともある。
だけど、私は孝以外の男の人と遊んだことが無いだけで、もしかしたら素敵な男の人と結婚できるかもと36歳ながら思っていた。 次の日、孝は少女漫画と週刊誌を持ってきた。「元気しとるか、里穂が読みそうなの買ってきたぞ」 私はきてくれたことに嬉しくなって「ありがとう。来てくれたんだね。」と漫画に目を通した。
しばらく、漫画の話や週刊誌の芸能人スキャンダルに花を咲かせた。孝は相変わらず、くだらない話をして笑わせてくれた。 そして、別れの時が来た。
「明日も来てよ」
私は孝と一緒にいたかった。
「ええけど、他の人は来ないのか? まあ、明日からは土産はないぞ」そう言って帰って行った。 また来てくれると思うと胸がソワソワしてきて、私の為に選んでくれた漫画を一気読みした。
だが、その日は気になって寝ることができなかった。なぜなら、孝が買ってきた漫画で最後の一巻だけないのだ。物語の最後がわからなくて1人悶絶して絶対に最終巻を持ってこさせようと思った。
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