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邂逅
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人里から遠く離れた広大な山地、その片隅にあるとある山。
山腹には木々が生い茂り、渓流は亀裂のような道筋を描く。この辺りの山地ではありふれた風景だ。
唯一、山の中を一人黙々と移動する女の姿だけは山地一帯でかなり珍しいものだった。
刃物を携えて山腹を隈無く巡る。その足取りに迷いはなく、軽装でありながら大岩を易々と登っていく。山の環境にすっかり慣れている様子だった。
一通り森を物色すると川辺に移る。
(あら......見間違い、じゃないわよね。)
前方を横切る渓流の先に人影を見つけた。この近辺で自分以外の人間を見かけたことは今まで一度もなかった。
その相手、もう一人の女も身軽な出で立ちで、身のこなしも軽やかだった。山で過ごすことに馴れているのはあちらも同じようだ。ここで過ごし始めたのも昨日今日の話ではないのだろう。
周囲に視界を遮るものは無く、お互い相手の姿が確認できる。
(同類、かしら?きっと考えてることも同じよね、得体の知れない人間が身近にいるのは気持ち悪くて仕方ないもの。)
手にしている刃物をしまって相手の方へと歩み寄る。向こうの女もほぼ同時に刃物をしまって歩いてくる。腰元にしっかり刃物を収め、渓流の向こう側をじっとりと見つめながら、水の浅いところへ足を踏み入れる。足元では水流と戯れながら、手を伸ばせば相手の体に触れられるくらいまで距離を詰める。
流水の只中で相対する二人の女、淵音(ふちおと)と空形(そらがた)。
顔立ちこそ違うものの、身なりといい雰囲気といいどこか重なるものがある。背の高さもほぼ同じで体型もよく似ている。
唯一分かりやすい違いは髪で、淵音は鎖骨を覆い隠してしまうほどの長さだったが、空形は肩に触れるか触れないかというぐらいの長さだった。
近づいてもお互い一向に言葉を交わさない。
据わった目、頬の全く動かない表情、正面を向いたまま立ち塞がる体。どれを取っても穏やかな展開を望んでいる人間ではないことは想像できる。
見つめ合っている女の放つ不穏な気配が肌身に触れる。その瞬間、二人の関係性は決まった。
突然、引き寄せられたかのように素早く相手との距離を縮め、手を伸ばして掴みかかろうとする。しかし、前方からも手が伸びてくるのが見え、狙いを変えて相手の手を掴む。
お互い手を絡めて押し合いの体勢になる。足元が水流であるため、激しい動き方はできず窮屈な思いをしなければならない。足元が安定しなければ自ら水流に身を沈めてしまうことになり、腕の力を緩めれば相手に押し倒されてしまう。両手両足に力を込めて体勢の均衡を保ちながら、それ以上の攻めを繰り出すしかない。
力比べを続行しつつ、自分の体をずらして相手を抑え込もうとする二人。すると、空形の方が突然バランスを崩し力が抜けてしまう。その隙を突いて淵音が空形の両手を弾き、小脇に相手の首を抱えて絞め始める。
空形「っ...!?ん...ぐっ......」
淵音の動きの方がやや大きく、空形はそれに振り回されてしまったのだった。
首に腕を巻き付けられて呼吸を奪われていく空形。唇の合間から吐息を次々と搾り出させられる。
空形「くは......こ、ふっ......」
表情はそっぽを向き、呼吸音は渓流が掻き消してしまうため、淵音は空形の様子を直接確認できない。だが腕に感じる手応え、確実にこの女の気道を捕らえている、という実感さえあればそれで十分だった。
せいぜい腕を掴むぐらいの抵抗しか受けていないのを好機と見て、足で後ろから空形の膝を蹴り崩す。
空形「っ...!!ふぅぅっ......」
一瞬体を宙に放り投げられたような感覚に襲われる。脚に流水が纏わりつき、膝から下の裾が濡れて重くなる。
身動きが取れないように追い詰められる恐怖と同時に、自分の服を汚した相手の高飛車な攻め方に苛立ちを覚える。
首を絞められながらも、目の前の脚を両手で抱え込んでしがみつく。母親が赤子を抱き上げる要領で、腕を体に沿わせて脚を持ち上げる。
踏ん張っていた脚が片方自分の意思と無関係に浮き、今度は淵音がバランスを崩してよろける。
淵音「く...!?んうっ...!!」
膝を付かされてかえって足場が安定したのを利用し、空形は自分の体をぶつけて淵音を押し退ける。倒れるまでの短い間、淵音は空形の首を捕らえていた腕をほどき、虚空を一二度掻き回す。締め付けから解放されて空形が最初に見た光景は、淵音が川面に背中を着けて水飛沫を上げているところだった。
裾どころか上体までずぶ濡れにさせられた淵音。背中に服が張り付く感触を覚えて、空形への苛立ちが芽生える。
淵音の内心など一切構わず距離を詰める空形。仰向けの相手に覆い被さり、襟を取って首を絞め始める。
淵音「けほ...く、ひぃ.......」
布で満遍なく首を圧迫されるだけでも体に異様な緊張が起こるが、それに加えて真上から空形の体重ものしかかる。声にならない潰れた悲鳴と共に吐息を漏らし、表情が強張っていく様を晒してしまう。
首が急激に絞まる苦痛に意識を支配された淵音は、脚を空形の懐へと必死にねじ込む。さらに空形の襟を掴み返して勢い良く後転する。
淵音「ふはぁぁっ......!!」
ねじ込んだ足を空形の腹にしっかりと突き立てたまま、自分の真上を滑らせるように相手を飛ばす。
首元の拘束が完全に解けたのと自分のすぐ側で上がった水飛沫が視界に入ってくるのはほぼ同時だった。
空形「はっ...!?あぁぁっ......!!」
水飛沫が収まった直後に淵音が立ち上がり、一拍遅れて空形も立ち上がる。
共に髪までずぶ濡れの二人。再び睨み合うとお互い最初の時よりも陰湿な眼差しをしているのが分かる。
そして、水気を吸った服がぴったりと体にくっついてその輪郭をありありと示す様子も目に入る。
「「............。」」
服の上からおおむね同等の体格だろうと推測してはいた。だが実際の姿を目の当たりにして芽生えたのは女としての対抗意識だった。二人とも日々の作業と鍛練をこなしていて体には自信を持っている。それゆえ相手の女に体でも自分の方が上なのだと思い知らせてやりたい気持ちが強くなる。
岸に上がってどちらからともなく歩み寄り、相手の体に手を伸ばす。指を食い込ませて掴んだのは胸だった。手を広げてお互いの胸を覆い隠そうとするが、豊かな乳肉はとても手中に収まるような量ではなく、いくら押さえ付けても指と指の隙間からはみ出してしまう。
力加減が荒いとは言え、二人が大胆にも触り合いを始めたのは、密かに性欲を燻らせていたこと、そして目の前の女のせいでその性欲に火が着いてしまったことが原因である。
淵音と空形のどちらも一人で暮らしている以上本能をぶつけられる相手はいない。最後に誰かと肌を重ねたのは何年も前だ。そんな中、闘争心を燃やして感情が昂っている時に、性的なプライドを刺激された気分になった。お互い自分の体の内側が煮えているかのような高揚感を覚え、女としての決闘を始めるに至った。
指を這わせて胸を揉みしだく。手のひらに乳首の感触を覚えるとそのまま転がしてやる。
淵音「......ん、っは......」
空形「......ふ、んぅ......」
勝負の最中の興奮は相手に立ち向かう精神的エネルギーになる反面、こと性感に関しては自分の体を脆くしてしまう危険がある。
心身共に熱くなっている淵音と空形も例外ではない。胸を弄る指の動き一つ一つに神経が波立つ。呼吸のペースも次第に上がっていく。
淵音「はぁっ...んん、んく......っふ...!」
空形「...っう...んぁ...はぁ、いぅぅ...!」
体内を流れる邪な電流に痺れていると、次第に体もピクッ、とごくごく小さく跳ねるようになる。
相手の手のひらとずっと触れている乳首は健気にも水気を含んだ服をわずかに持ち上げる。
反応が大きくなってきたのを好都合に思って、そしてそれ以上に自分が達しないうちに勝負を有利に進めたくて、片手で胸を弄ったままもう片方の手を下腹部へ移す。
服の上から輪郭をなぞり、手のひらを密着させて細かく擦っていく。
淵音「んぁ、あぁっ...!んぅぅぁあ...!!」
空形「はぁぁっ、くぁ...!ひぁぁんっ...!!」
抑えようとしても漏れ出てしまう声のトーンが次第に高くなる。濡れた服の上から弄っているはずの股から明らかに水とは異質な感触がする。
相手が限界を迎えるのはもうすぐだ。しかし自分の余裕もほとんどない。
目の前の体だけに集中しながら、力の込もった手付きで執拗に責め立てる。
淵音「いひっ!?んあはぁぁぁああっ...!!!」
空形「きゃぅっ!?うっくぁぁぁああっ...!!!」
体が極限まで緊張した直後、一際大きく甲高い悲鳴が上がる。腰の奥から手足の末端までが小刻みに震える。力の抜けた手で触れている相手の下腹部からは蜜のように重い液体がじっとりと溢れてくるのが分かる。股を頂点とする自分の下半身にも同じ感触が伝わる。
どちらが先に果てたかは分からない。目の前の女が涎を垂らして悶えていたところまでははっきり覚えているが、その次の瞬間からは自分が絶頂している記憶しかない。こうしてお互い体を寄せて余韻を味わう余裕があったということはおそらく同時に達したのだろう。
弛んだ脚が折れ曲がりゆっくりとへたり込む淵音と空形。腰を下ろしてから立ち上がる気配はない。下半身の力が抜けてしまい体を起こす気力がなくなっていたのだった。
「「はぁっ...はぁっ...はぁぁ......」」
しばらくの間、乱れた呼吸を宥めていた二人。息を吸うと胸が広がり、吐く時には腹が軽く締まる。鞠のような乳が揺れ、腹はくびれを強調するかのごとく弾む。
呼吸が落ち着いてくると後ろに下がって若干距離を取る。腰が地面に着いたままおもむろに服を脱ぎ始め、脱いだ服を脇に置いていく。
再び接近して体を密着させる淵音と空形。口を開けて唇を重ねる。舌を絡める度に涎を吸う音が聞こえる。
それと並行して潮にまみれた相手の割れ目に手を差し込む。びしょ濡れの中に指を忍ばせて、汁を絡め取りながら肉壁を擦っていく。もう片方の手は肩に回して抱き合う体勢を取る。
淵音「んん......あぁっ...んむぁぁっ...」
空形「んぅ......ひぁっ...あむぐぅぅ...」
透明な蜜を垂らしているうちに足元には小さな水溜まりができていた。相手の指の動きの一つ一つに反応させられながらも下の口で食らいついて抵抗する。
肩に回していた手を離し、淵音はその手を股間に回して空形の突起を弄り始める。指先で摘まんでキリキリと絞り上げていく。
空形「ぎゃっ...!?ひぁぁぁっ!!あひっ......!」
痛みの混じった刺激にビクンと体が跳ねる。太ももの内側が強張って細かい筋を浮き上がらせる。締まりが弱くなった秘所に淵音の指が深く入り込む。
空形「くぅっ、ふ......!はぁ、はぁっ、んん...!!」
涙を流しながらも淵音を睨みつけ、キスを中断して胸の先端に吸い付く。涎に浸した乳首や乳輪へと歯を立てて甘噛みする。
淵音「ぎひっ...!?んぐぅぅぅっ...!!んはぁっ...!」
堅くなった乳首をさらに硬い歯で転がされ背中を反らして感じてしまう。腹が収縮して内部の筋肉の輪郭が浮かび上がる。余計にこぼしてしまった汁を空形の指が中で掻き回す。
淵音「っいぃぃ......!ふぅぅっ、んんんあぁ...!!」
紅潮した顔で空形を睨みつつ、突起を弄っていた手で今度は乳首を乳輪ごとつねり上げる。指先が空形の胸の頂点に食い込む。淵音は手に力を込めて相手の乳首を押し潰してしまいそうなほど強く圧迫していく。
空形「んぐがぁぁぁっっ!?ひぎゃっ...!!あが......がぇぇぇぁああ......!!」
目を剥いて涎を垂れ流した顔で耳障りな叫び声を上げさせられる。汚れた顔が上を向いてしまうほど上体が反り返る。腰が痙攣して割れ目と淵音の指の隙間からチョロチョロと潮を噴き出す。
先程の反応と比べてもこれは明らかに絶頂しているだろう。淵音は手元に感じる潮の熱さと粘り気を楽しみながら笑みを浮かべる。
空形「ひぃぃっ......ひぃぃっ......んくぁぁぁっ...!!」
今にも倒れてしまいそうなほど弛み切った体に無理矢理力を込めて起き上がる。力みのせいか、怒りのせいか、目を据わらせて淵音を見つめる空形は全身がわなわなと震えている。その漲るエネルギーで握り拳を作って淵音の中へと突き入れる。
淵音「んんぎぃぃぃぃっ!?はぐぁぁぁっ!!ぎひぁぁぁぁっっ...!?」
突如侵入してきた拳に肉壁を蹂躙され、淵音の股は空形の手首を咥えて硬直する。目を剥いて涎を垂らしていても淵音の体は守りを解かなかった。
しかし腕力に自信のある空形は淵音の咄嗟の締め付けなどものともせず責めを続ける。縮み上がる内壁を強引に押し広げ、奥へ奥へと拳を突き刺していく。拳に付いた粘液で滑りが良くなり、空形の拳は淵音の下の口を貫く。
淵音「がひっ!?いぎゃぁぁぁぁぁあああっっっ!!んあぁぇぇぇぇぇっ...!!」
腰の内部を隈無く押し潰され、淵音はけたたましい叫び声を上げて地面に倒れ込む。
手足を投げ出して大の字になり、豊満な体つきを無防備にさらけ出している。股に突き刺さったままの空形の拳の感触に、頭の先から足の末端まで全身が痺れている。
淵音「ふはぁぁ......はひっ...は、ひぃ......」
大口を開けた表情は完全に白目を剥いていて、涙と涎をだらだらこぼすばかりで目を覚ます気配はない。
勝利を確信した空形は念のためにねじ込んでいた拳を引き抜く。割れ目を解放するや否や重い潮がとめどもなくあふれ出てくる。足元一帯に潮がこぼれると、空形を包むように濃厚な匂いが漂う。まるで狩りで仕留めた獲物を味わうように、淵音の匂いをしばらく堪能する。
力比べから始まった戦いを思い返しながら、目の前で伸びている強敵のあられもない姿を見下ろす。自分と同じく実力自慢の猛者を女として沈める、その充実感と征服感に満たされた空形の顔は仄かに緩んでいた。
脇に置いていた服を再び身に付け、足早にその場を立ち去る空形。早く拠点に戻って縄を持ってこなければ、この女を縛れないまま逃げられてしまう。そんなことを考えながら空形は勢い良く駆けてゆくのだった。
山腹には木々が生い茂り、渓流は亀裂のような道筋を描く。この辺りの山地ではありふれた風景だ。
唯一、山の中を一人黙々と移動する女の姿だけは山地一帯でかなり珍しいものだった。
刃物を携えて山腹を隈無く巡る。その足取りに迷いはなく、軽装でありながら大岩を易々と登っていく。山の環境にすっかり慣れている様子だった。
一通り森を物色すると川辺に移る。
(あら......見間違い、じゃないわよね。)
前方を横切る渓流の先に人影を見つけた。この近辺で自分以外の人間を見かけたことは今まで一度もなかった。
その相手、もう一人の女も身軽な出で立ちで、身のこなしも軽やかだった。山で過ごすことに馴れているのはあちらも同じようだ。ここで過ごし始めたのも昨日今日の話ではないのだろう。
周囲に視界を遮るものは無く、お互い相手の姿が確認できる。
(同類、かしら?きっと考えてることも同じよね、得体の知れない人間が身近にいるのは気持ち悪くて仕方ないもの。)
手にしている刃物をしまって相手の方へと歩み寄る。向こうの女もほぼ同時に刃物をしまって歩いてくる。腰元にしっかり刃物を収め、渓流の向こう側をじっとりと見つめながら、水の浅いところへ足を踏み入れる。足元では水流と戯れながら、手を伸ばせば相手の体に触れられるくらいまで距離を詰める。
流水の只中で相対する二人の女、淵音(ふちおと)と空形(そらがた)。
顔立ちこそ違うものの、身なりといい雰囲気といいどこか重なるものがある。背の高さもほぼ同じで体型もよく似ている。
唯一分かりやすい違いは髪で、淵音は鎖骨を覆い隠してしまうほどの長さだったが、空形は肩に触れるか触れないかというぐらいの長さだった。
近づいてもお互い一向に言葉を交わさない。
据わった目、頬の全く動かない表情、正面を向いたまま立ち塞がる体。どれを取っても穏やかな展開を望んでいる人間ではないことは想像できる。
見つめ合っている女の放つ不穏な気配が肌身に触れる。その瞬間、二人の関係性は決まった。
突然、引き寄せられたかのように素早く相手との距離を縮め、手を伸ばして掴みかかろうとする。しかし、前方からも手が伸びてくるのが見え、狙いを変えて相手の手を掴む。
お互い手を絡めて押し合いの体勢になる。足元が水流であるため、激しい動き方はできず窮屈な思いをしなければならない。足元が安定しなければ自ら水流に身を沈めてしまうことになり、腕の力を緩めれば相手に押し倒されてしまう。両手両足に力を込めて体勢の均衡を保ちながら、それ以上の攻めを繰り出すしかない。
力比べを続行しつつ、自分の体をずらして相手を抑え込もうとする二人。すると、空形の方が突然バランスを崩し力が抜けてしまう。その隙を突いて淵音が空形の両手を弾き、小脇に相手の首を抱えて絞め始める。
空形「っ...!?ん...ぐっ......」
淵音の動きの方がやや大きく、空形はそれに振り回されてしまったのだった。
首に腕を巻き付けられて呼吸を奪われていく空形。唇の合間から吐息を次々と搾り出させられる。
空形「くは......こ、ふっ......」
表情はそっぽを向き、呼吸音は渓流が掻き消してしまうため、淵音は空形の様子を直接確認できない。だが腕に感じる手応え、確実にこの女の気道を捕らえている、という実感さえあればそれで十分だった。
せいぜい腕を掴むぐらいの抵抗しか受けていないのを好機と見て、足で後ろから空形の膝を蹴り崩す。
空形「っ...!!ふぅぅっ......」
一瞬体を宙に放り投げられたような感覚に襲われる。脚に流水が纏わりつき、膝から下の裾が濡れて重くなる。
身動きが取れないように追い詰められる恐怖と同時に、自分の服を汚した相手の高飛車な攻め方に苛立ちを覚える。
首を絞められながらも、目の前の脚を両手で抱え込んでしがみつく。母親が赤子を抱き上げる要領で、腕を体に沿わせて脚を持ち上げる。
踏ん張っていた脚が片方自分の意思と無関係に浮き、今度は淵音がバランスを崩してよろける。
淵音「く...!?んうっ...!!」
膝を付かされてかえって足場が安定したのを利用し、空形は自分の体をぶつけて淵音を押し退ける。倒れるまでの短い間、淵音は空形の首を捕らえていた腕をほどき、虚空を一二度掻き回す。締め付けから解放されて空形が最初に見た光景は、淵音が川面に背中を着けて水飛沫を上げているところだった。
裾どころか上体までずぶ濡れにさせられた淵音。背中に服が張り付く感触を覚えて、空形への苛立ちが芽生える。
淵音の内心など一切構わず距離を詰める空形。仰向けの相手に覆い被さり、襟を取って首を絞め始める。
淵音「けほ...く、ひぃ.......」
布で満遍なく首を圧迫されるだけでも体に異様な緊張が起こるが、それに加えて真上から空形の体重ものしかかる。声にならない潰れた悲鳴と共に吐息を漏らし、表情が強張っていく様を晒してしまう。
首が急激に絞まる苦痛に意識を支配された淵音は、脚を空形の懐へと必死にねじ込む。さらに空形の襟を掴み返して勢い良く後転する。
淵音「ふはぁぁっ......!!」
ねじ込んだ足を空形の腹にしっかりと突き立てたまま、自分の真上を滑らせるように相手を飛ばす。
首元の拘束が完全に解けたのと自分のすぐ側で上がった水飛沫が視界に入ってくるのはほぼ同時だった。
空形「はっ...!?あぁぁっ......!!」
水飛沫が収まった直後に淵音が立ち上がり、一拍遅れて空形も立ち上がる。
共に髪までずぶ濡れの二人。再び睨み合うとお互い最初の時よりも陰湿な眼差しをしているのが分かる。
そして、水気を吸った服がぴったりと体にくっついてその輪郭をありありと示す様子も目に入る。
「「............。」」
服の上からおおむね同等の体格だろうと推測してはいた。だが実際の姿を目の当たりにして芽生えたのは女としての対抗意識だった。二人とも日々の作業と鍛練をこなしていて体には自信を持っている。それゆえ相手の女に体でも自分の方が上なのだと思い知らせてやりたい気持ちが強くなる。
岸に上がってどちらからともなく歩み寄り、相手の体に手を伸ばす。指を食い込ませて掴んだのは胸だった。手を広げてお互いの胸を覆い隠そうとするが、豊かな乳肉はとても手中に収まるような量ではなく、いくら押さえ付けても指と指の隙間からはみ出してしまう。
力加減が荒いとは言え、二人が大胆にも触り合いを始めたのは、密かに性欲を燻らせていたこと、そして目の前の女のせいでその性欲に火が着いてしまったことが原因である。
淵音と空形のどちらも一人で暮らしている以上本能をぶつけられる相手はいない。最後に誰かと肌を重ねたのは何年も前だ。そんな中、闘争心を燃やして感情が昂っている時に、性的なプライドを刺激された気分になった。お互い自分の体の内側が煮えているかのような高揚感を覚え、女としての決闘を始めるに至った。
指を這わせて胸を揉みしだく。手のひらに乳首の感触を覚えるとそのまま転がしてやる。
淵音「......ん、っは......」
空形「......ふ、んぅ......」
勝負の最中の興奮は相手に立ち向かう精神的エネルギーになる反面、こと性感に関しては自分の体を脆くしてしまう危険がある。
心身共に熱くなっている淵音と空形も例外ではない。胸を弄る指の動き一つ一つに神経が波立つ。呼吸のペースも次第に上がっていく。
淵音「はぁっ...んん、んく......っふ...!」
空形「...っう...んぁ...はぁ、いぅぅ...!」
体内を流れる邪な電流に痺れていると、次第に体もピクッ、とごくごく小さく跳ねるようになる。
相手の手のひらとずっと触れている乳首は健気にも水気を含んだ服をわずかに持ち上げる。
反応が大きくなってきたのを好都合に思って、そしてそれ以上に自分が達しないうちに勝負を有利に進めたくて、片手で胸を弄ったままもう片方の手を下腹部へ移す。
服の上から輪郭をなぞり、手のひらを密着させて細かく擦っていく。
淵音「んぁ、あぁっ...!んぅぅぁあ...!!」
空形「はぁぁっ、くぁ...!ひぁぁんっ...!!」
抑えようとしても漏れ出てしまう声のトーンが次第に高くなる。濡れた服の上から弄っているはずの股から明らかに水とは異質な感触がする。
相手が限界を迎えるのはもうすぐだ。しかし自分の余裕もほとんどない。
目の前の体だけに集中しながら、力の込もった手付きで執拗に責め立てる。
淵音「いひっ!?んあはぁぁぁああっ...!!!」
空形「きゃぅっ!?うっくぁぁぁああっ...!!!」
体が極限まで緊張した直後、一際大きく甲高い悲鳴が上がる。腰の奥から手足の末端までが小刻みに震える。力の抜けた手で触れている相手の下腹部からは蜜のように重い液体がじっとりと溢れてくるのが分かる。股を頂点とする自分の下半身にも同じ感触が伝わる。
どちらが先に果てたかは分からない。目の前の女が涎を垂らして悶えていたところまでははっきり覚えているが、その次の瞬間からは自分が絶頂している記憶しかない。こうしてお互い体を寄せて余韻を味わう余裕があったということはおそらく同時に達したのだろう。
弛んだ脚が折れ曲がりゆっくりとへたり込む淵音と空形。腰を下ろしてから立ち上がる気配はない。下半身の力が抜けてしまい体を起こす気力がなくなっていたのだった。
「「はぁっ...はぁっ...はぁぁ......」」
しばらくの間、乱れた呼吸を宥めていた二人。息を吸うと胸が広がり、吐く時には腹が軽く締まる。鞠のような乳が揺れ、腹はくびれを強調するかのごとく弾む。
呼吸が落ち着いてくると後ろに下がって若干距離を取る。腰が地面に着いたままおもむろに服を脱ぎ始め、脱いだ服を脇に置いていく。
再び接近して体を密着させる淵音と空形。口を開けて唇を重ねる。舌を絡める度に涎を吸う音が聞こえる。
それと並行して潮にまみれた相手の割れ目に手を差し込む。びしょ濡れの中に指を忍ばせて、汁を絡め取りながら肉壁を擦っていく。もう片方の手は肩に回して抱き合う体勢を取る。
淵音「んん......あぁっ...んむぁぁっ...」
空形「んぅ......ひぁっ...あむぐぅぅ...」
透明な蜜を垂らしているうちに足元には小さな水溜まりができていた。相手の指の動きの一つ一つに反応させられながらも下の口で食らいついて抵抗する。
肩に回していた手を離し、淵音はその手を股間に回して空形の突起を弄り始める。指先で摘まんでキリキリと絞り上げていく。
空形「ぎゃっ...!?ひぁぁぁっ!!あひっ......!」
痛みの混じった刺激にビクンと体が跳ねる。太ももの内側が強張って細かい筋を浮き上がらせる。締まりが弱くなった秘所に淵音の指が深く入り込む。
空形「くぅっ、ふ......!はぁ、はぁっ、んん...!!」
涙を流しながらも淵音を睨みつけ、キスを中断して胸の先端に吸い付く。涎に浸した乳首や乳輪へと歯を立てて甘噛みする。
淵音「ぎひっ...!?んぐぅぅぅっ...!!んはぁっ...!」
堅くなった乳首をさらに硬い歯で転がされ背中を反らして感じてしまう。腹が収縮して内部の筋肉の輪郭が浮かび上がる。余計にこぼしてしまった汁を空形の指が中で掻き回す。
淵音「っいぃぃ......!ふぅぅっ、んんんあぁ...!!」
紅潮した顔で空形を睨みつつ、突起を弄っていた手で今度は乳首を乳輪ごとつねり上げる。指先が空形の胸の頂点に食い込む。淵音は手に力を込めて相手の乳首を押し潰してしまいそうなほど強く圧迫していく。
空形「んぐがぁぁぁっっ!?ひぎゃっ...!!あが......がぇぇぇぁああ......!!」
目を剥いて涎を垂れ流した顔で耳障りな叫び声を上げさせられる。汚れた顔が上を向いてしまうほど上体が反り返る。腰が痙攣して割れ目と淵音の指の隙間からチョロチョロと潮を噴き出す。
先程の反応と比べてもこれは明らかに絶頂しているだろう。淵音は手元に感じる潮の熱さと粘り気を楽しみながら笑みを浮かべる。
空形「ひぃぃっ......ひぃぃっ......んくぁぁぁっ...!!」
今にも倒れてしまいそうなほど弛み切った体に無理矢理力を込めて起き上がる。力みのせいか、怒りのせいか、目を据わらせて淵音を見つめる空形は全身がわなわなと震えている。その漲るエネルギーで握り拳を作って淵音の中へと突き入れる。
淵音「んんぎぃぃぃぃっ!?はぐぁぁぁっ!!ぎひぁぁぁぁっっ...!?」
突如侵入してきた拳に肉壁を蹂躙され、淵音の股は空形の手首を咥えて硬直する。目を剥いて涎を垂らしていても淵音の体は守りを解かなかった。
しかし腕力に自信のある空形は淵音の咄嗟の締め付けなどものともせず責めを続ける。縮み上がる内壁を強引に押し広げ、奥へ奥へと拳を突き刺していく。拳に付いた粘液で滑りが良くなり、空形の拳は淵音の下の口を貫く。
淵音「がひっ!?いぎゃぁぁぁぁぁあああっっっ!!んあぁぇぇぇぇぇっ...!!」
腰の内部を隈無く押し潰され、淵音はけたたましい叫び声を上げて地面に倒れ込む。
手足を投げ出して大の字になり、豊満な体つきを無防備にさらけ出している。股に突き刺さったままの空形の拳の感触に、頭の先から足の末端まで全身が痺れている。
淵音「ふはぁぁ......はひっ...は、ひぃ......」
大口を開けた表情は完全に白目を剥いていて、涙と涎をだらだらこぼすばかりで目を覚ます気配はない。
勝利を確信した空形は念のためにねじ込んでいた拳を引き抜く。割れ目を解放するや否や重い潮がとめどもなくあふれ出てくる。足元一帯に潮がこぼれると、空形を包むように濃厚な匂いが漂う。まるで狩りで仕留めた獲物を味わうように、淵音の匂いをしばらく堪能する。
力比べから始まった戦いを思い返しながら、目の前で伸びている強敵のあられもない姿を見下ろす。自分と同じく実力自慢の猛者を女として沈める、その充実感と征服感に満たされた空形の顔は仄かに緩んでいた。
脇に置いていた服を再び身に付け、足早にその場を立ち去る空形。早く拠点に戻って縄を持ってこなければ、この女を縛れないまま逃げられてしまう。そんなことを考えながら空形は勢い良く駆けてゆくのだった。
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キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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