ハーレムから逃げられた男

あお

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 ラウルはミレーユより三日遅れて産まれた。

 両親の仲が良かったため、子どもの頃は一緒に面倒を見られていた。

 ミレーユは近所でも評判の可愛い子で、そんな彼女の一番の仲良しが自分であることに、ラウルは優越感を感じていた。

 12歳になり、ミレーユが冒険者ギルドで依頼を受けると言うと、ラウルも一緒にいるために依頼を受けた。

 親の影響で、元々剣の修行はしていたけれど、それもミレーユの方が才能があったため、拗ねたラウルは手を抜いていた。

 しかし冒険者ギルドの依頼にいくとあっては、そんな事をしていたら命がいくつあっても足りない。

 ラウルは親に頼み込み、真剣にしごいてもらった。

 その甲斐あって、一緒に行くというラウルを、ミレーユも依頼に連れて行くようになった。

 ミレーユは皆の人気者だった。若いし可愛いし、斥候としても優秀だし、ストイックで手抜きを一切しないため、ベテランの冒険者にも可愛がられていた。

 ミレーユの金魚の糞のようだったラウルは、肩身の狭い思いをしていたものだ。

 そんな状況が変わったのは、学院に入ってからだ。

 ミレーユより背の低かったラウルの背はどんどんと伸び、彼女より頭一つ分高くなった。

 剣の腕もそれなりになってきて、ラウルはどんどん自信をつけた。

 決定的だったのは、依頼で知り合った女の子達がラウルに感謝して、一緒にパーティを組んでくれた事だ。

 それまではミレーユのおまけのような存在だったけれど、そこでの主役はラウルだった。

 これでミレーユも見直すだろうと、ラウルは内心得意になっていた。



 ところが。気づくとパーティにミレーユの姿がない。

 探そうとしても、同じパーティの女の子達に邪魔されてしまう。

 そして女の子達を振り切り、やっと見つけたミレーユは知らない男と一緒にいた。

 いままで、金魚の糞と言われていたけれど、ミレーユの横にいるのはラウルだけだった。

 だからラウルは勘違いしていた。

 ミレーユも、自分の事が好きなのだと。

 いまは自信がなくてカッコ悪くて言えないけど、自信がついたいま、ラウルはミレーユに告白するつもりだった。

 ミレーユもそれを待っていてくれるのだと思っていた。




 だが蓋を開けてみれば。




 ミレーユに見捨てられた。

 幼馴染だ。ミレーユの無関心な目をみれば、それがフリではなく本気だと分かった。

 ミレーユにとって、自分はまったく無価値な人間になっていた。



 ずっと、ミレーユのために頑張って来たのに。



 傷心からとぼとぼと校庭を歩いていたラウルは、同じパーティの女の子達に見つかった。

「やっと見つけた! 今日も私と依頼に行きましょう」
「ダメー! 今日は私と行くのです」
「私よね」
「私を忘れないでください」



 ラウルは力なく笑うも、自分を必要としてくれる女の子達を拒むことはできず、今日も女の子達に連れさられた。




 少年の心は恋に破れたが、これは無理、とさっさと割り切った少女は、恋はもうたくさんと、学園生活を満喫していった。




 将来、S級冒険者にまでなる、ミレーユ・ドルトン。



 若かりし日の、他愛ない話。



 ミレーユに捨てられたラウルは、そこそこの冒険者となったようだ。




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