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「お父様! 朗報ですわ」
卒業パーティ会場から速やかに帰宅したアマーリエは、執事に父の所在を尋ね公爵の執務室を訪れた。
普段なら家族でもアポイントメントが必要なのだが、今日は婚約についての話があると予め話を通してある。
第一王子の暴挙がなかったとしても、挙式を防ぐための話し合いを、今日もつことになっていたのだ。
卒業パーティを途中退席したので時間は繰り上がってしまったが、執事に如何を尋ねると問題ないという事だったので執務室に直行した。
父はいまかいまかと待っていたらしい。アマーリエが入室すると、すぐに執務の手を止めて顔をあげた。
「ほう。なにがあった」
「第一王子殿下から婚約破棄を申し渡されました」
「あのクソガキがッ!」
公爵は人を殺しそうな恐ろしい顔をした。
「さらには冤罪をかけられた上、第一王子殿下はわたくしの身柄を拘束なさろうとしましたわ」
アマーリエは燃え上がる公爵の怒りにさらに燃料を投下した。公爵の顔がとんでもないことになる。
「話を聞こうか」
とんでもない顔のままの公爵にすすめられ、アマーリエは執務室にある応接セットのソファに腰をかけた。執務机から移動してきた公爵が対面に座る。
「卒業パーティの最中、第一王子殿下が壇上にあがり、いきなり婚約破棄を宣言なさいました」
「ほーう」
「理由はわたくしが、女子生徒を虐めたからだそうです。その女子生徒も壇上にあがり、第一王子殿下の腕にぶら下がっておりましたわ」
「ほーーう」
「知らない令嬢でしたが、第一王子殿下の浮気相手ではないかしら。殿下はわたくしにそのご令嬢へ謝れと申されましたの」
「なんだと」
「さらには貴族籍の剥奪と国外追放を言い渡され、近衛兵に捕縛させようとなさいましたわ」
「あのクソガキッ、命が要らないらしいな」
公爵は両手の拳をわなわなと握りしめ怒りに耐えた。この怒りをあまさず小僧にぶつけるためだ。
だが、アマーリエは父公爵を止める。
「いやですわ、お父様。第一王子殿下には、まず彼が本来受けるはずだった正しい立場を認識していただきませんと」
後ろ盾の弱い第一王子は、本来なら幼いうちに謀殺されるはずだった。毎日毒が盛られ、暗殺者が送り込まれ、第一王子につけられていた側仕えの死体が積み上げられていた。
乳母までもが毒殺されたことで国王に頼まれたメルルーナ公爵が後ろ盾となり、第一王子の命は繋がったのだ。
その後、王妃は一命を取り留めたが、完全には復調はしなかった。
側室を抑えるために公式な場に姿は見せるが挨拶を受けるとすぐに退席し、王妃としての公務も体調の維持を優先するため覚束ない。
そんな状態なので、本来、王妃の復帰と共に婚約を白紙に戻し中立派として国を支えるはずだったメルルーナ公爵家は、仕方なく第一王子の後ろ盾となり続けた。
その挙句の『婚約破棄』である。
第一王子殿下には、是非とも正しい自身の立場を体験していただきたい。
「なるほどな。確かに。素っ首叩き落とすより、あのガキは肝を冷やしそうだな」
「第一王子殿下は良くも悪くも単純な方ですから。恐ろしい記憶は底の方に置いて忘れてしまったのでしょう。あの方の望み通り婚約がなくなれば、もう部屋の外に出る事も出来なくなるのではないかしら」
「馬鹿な奴だ。この十年、変わる機会は幾らでもあった。メルルーナ公爵家の後ろ盾を当たり前のものだと思うのは勝手だが、貸したものは返してもらわんとな」
「お父様。側妃様が勘違いなさらないようにもしてください。これ以上王家の都合に振り回されるのはごめんですわ」
「案ずるな。王家への貸しはごまんとあるからな。まずは約束通り、婚約を白紙に戻して貰おうか」
悪い顔をする公爵がおかしくて、アマーリエはコロコロと笑った。
「朗報を楽しみにしております」
「すぐに戻る」
アマーリエは父の頼もしい背中を見送った。
卒業パーティ会場から速やかに帰宅したアマーリエは、執事に父の所在を尋ね公爵の執務室を訪れた。
普段なら家族でもアポイントメントが必要なのだが、今日は婚約についての話があると予め話を通してある。
第一王子の暴挙がなかったとしても、挙式を防ぐための話し合いを、今日もつことになっていたのだ。
卒業パーティを途中退席したので時間は繰り上がってしまったが、執事に如何を尋ねると問題ないという事だったので執務室に直行した。
父はいまかいまかと待っていたらしい。アマーリエが入室すると、すぐに執務の手を止めて顔をあげた。
「ほう。なにがあった」
「第一王子殿下から婚約破棄を申し渡されました」
「あのクソガキがッ!」
公爵は人を殺しそうな恐ろしい顔をした。
「さらには冤罪をかけられた上、第一王子殿下はわたくしの身柄を拘束なさろうとしましたわ」
アマーリエは燃え上がる公爵の怒りにさらに燃料を投下した。公爵の顔がとんでもないことになる。
「話を聞こうか」
とんでもない顔のままの公爵にすすめられ、アマーリエは執務室にある応接セットのソファに腰をかけた。執務机から移動してきた公爵が対面に座る。
「卒業パーティの最中、第一王子殿下が壇上にあがり、いきなり婚約破棄を宣言なさいました」
「ほーう」
「理由はわたくしが、女子生徒を虐めたからだそうです。その女子生徒も壇上にあがり、第一王子殿下の腕にぶら下がっておりましたわ」
「ほーーう」
「知らない令嬢でしたが、第一王子殿下の浮気相手ではないかしら。殿下はわたくしにそのご令嬢へ謝れと申されましたの」
「なんだと」
「さらには貴族籍の剥奪と国外追放を言い渡され、近衛兵に捕縛させようとなさいましたわ」
「あのクソガキッ、命が要らないらしいな」
公爵は両手の拳をわなわなと握りしめ怒りに耐えた。この怒りをあまさず小僧にぶつけるためだ。
だが、アマーリエは父公爵を止める。
「いやですわ、お父様。第一王子殿下には、まず彼が本来受けるはずだった正しい立場を認識していただきませんと」
後ろ盾の弱い第一王子は、本来なら幼いうちに謀殺されるはずだった。毎日毒が盛られ、暗殺者が送り込まれ、第一王子につけられていた側仕えの死体が積み上げられていた。
乳母までもが毒殺されたことで国王に頼まれたメルルーナ公爵が後ろ盾となり、第一王子の命は繋がったのだ。
その後、王妃は一命を取り留めたが、完全には復調はしなかった。
側室を抑えるために公式な場に姿は見せるが挨拶を受けるとすぐに退席し、王妃としての公務も体調の維持を優先するため覚束ない。
そんな状態なので、本来、王妃の復帰と共に婚約を白紙に戻し中立派として国を支えるはずだったメルルーナ公爵家は、仕方なく第一王子の後ろ盾となり続けた。
その挙句の『婚約破棄』である。
第一王子殿下には、是非とも正しい自身の立場を体験していただきたい。
「なるほどな。確かに。素っ首叩き落とすより、あのガキは肝を冷やしそうだな」
「第一王子殿下は良くも悪くも単純な方ですから。恐ろしい記憶は底の方に置いて忘れてしまったのでしょう。あの方の望み通り婚約がなくなれば、もう部屋の外に出る事も出来なくなるのではないかしら」
「馬鹿な奴だ。この十年、変わる機会は幾らでもあった。メルルーナ公爵家の後ろ盾を当たり前のものだと思うのは勝手だが、貸したものは返してもらわんとな」
「お父様。側妃様が勘違いなさらないようにもしてください。これ以上王家の都合に振り回されるのはごめんですわ」
「案ずるな。王家への貸しはごまんとあるからな。まずは約束通り、婚約を白紙に戻して貰おうか」
悪い顔をする公爵がおかしくて、アマーリエはコロコロと笑った。
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「すぐに戻る」
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