白紙にする約束だった婚約を破棄されました

あお

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「第一王子の処分が決まった。王位継承権を剥奪した上で廃嫡。その後は神殿が引き取るそうだ」

 第一王子が国王と処遇について話をした翌日の昼下がり、メルルーナ公爵家の面々は公爵邸のサロンに集まっていた。

 公爵もイリーマスも午前中は王宮につめていたが、ようやく一段落ついたというところだろう。

 王宮ではいまも王と重臣たちが後始末に奔走していたが、メルルーナ公爵家には関わり合いのないことだ。

「殿下は信仰の道を選んだのですね」

 ほっとしたようにアマーリエが言う。

 イソベルにはいろいろ迷惑をかけられたが、憎んでいるわけではない。アマーリエとしては婚約を白紙にしてほしかっただけで、結果として人が死ぬというのはいい気分のするものではなかったので信仰の道に入るというのはちょうどいい落としどころだった。イソベルらしくはないが。

「いや、毒杯を選んだそうだ」

 と、思っていたら、やはり自発的に信仰の道を選んだわけではないようだ。

 王子でいられないなら死んだ方がマシだと振り切ってしまったのだろうか。

「あの殿下が?」

 それもイソベルらしくない。

 公爵家一同は驚いて顔を見合わせた。あの自分中心のイソベルが毒杯を自ら選ぶとはとても考えられない。どういった心境の変化だろうか。

「ああ。陛下が教え諭し、みなに迷惑をかけたことを悔いて毒杯を選んだという話だが、まぁ、盛ってはいるだろうな」

 だろうなぁ、とそれぞれに頷いた。イソベルとあの王だし。

 実際には父に生きる事を許され、これはダメだと思ったようだ。生きている限り父に迷惑をかけ続けると思い毒杯を選んだのだが、それを見ていた神殿長が哀れに思い引き取ることにした。

 神殿長は毒杯を選んだ時、最後の懺悔を聞くために備えて控えていたのだが、なにがどう転ぶか分かったものではない。

 いまの王は、悪い人ではないのだが、王妃と相思相愛で王妃と第一王子、いや元第一王子か、に甘い。

 甘いだけでなくしっかり教育してくれればいいのだが、ただ甘いだけなので結婚当初は立派な王妃になると思われていた王妃もイソベルもぐだぐだの甘ったれだ。

 甘やかした責任を自分で取るのではなくメルルーナ公爵家に押し付けるのだから、たまったものではない。

 一方で側妃や第二王子に辛く当たっているのかという訳でもない。側妃とは仕事のパートナーとしての距離を保っているし、第二王子のことも可愛がっている。

 そう出来たのもメルルーナ公爵家が王室の調整役のような役割を果たしていたからであり、今後どうなるかは分からないが。

「もう王家のこうとはどうでもいいでしょう」

 アレクシアが話を切る。皆もそれに同意した。王家の話はもうお腹いっぱい。

 婚約は白紙になったし賠償関係の話も終わっている。メルルーナ公爵家としては問題がない。

 ユリアナのことは話題にもあがらない。バジェス男爵が爵位返上したのは確認しているが、話題にするまでもないことだ。

 ユリアナもイソベルを引き受けてくれたところまでは良かったが、冤罪を被せようとしたのはいただけない。

 学園内とはいえ、一応公衆の面前で行われたことなので、騎士団の調査結果とバジェス男爵家の末路は公表されている。

「そうだな。いまはアマーリエの将来の方が大事だ。本気で留学する気か」

「はい」

 アマーリエは母と相談した後、父にも隣国へ留学したいという意思を表明した。

 思いがけない娘からのお願いに、公爵は渋い顔をした。

 アマーリエには小さい頃から苦労をかけてきた。やっと自由になったのだから好きな事をやってほしい。その気持ちは本当だ。

 だが、やっと自由になったのだから、娘との時間をたっぷりと取るつもりだった公爵は、いきなり予定が崩れ去ってがっかりした。

 アレクシアが娘の味方についているので最終的には認めるしかないのだが、ごねさせてほしい。

 だがあまりやりすぎて娘に嫌われたくもない。

 味方にできそうな息子をちらりとみると、イリーマスはアマーリエの留学に焦っている様子がない。むしろ微笑ましそうにしている。

 孤立無援の公爵は、まず現実的な話から切り込むことにした。






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