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「イソベル様!」
「ユリアナ!」
部屋に入ってまず二人は抱き合った。
昨日会ったばかりだが、もう何カ月も会っていなかった恋人同士のようだ。
ユリアナの方は、昨日の首尾が気になるようで上目遣いでイソベルに疑問を投げかけている。
「イソベル様。婚約はどうなりましたか」
ユリアナが聞いているのは、ユリアナとイソベルの婚約の事だ。
卒業パーティの前、アマーリエと婚約破棄を決めたイソベルは、ユリアナに婚約しようと告げた。ユリアナはもちろん了承した。
本来ならアマーリエを捕らえた後、二人の婚約を発表する流れになるはずだったが、アマーリエの退場後すぐに王宮の近衛兵がやってきてイソベルを王宮に連れ帰ったため発表出来なかったのだ。
同じ馬車に乗ったユリアナは王宮前で放り出された。
「あぁ、アマーリエとの婚約破棄は成立した」
本当は破棄ではなく白紙だが、謹慎をくらっていたイソベルはそこまでは知らない。
王はイソベルの暴挙を受けて各方面への調整が忙しく、学園から引き揚げさせた時に怒りはしたが、その後詳しい説明をしていなかった。
「まあ、おめでとうございます」
ユリアナはパぁっとはじけるような笑みを浮かべイソベルの両手を握った。
「うん、まぁそうだな」
あまりおめでたくはないのだが、今の状況は人には言いにくい。
だが、ユリアナなら受け止めてくれるだろうか。
学園で、優秀なアマーリエを前に委縮してしまうイソベルの気持ちを受け止めてくれたユリアナなら。
もちろん、イソベルはアマーリエの優秀さを妬んではいたが委縮などせずやりたい放題甘え放題だったが、イソベルにそんな現実を告げる者はいなかった。
学園にいる『殿下』という存在はややこしいのだ。
友として接してほしいと言われても、イソベルの性格上不敬があったらただではすまない。それが分かっていて『友』として接することなど誰もできなかった。
それをイソベルもどこかで感じていたのだろう。
そんな中、『友』として接してくれたユリアナとの関係はあっという間に深まった。
婚約者からの忠告も、女生徒からの虐めもなかったが、二人は順調に愛を育んだ。
その過程でアマーリエに虐められた事にしたのはご愛敬、恋のスパイスだ。
結果としてユリアナはイソベルの愛を勝ち取り、アマーリエは婚約を破棄された。
アマーリエとしては婚約がなくなるなら破棄も上等、ユリアナの存在など歯牙にもかけていなかっただけだが。
「実は、困った事が起きている」
決死の思いでイソベルが胸の内を打ち明けると、ユリアナは顔を翳らせた。
「やっぱり、アマーリエ様がなにか、言ってきたのですか?」
ユリアナにとって障害というのはアマーリエだけだったのだからついそう連想してしまうのも仕方ない。
「いや、アマーリエは関係ない」
イソベルにとって、アマーリエは便利に使える女であったが、いまとなっては恐ろしくて関わり合いになりたくない女である。大人しい顔をして騙しやがって、くそぉ、とも思っている。
アマーリエは騙してなんかいないが、きちんとアマーリエを見ていなかったイソベルは表面上の淑女っぽさだけをアマーリエの全てだと思い込んでいたため、騙されたと信じ込んだ。
「王室の問題だが。私は、命を狙われているんだ」
恋愛小説を読んでいたら急にミステリー展開になって戸惑った、ような気持ちになったユリアナはすん、とした顔になったが、慌てて取り繕い笑顔を浮かべる。
「やだぁ。イソベルさまったら冗談が上手、」
ひゅんっ、と音を立てて大きく開いた窓から矢が飛び込んできてユリアナの髪をかすり壁に突き刺さった。
「え?」
理解が出来ない。
「え?」
もう一度つぶやき、ユリアナは呆然と壁に刺さった矢を見つめた。
「ユリアナ!」
部屋に入ってまず二人は抱き合った。
昨日会ったばかりだが、もう何カ月も会っていなかった恋人同士のようだ。
ユリアナの方は、昨日の首尾が気になるようで上目遣いでイソベルに疑問を投げかけている。
「イソベル様。婚約はどうなりましたか」
ユリアナが聞いているのは、ユリアナとイソベルの婚約の事だ。
卒業パーティの前、アマーリエと婚約破棄を決めたイソベルは、ユリアナに婚約しようと告げた。ユリアナはもちろん了承した。
本来ならアマーリエを捕らえた後、二人の婚約を発表する流れになるはずだったが、アマーリエの退場後すぐに王宮の近衛兵がやってきてイソベルを王宮に連れ帰ったため発表出来なかったのだ。
同じ馬車に乗ったユリアナは王宮前で放り出された。
「あぁ、アマーリエとの婚約破棄は成立した」
本当は破棄ではなく白紙だが、謹慎をくらっていたイソベルはそこまでは知らない。
王はイソベルの暴挙を受けて各方面への調整が忙しく、学園から引き揚げさせた時に怒りはしたが、その後詳しい説明をしていなかった。
「まあ、おめでとうございます」
ユリアナはパぁっとはじけるような笑みを浮かべイソベルの両手を握った。
「うん、まぁそうだな」
あまりおめでたくはないのだが、今の状況は人には言いにくい。
だが、ユリアナなら受け止めてくれるだろうか。
学園で、優秀なアマーリエを前に委縮してしまうイソベルの気持ちを受け止めてくれたユリアナなら。
もちろん、イソベルはアマーリエの優秀さを妬んではいたが委縮などせずやりたい放題甘え放題だったが、イソベルにそんな現実を告げる者はいなかった。
学園にいる『殿下』という存在はややこしいのだ。
友として接してほしいと言われても、イソベルの性格上不敬があったらただではすまない。それが分かっていて『友』として接することなど誰もできなかった。
それをイソベルもどこかで感じていたのだろう。
そんな中、『友』として接してくれたユリアナとの関係はあっという間に深まった。
婚約者からの忠告も、女生徒からの虐めもなかったが、二人は順調に愛を育んだ。
その過程でアマーリエに虐められた事にしたのはご愛敬、恋のスパイスだ。
結果としてユリアナはイソベルの愛を勝ち取り、アマーリエは婚約を破棄された。
アマーリエとしては婚約がなくなるなら破棄も上等、ユリアナの存在など歯牙にもかけていなかっただけだが。
「実は、困った事が起きている」
決死の思いでイソベルが胸の内を打ち明けると、ユリアナは顔を翳らせた。
「やっぱり、アマーリエ様がなにか、言ってきたのですか?」
ユリアナにとって障害というのはアマーリエだけだったのだからついそう連想してしまうのも仕方ない。
「いや、アマーリエは関係ない」
イソベルにとって、アマーリエは便利に使える女であったが、いまとなっては恐ろしくて関わり合いになりたくない女である。大人しい顔をして騙しやがって、くそぉ、とも思っている。
アマーリエは騙してなんかいないが、きちんとアマーリエを見ていなかったイソベルは表面上の淑女っぽさだけをアマーリエの全てだと思い込んでいたため、騙されたと信じ込んだ。
「王室の問題だが。私は、命を狙われているんだ」
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「え?」
理解が出来ない。
「え?」
もう一度つぶやき、ユリアナは呆然と壁に刺さった矢を見つめた。
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