白紙にする約束だった婚約を破棄されました

あお

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「分かった。入れ」

 イソベルの許可がおりると長身のごつい騎士が入室した。

「ブレンドン・オースティンと申します。殿下の御身をお守りいたします」

 イソベルはため息をついた。

 ウォルドは剣の腕は立つが、細身の男だったので部屋にいてもそれほど気にならなかったが、オースティンがいると暑苦しそうだ。

「ほかに護衛は」

「テレンス伯爵家より派遣されたのは私共三名にございます」

「それだけか!?」

「はい。身の回りの事は私共がいたしますが、それ以外のことは王宮の人員がおりますので」

 第一王子の部屋は王宮にあるので、当然王宮の護衛兵が守っている。

 ただ王宮で幅を利かせているのが第一王子の命を狙っている側妃なので気を利かせてテレンス伯爵家は専属を派遣しただけなのだ。

「前はもっと人がいたぞ」

「それは、はぁ」

 王国でも有数の金持ちである公爵家と、一般的な名家である伯爵家では色々と規模が違う。いや、テレンス伯爵家にも人員がいないわけではないのだ。

 ただ十数年前に一度枯渇したので回復しきれていないのが現状だ。

「わかった。もういい。食事にする」

 煮え切らない糸目の侍従に業を煮やし、イソベルはさっさと行けと犬でも追い払うように手を振った。






 糸目の従者とごつい騎士が退室し、侍女を先頭に五名が入室して食事の卓を整えた。

 王子の私室のテーブルに、遅い朝食にしては豪勢な食事が並ぶ。

 それほど食欲はなかったが、イソベルはテーブルにつき、毒見が済むのを待った。

「失礼いたします」

 侍女の後ろにいた五人が一皿ずつひと匙すくい毒見をする。

 すると、五人全員が血を吐いて倒れた。

 イドベルは立ち上がり飛びのいた。

「申し訳ございません。新しい食事をご用意いたします」

 少し青い顔をした侍女が気丈に告げる。あらかじめこうなるかもしれないと教えられていたので動揺して悲鳴を上げる事は避けられたが、まさか毒見済の皿を食べた全員が倒れるとは思いもよらなかった。

「も、もうよいっ。父上のところへ行く! 支度をしろっ」

 侍女が人を呼び入れ倒れた毒見役を回収していった後、糸目の従者とごつい騎士が戻ってきた。ごつい騎士の顔はこわばっている。

 暗殺があったのは十数年前の事。いまはもう大丈夫だと彼らも思っていたのだ。専属を派遣するのは、あくまで念のためだと。

「申し訳ございません、殿下。陛下より、お呼びがあるまで部屋にて謹慎するよう申しつかっております」

「どういうことだ!?」

 陛下が整えた重臣の娘と婚約破棄なんてするから謹慎くらってるんだよ、とあからさまな事は言えない糸目の従者はただただ頭を下げる。

「くそっ」

 イソベルは、立ち上がった時に倒れたままの椅子を蹴とばした。




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