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第四話
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荷物の整理をしたいと言い樹里ちゃんが立ち上がり、ごそごそとスーツケースを弄る。ふわふわとした気分になりボーッとしてしまう頭を振り、俺も彼女を迎え入れる準備をする。
久々に会えたのだ。積もる話もたくさんある。今日は樹里ちゃん歓迎会でも開こうかな。お酒はあるし、買い物してきたから簡単なつまみも作れるだろう。冷蔵庫の中を確認し、押し入れの奥底にしまったパーティー用の髭メガネを装着。
そんな俺の考えに気づくはずもなく、スーツケースの中から大量の参考書を取り出し、俺の学習机に置く樹里ちゃん。そして赤ぶち眼鏡をかけると机の上に乱雑に置かれた俺の大学のレジュメやら教科書やらを乱暴に床に投げ捨て、ペンを手に参考書と向き合っている。
「…樹里ちゃん?おーい」
「………あぁごめん集中してた。事後報告だけどこの机使わせてもらうね。あたしのことは構わず好きにしててもらっていいよ。あ、あと机の上汚かったから綺麗にしといた」
「その代わり床が汚くなったんだけど?」
「…………」
都合が悪いことは聞かないようにしているのか、話すことは終わったから勉強に集中しているのか。パーティー用にとうきうきで取り出したアルコール飲料水を手に俺は1人立ち尽くしていた。ページをめくる音とペンを走らせる音が虚しく部屋に響き渡る。
「…なんか俺、良いように利用されてない?」
居候という時点で利用されていることは確かではある。今までの彼女への恩を考えるとこれくらいのことなら屁でもないが。感想をもらうどころか見向きもされなかった髭メガネを寂しく取り外し、ゴミ箱に捨てた。
*
樹里ちゃんが勉強中、テレビを見て時間を潰すことにする。fpsゲーム用にと買ったそこそこ性能のいいヘッドフォンがテレビにも差し込めたため、テレビ音が勉強の邪魔になるという心配もない。
今やってる漫才に吹き出して彼女の邪魔にならないようにぐっと堪える。たまにぶぐっ…ひぐぅ…とM男がS嬢に鞭で打たれた時のような声が漏れてしまったが、樹里ちゃんはあまり気にしていない様子。時計の針は11時に差し掛かっていた。
CMに入ったためヘッドフォンを外しつつ右後ろを見る。勉強中の樹里ちゃんだ。
思えば高校時代は1度も同じクラスになったことがないため、勉強をしている彼女をみるのは初めてだ。集中している姿は凛々しく新たな彼女の一面を確認できたのだが、横顔しか見えないのが非常に残念。
くしくしとペンの先をこめかみに軽く押しつけ、そのペンを顎下に添え天井を見上げ「うーん…」と可愛らしくうなり、答えが分かったのかカリカリとペンを走らせる。その繰り返しだ。
ぱちり、俺の視線に気づいた樹里ちゃんと目が合う。いけない、思わず彼女に見惚れてしまっていたようだ。
しかし彼女は特に気に留めなかったようで、数秒見つめ合った後、何事も無かったかのように机に向き直る。流石は樹里ちゃん、人に見られるくらいでは集中力は切れないらしい。
…あれ、樹里ちゃんの顔が真っ赤だ。5月の夜はそこそこ冷える。寒いと顔が赤くなるというし、窓を閉めてあげよう。
全く、樹里ちゃんも寒かったなら言ってくれればいいのに。言わない理由もないだろうに。
そこからまたしばらくし、漫才が終わったためベッドで横たわりスマホをいじっているとペンを置く音が聞こえた。見ると樹里ちゃんがぐっと身体をそらし大きく伸びをする。身体のラインが浮き彫りになり、なんだか見てはいけないような気がして思わず目を背けた。
「…ふぅ。今日のところはこんなもんかな」
「ん、お疲れ様。なんか飲む?」
「ありがと」
冷蔵庫から新品のペットボトルのお茶を取り出し、コップに注ぐ。眼鏡を外し一息ついている樹里ちゃんが不思議そうにこちらを見ていた。
「なに?」
「あ、いや…一人暮らしにしてはコップ多くないかなって思って」
「あぁ、これね。ここってほら、大学から近いからさ。結構友達の溜まり場になりやすいんだよ。誰か来たときのためにこれくらいは揃えておいた方がいいかなって」
地元を離れて一人暮らしをする特権として、大学近くに住むことができるというものがあるが、そういった場所は溜まり場になりやすい。
当然俺も大学近くのこのアパートを選んだため、俺の部屋には空きコマの時間に遊びに来たり、翌日の一限に間に合わせるため、前日から泊まりにくる友達が割といたりする。そいつらの突然の訪問に対応するため、食器類はそこそこの数を用意してある。
「そうなんだ」
「うん。あ、お風呂入りたいよね?ちょっと待ってて」
「あ、ありがと」
もう少し大学生活の話をして勉強のモチベに繋がればと思うも、樹里ちゃんはあまり興味がなさそうにトントンと参考書をまとめ、机上の整理していた。
俺はというと風呂場に移動してお湯をためる。1人の時はシャワーで済ましていたが、流石に女の子には厳しいだろう。
「五分もあれば入れると思うけど…先入る?」
「どっちでもいいよ、先でも後でも。陽斗が好きな方で」
「んじゃ先入りなよ。俺は後からゆっくり樹里ちゃんの残り湯を堪能するからさ。あ、大丈夫!残り湯を飲むことはしないからさ!我慢してみせるよ!」
「…ごめん。やっぱり後に入るわ」
ガチでドン引きするのはやめてほしい。おふざけを混ぜたけどこれはやりすぎだったか…
その後も何度か風呂場を行き来し、温度を調整。すこぶるいい感じになったのでお湯を止め、先に歯を磨く。
「そういえば樹里ちゃん。歯ブラシとかは持ってるの?一応予備はあるけど…」
「ちゃんと用意してるから安心して。…ここに置いとけばいい?」
歯ブラシ立てに歯ブラシを差し込み、洗面所に置こうとする樹里ちゃん。家に歯ブラシが2本ある。ピンクと水色の2つ。
それだけで幸せな気持ちになってしまうのは俺が単純だからだろうか。
クッションに横たわりまったりとする樹里ちゃんを尻目に服を脱ぎ、洗濯機に叩き込む。下も脱ごうとしたところで、慌てて樹里ちゃんから待ったの声が入った。
「ちょちょちょ待って!!そこで脱ぐの?」
「いや、ここくらいしかないし…何か問題でも?」
狭い我が家に脱衣所の類の部屋はない。そのため風呂場のすぐそばで服を脱ぐのが最も効率的だ。洗濯機もあるし。樹里ちゃんはあわあわとその場で右往左往し、両手で目を覆った。のだが…指と指の間からバッチリと俺の身体を見ている。上から下までまじまじと。何がしたいんだこの子は。
「問題大アリだよ!…まさか下も?」
「お望みならば。(ボロン)」
「ぎゃー!!!!!!」
澄ました顔で下も脱ぎ全裸になると樹里ちゃんが悲鳴をあげる。
…股間を見られて絶叫されるのって、普通にショックなんだな。いやまぁここで、「あ、小さいんだね。」とか平然と言われたり、ぷぷっと噴き出されるよりかは大分マシだけど。そんなこと言われた日には俺はよくインターネットの広告で流れてくる怪しい増強剤に手を出してしまう。
「なにしてんの!?」
「なにしてんのって…そっちこそなに恥ずかしがってんのさ。小さい頃は一緒にお風呂入ってたじゃん」
「あの時とはサイズも生々しさも違うでしょーが!あぁもう早くしまって!それかさっさと風呂に入る!」
「へいへーい」
それなら樹里ちゃんこそ、指と指の隙間をしめ、完全に見えなくすればいいのでは?
げに難しき乙女心…
早く行けと言わんばかりにポイポイと教科書を投げてくる樹里ちゃんから逃げるように風呂場に入室。湯を掛け流し湯船につかる。風呂に浸かるのは幾日ぶりだろう。思わずあぁ~と声が漏れる。
にしても樹里ちゃん、あそこまで声を荒げるかね。経験豊富なのだから男子の股間くらい何度も見てきただろうに。
……っは!?まさか俺のムスコは実はビッグマグナムであまりの大きさに流石の樹里ちゃんも思わず声が出たのでは?
自分のムスコを見る。…うん、ないな。THE標準サイズだ。
湯からあがり、安いシャンプーを手に取り頭を洗う。…また買い物行かなくちゃなぁ。髪は女の命ともいうし、こんなシャンプーでは樹里ちゃんの髪を痛めてしまう。俺自身短髪だからあんまり必要性を感じてなかったけど、トリートメントって言うんだっけ?それも買わなくちゃなぁ。
消耗品だけではない。クッションにタオルケットを置けば簡易的なベッドは作れるが、あくまで簡易的だ。布団等も買いにいかなければ。手痛い出費であることに違いはないが、幸いつい先日給料が入ったばかり。最新のゲーム機を買おうとしていたのでそこそこ貯金もある。買えないことはないはずだ。
充分にお風呂を堪能し、風呂場を出る。途端に樹里ちゃんが明後日の方向を見ながら着替えを催促。何を恥ずかしがってるのやら…明日以降もこの生活は続くというのに。
「はい、出たよ。次どうぞ」
「ありがと。…あれ、これってもしかしてあたしも外で脱がなきゃいけないんじゃ?」
「まぁそういうことになるね。あの頃からどれだけ成長してるか、俺がしっかりチェックしなきゃ」
「なぁんで!見ること!前提なのよ!」
自らの腕を抱きながら全力で拒否の姿勢を示す樹里ちゃん。こちらとしても下心があるわけでは全くない。そう思われているのならあまりにも心外だ。俺はただ純粋に幼なじみの成長を確認したいだけ。そこに不純な動機は一切ない。いやマジで。いや本当に。
「あ、そうだ!」
何か閃いたのか、スーツケースを探り、ある物を手渡してくる樹里ちゃん。これは真っ黒の…アイマスク?中央には白字で大きく、『ド変態』と書かれている。悪趣味にも程があるし、なんで樹里ちゃんがこんなもの持ってんだ。普段これをつけて寝てるとか?
「あたしがお風呂から出るまでそれつけてて」
「いやいや出るまでって…数十分視界真っ暗で身動き取れないのは流石に…」
「つけて」
「…喜んで」
恐ろしいほどの圧を感じ、泣く泣くアイマスクをつける。悲しいかな、このアイマスクは視界を塞ぐという役割を見事にこなしてくれた。
だが樹里ちゃん。まだまだ甘いね。俺という存在を舐めすぎだ。目が塞がれてもこちらには耳があるのさ!
服を脱ぐときの布が擦れる音、ブラのホックを外すパチッという音。樹里ちゃんが入水、もとい入湯する音、身体を洗う音。その全てが俺の想像力を掻き立て、本物そっくりのイマジナリー樹里ちゃんが意識下に顕現する。
視界が塞がれている分、聴力にリソースをさくことができるのもグッド。さぁ、脱ぐが良いさ!そして音で俺を楽しませてくれ!
「あとこれも」
そんなセリフとともに樹里ちゃんが俺の耳周りを弄る。くすぐったい。ガサゴソという音が直に鼓膜に響き、何か詰め物をされ、何も聞こえない。これは…耳栓か?ふむふむ、なるほど。これで俺の聴力も奪う、と。見えないし、聞こえない。
「…いたせり尽くせりだなちくしょう!!」
どうやら俺の方こそ、樹里ちゃんを舐めすぎていたようだ。
久々に会えたのだ。積もる話もたくさんある。今日は樹里ちゃん歓迎会でも開こうかな。お酒はあるし、買い物してきたから簡単なつまみも作れるだろう。冷蔵庫の中を確認し、押し入れの奥底にしまったパーティー用の髭メガネを装着。
そんな俺の考えに気づくはずもなく、スーツケースの中から大量の参考書を取り出し、俺の学習机に置く樹里ちゃん。そして赤ぶち眼鏡をかけると机の上に乱雑に置かれた俺の大学のレジュメやら教科書やらを乱暴に床に投げ捨て、ペンを手に参考書と向き合っている。
「…樹里ちゃん?おーい」
「………あぁごめん集中してた。事後報告だけどこの机使わせてもらうね。あたしのことは構わず好きにしててもらっていいよ。あ、あと机の上汚かったから綺麗にしといた」
「その代わり床が汚くなったんだけど?」
「…………」
都合が悪いことは聞かないようにしているのか、話すことは終わったから勉強に集中しているのか。パーティー用にとうきうきで取り出したアルコール飲料水を手に俺は1人立ち尽くしていた。ページをめくる音とペンを走らせる音が虚しく部屋に響き渡る。
「…なんか俺、良いように利用されてない?」
居候という時点で利用されていることは確かではある。今までの彼女への恩を考えるとこれくらいのことなら屁でもないが。感想をもらうどころか見向きもされなかった髭メガネを寂しく取り外し、ゴミ箱に捨てた。
*
樹里ちゃんが勉強中、テレビを見て時間を潰すことにする。fpsゲーム用にと買ったそこそこ性能のいいヘッドフォンがテレビにも差し込めたため、テレビ音が勉強の邪魔になるという心配もない。
今やってる漫才に吹き出して彼女の邪魔にならないようにぐっと堪える。たまにぶぐっ…ひぐぅ…とM男がS嬢に鞭で打たれた時のような声が漏れてしまったが、樹里ちゃんはあまり気にしていない様子。時計の針は11時に差し掛かっていた。
CMに入ったためヘッドフォンを外しつつ右後ろを見る。勉強中の樹里ちゃんだ。
思えば高校時代は1度も同じクラスになったことがないため、勉強をしている彼女をみるのは初めてだ。集中している姿は凛々しく新たな彼女の一面を確認できたのだが、横顔しか見えないのが非常に残念。
くしくしとペンの先をこめかみに軽く押しつけ、そのペンを顎下に添え天井を見上げ「うーん…」と可愛らしくうなり、答えが分かったのかカリカリとペンを走らせる。その繰り返しだ。
ぱちり、俺の視線に気づいた樹里ちゃんと目が合う。いけない、思わず彼女に見惚れてしまっていたようだ。
しかし彼女は特に気に留めなかったようで、数秒見つめ合った後、何事も無かったかのように机に向き直る。流石は樹里ちゃん、人に見られるくらいでは集中力は切れないらしい。
…あれ、樹里ちゃんの顔が真っ赤だ。5月の夜はそこそこ冷える。寒いと顔が赤くなるというし、窓を閉めてあげよう。
全く、樹里ちゃんも寒かったなら言ってくれればいいのに。言わない理由もないだろうに。
そこからまたしばらくし、漫才が終わったためベッドで横たわりスマホをいじっているとペンを置く音が聞こえた。見ると樹里ちゃんがぐっと身体をそらし大きく伸びをする。身体のラインが浮き彫りになり、なんだか見てはいけないような気がして思わず目を背けた。
「…ふぅ。今日のところはこんなもんかな」
「ん、お疲れ様。なんか飲む?」
「ありがと」
冷蔵庫から新品のペットボトルのお茶を取り出し、コップに注ぐ。眼鏡を外し一息ついている樹里ちゃんが不思議そうにこちらを見ていた。
「なに?」
「あ、いや…一人暮らしにしてはコップ多くないかなって思って」
「あぁ、これね。ここってほら、大学から近いからさ。結構友達の溜まり場になりやすいんだよ。誰か来たときのためにこれくらいは揃えておいた方がいいかなって」
地元を離れて一人暮らしをする特権として、大学近くに住むことができるというものがあるが、そういった場所は溜まり場になりやすい。
当然俺も大学近くのこのアパートを選んだため、俺の部屋には空きコマの時間に遊びに来たり、翌日の一限に間に合わせるため、前日から泊まりにくる友達が割といたりする。そいつらの突然の訪問に対応するため、食器類はそこそこの数を用意してある。
「そうなんだ」
「うん。あ、お風呂入りたいよね?ちょっと待ってて」
「あ、ありがと」
もう少し大学生活の話をして勉強のモチベに繋がればと思うも、樹里ちゃんはあまり興味がなさそうにトントンと参考書をまとめ、机上の整理していた。
俺はというと風呂場に移動してお湯をためる。1人の時はシャワーで済ましていたが、流石に女の子には厳しいだろう。
「五分もあれば入れると思うけど…先入る?」
「どっちでもいいよ、先でも後でも。陽斗が好きな方で」
「んじゃ先入りなよ。俺は後からゆっくり樹里ちゃんの残り湯を堪能するからさ。あ、大丈夫!残り湯を飲むことはしないからさ!我慢してみせるよ!」
「…ごめん。やっぱり後に入るわ」
ガチでドン引きするのはやめてほしい。おふざけを混ぜたけどこれはやりすぎだったか…
その後も何度か風呂場を行き来し、温度を調整。すこぶるいい感じになったのでお湯を止め、先に歯を磨く。
「そういえば樹里ちゃん。歯ブラシとかは持ってるの?一応予備はあるけど…」
「ちゃんと用意してるから安心して。…ここに置いとけばいい?」
歯ブラシ立てに歯ブラシを差し込み、洗面所に置こうとする樹里ちゃん。家に歯ブラシが2本ある。ピンクと水色の2つ。
それだけで幸せな気持ちになってしまうのは俺が単純だからだろうか。
クッションに横たわりまったりとする樹里ちゃんを尻目に服を脱ぎ、洗濯機に叩き込む。下も脱ごうとしたところで、慌てて樹里ちゃんから待ったの声が入った。
「ちょちょちょ待って!!そこで脱ぐの?」
「いや、ここくらいしかないし…何か問題でも?」
狭い我が家に脱衣所の類の部屋はない。そのため風呂場のすぐそばで服を脱ぐのが最も効率的だ。洗濯機もあるし。樹里ちゃんはあわあわとその場で右往左往し、両手で目を覆った。のだが…指と指の間からバッチリと俺の身体を見ている。上から下までまじまじと。何がしたいんだこの子は。
「問題大アリだよ!…まさか下も?」
「お望みならば。(ボロン)」
「ぎゃー!!!!!!」
澄ました顔で下も脱ぎ全裸になると樹里ちゃんが悲鳴をあげる。
…股間を見られて絶叫されるのって、普通にショックなんだな。いやまぁここで、「あ、小さいんだね。」とか平然と言われたり、ぷぷっと噴き出されるよりかは大分マシだけど。そんなこと言われた日には俺はよくインターネットの広告で流れてくる怪しい増強剤に手を出してしまう。
「なにしてんの!?」
「なにしてんのって…そっちこそなに恥ずかしがってんのさ。小さい頃は一緒にお風呂入ってたじゃん」
「あの時とはサイズも生々しさも違うでしょーが!あぁもう早くしまって!それかさっさと風呂に入る!」
「へいへーい」
それなら樹里ちゃんこそ、指と指の隙間をしめ、完全に見えなくすればいいのでは?
げに難しき乙女心…
早く行けと言わんばかりにポイポイと教科書を投げてくる樹里ちゃんから逃げるように風呂場に入室。湯を掛け流し湯船につかる。風呂に浸かるのは幾日ぶりだろう。思わずあぁ~と声が漏れる。
にしても樹里ちゃん、あそこまで声を荒げるかね。経験豊富なのだから男子の股間くらい何度も見てきただろうに。
……っは!?まさか俺のムスコは実はビッグマグナムであまりの大きさに流石の樹里ちゃんも思わず声が出たのでは?
自分のムスコを見る。…うん、ないな。THE標準サイズだ。
湯からあがり、安いシャンプーを手に取り頭を洗う。…また買い物行かなくちゃなぁ。髪は女の命ともいうし、こんなシャンプーでは樹里ちゃんの髪を痛めてしまう。俺自身短髪だからあんまり必要性を感じてなかったけど、トリートメントって言うんだっけ?それも買わなくちゃなぁ。
消耗品だけではない。クッションにタオルケットを置けば簡易的なベッドは作れるが、あくまで簡易的だ。布団等も買いにいかなければ。手痛い出費であることに違いはないが、幸いつい先日給料が入ったばかり。最新のゲーム機を買おうとしていたのでそこそこ貯金もある。買えないことはないはずだ。
充分にお風呂を堪能し、風呂場を出る。途端に樹里ちゃんが明後日の方向を見ながら着替えを催促。何を恥ずかしがってるのやら…明日以降もこの生活は続くというのに。
「はい、出たよ。次どうぞ」
「ありがと。…あれ、これってもしかしてあたしも外で脱がなきゃいけないんじゃ?」
「まぁそういうことになるね。あの頃からどれだけ成長してるか、俺がしっかりチェックしなきゃ」
「なぁんで!見ること!前提なのよ!」
自らの腕を抱きながら全力で拒否の姿勢を示す樹里ちゃん。こちらとしても下心があるわけでは全くない。そう思われているのならあまりにも心外だ。俺はただ純粋に幼なじみの成長を確認したいだけ。そこに不純な動機は一切ない。いやマジで。いや本当に。
「あ、そうだ!」
何か閃いたのか、スーツケースを探り、ある物を手渡してくる樹里ちゃん。これは真っ黒の…アイマスク?中央には白字で大きく、『ド変態』と書かれている。悪趣味にも程があるし、なんで樹里ちゃんがこんなもの持ってんだ。普段これをつけて寝てるとか?
「あたしがお風呂から出るまでそれつけてて」
「いやいや出るまでって…数十分視界真っ暗で身動き取れないのは流石に…」
「つけて」
「…喜んで」
恐ろしいほどの圧を感じ、泣く泣くアイマスクをつける。悲しいかな、このアイマスクは視界を塞ぐという役割を見事にこなしてくれた。
だが樹里ちゃん。まだまだ甘いね。俺という存在を舐めすぎだ。目が塞がれてもこちらには耳があるのさ!
服を脱ぐときの布が擦れる音、ブラのホックを外すパチッという音。樹里ちゃんが入水、もとい入湯する音、身体を洗う音。その全てが俺の想像力を掻き立て、本物そっくりのイマジナリー樹里ちゃんが意識下に顕現する。
視界が塞がれている分、聴力にリソースをさくことができるのもグッド。さぁ、脱ぐが良いさ!そして音で俺を楽しませてくれ!
「あとこれも」
そんなセリフとともに樹里ちゃんが俺の耳周りを弄る。くすぐったい。ガサゴソという音が直に鼓膜に響き、何か詰め物をされ、何も聞こえない。これは…耳栓か?ふむふむ、なるほど。これで俺の聴力も奪う、と。見えないし、聞こえない。
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