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幼少期編

父の気付き

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ユラシア5歳。ミルクも口にせず、皆と同じ食事が食べられるようになっても、少食だった。両親は流石に心配になり、村の医者に診断してもらったが、なんの異常もなし。すくすくと成長していくのである。

-森の中-

ユラシアの父親は昔冒険者であり、武術や魔法にも精通していたが、怪我が原因で引退をしてしまった。しかし、当時のサバイバル術は忘れておらず、子供たちに受け継いでいるのだ。

「よーし、今日は山菜を取りに行くぞー! 」

「おー!! 」

父と兄弟はぞくぞくと森の中へと入っていく。比較的安全な森なので、5歳のユラシアも連れてきている。

「うん、今年はかなり良質だな。うまそうだ」

「父さん、これも食べれるよね? 」

「そうだな、よし。籠に入れておこう」

順調に山菜集めを進めていく一行。しかし、安全とはいえ、父は5歳児の息子から目を離してしまった。ユラシアを見失ってしまったのだ。その頃ユラシアはというと。

「ステータスはほぼ変わらないか。まあ5歳だ。それは仕方ないな」

ステータスの確認だ。

そんは小さな子供に、近づく大きな影があった。

熊だ。目の前の獲物にのそりのそりと寄っていく。

「......は! 熊! いや、焦るな焦るな......俺のスキルは最強。ここらで試すのもいいかもしれない」

完全に獲物をロックオンし、走り寄ってくる熊に対して、ユラシアはスキルをイメージした。

「......キル

すると熊は、なんの予兆もなくドササッと倒れた。スピードに乗っていたので、軌道が地面に描かれた。

「ユラシア!! どこだ!! 」

父親の声だ。ここは子供らしく振る舞わなくてはと、ユラシアは泣きわめいた。

「おとーさーん!! おとーさーん!! 」

「ユラシア! ごめんな一人にさせて」

父親はユラシアを抱き抱え、自身の袖でユラシアの涙をぬぐった。

「おと......さん」

「よしよし、もうお家に帰ろうな? 」

ユラシアの頭を撫でながら、父親は山を降りようとした。しかし、あまりにも存在感のあるに、気が付かないということはなかった。

「なぜ熊が、あんな倒れ方を? 」

外傷もなければ病気だった様子もない。地面の削れ方を見ると、ユラシアに向かって走っている時にいきなり死んだと考えるのが妥当だろうが、そんなことがあるのだろうか。

「......どういうことだ? 」

父親は、ユラシアに疑問を抱き始めていた。
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