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学園生活編
二度目の特例依頼
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スキルとは、個人個人に与えられた力である。同じような形や名前でも、出し方やパワーは、使い手の技量によるのだ。
「それじゃあ、二人の力を見せてもらおう」
ユラシアの前にいるのは、動きやすい格好に着替えたシオネとラエルだ。
「スキルのことだな。わかった」
「負けませんよ! 」
「まずはラエルからだ」
「ええ......」
口を尖らせてそっぽを向いてしまったシオネ。そんなシオネを気にせず、ラエルは目の前の木に向かってスキルを使った。
「刃スキル......鎌」
そのスキルを使うと、ラエルが持っていてた剣はたちまち鎌のように見え、木を何度も斬りつけた。
「斬首」
振りの優しさに対して、木へのダメージは相当なものだ。真っ二つに割れること待ったなしだ。
「......まだこの二つだけだ......」
「よし......じゃあ次はお待ちかね、シオネだぞ」
「私ですね!! 」
木の陰でしょぼくれていたシオネは、水を得た魚のように元気になり、ユラシアの前にてスキルを披露した。
獣人のスキルは特殊で、まず変身をしないと使うことができない。それが必須条件なのだ。
「動物スキル......野生化」
すると、シオネの体は毛が逆立ち、かかとが上がり、顔が前に伸びてきた。それはだんだんと山犬のかたちになっていった。
やがて、毛並みの美しい完全な山犬へと変身した。さっきまで着ていた服はビリビリに破れていた。
「その状態、喋れるのか? 」
「喋れます。これで戦っているときもお話できますね! 」
「......ああ」
「犬走り」
一瞬、シオネの姿が消えたかと思った。よく見ると、あちこちの木を蹴って、高速で移動しているのだ。
「爪」
そのスキルは、シオネの爪を極限まで伸ばし、硬化させた後、鋭い斬撃を繰り出すというものである。木は、気付かぬうちにズタズタに切り裂かれていた。
「牙」
これは爪の応用技であり、さっきしたことを牙でやるということだ。最後に木に噛みついて、思い切り力を入れると、シオネは木を噛み千切ってしまった。
「あ、やっちゃいました」
「まあ、強いことには変わりないな」
これでシオネのスキルは終わりのようだが、シオネは山犬の姿のまま、その場でくるくるしていた。
「あの......変身解除する時は見ないで下さい......」
「どうした? 何かまずいのか? 」
シオネのことを知っていたラエルは、シオネをユラシアから遠ざけ、茂みの中へ隠した。
「ユラシア殿、シオネは今、人間で言うと裸だ。山犬の時は毛皮があったからいいが、変身を解除したらどうなると思う? 」
「あ......」
そう、服が破けているのだ。あのまま獣人の姿になってしまったら、色々見えてしまう。
茂みの中から、赤面しながらも拗ねているシオネが出てきた。ラエルが持ってきていた服を着ている。
そして、シオネの決めの一言だ。
「ユラシアさん、エッチです」
「......」
ハプニングはあったが、これらが現在確認できる二人のスキルである。
突然こんなことをし始めたのにも、理由があるのだ。
-酒場-
いつも通り、ユラシアが酒場で依頼を見ていた時、横からフードを被った男が話しかけてきた。
「あんた、最近有名な冒険者なんだろ? 依頼を引き受けてほしい」
「......来い」
ユラシアはその男を、テーブル席へと連れた。男は座ったタイミングでフードを外した。その反動で服も少し見えた。
「学生か? お前」
「そうだ......依頼っていうのが、俺の学校のことなんだけどよ」
「はーい! ドリンクお待ち! 」
テイルが二人分のドリンクを持ち、テーブル席へと来た。その行為で、男はなんとなく心に勢いがついたのか、内容を話し始めた。
「上下関係が酷すぎるんだ!! お嬢様とか御曹司とか!! 俺ら低級市民はまるで使用人のように扱われてる!! なあ何とかしてくれ頼む! あんたしか頼れない! 凄腕がいるっていうから小銭をはたいてこのギルドまで来たんだ! 」
「......依頼内容は分かった。しかしどうやって」
男は、持参した紙袋をテーブルの上に置いて、中身を広げた。中身は、男のものと同じであろう制服であった。
「これだけは用意した。中退した後輩から譲り受けたんだ。あとはあんたが何とかしてくれ! 凄腕なんだろ!? 」
勢いが凄い。口が開く度にどんどん顔が近付いてくる。熱意は伝わるが、そう簡単に学園に潜入できるかどうか。
「......ということで、あんたに頼もうかと思ったんだ」
ユラシアは、国王へ会いに行った。話を聞いた国王は、その頼みを快諾した。
「分かった。編入生という形で校長に取り合おう。依頼後のことは心配しなくてもよいぞ」
「ああ、恩に着る」
こういう時に国王は頼りになる。見返りとして、シオネが趣味で作った小さな獣人人形は、国王にとって何よりも価値のあるものだった。
「......ということで、俺はしばらくの間学生として生活をしてくる」
それを聞いたシオネとラエルは、それぞれ違う発想で、同じ結果にたどり着いた。
シオネ→ユラシアが学校に行く→ユラシアに会えなくなる→寂しい→ついていく
ラエル→ユラシアが学校に行く→学校は学ぶことがある→強くなれる→ついていく
「「一緒に行く!! 」」
「......」
こうして、ユラシアとその仲間たちは、キシェルステント高等学校に編入することになった。
「それじゃあ、二人の力を見せてもらおう」
ユラシアの前にいるのは、動きやすい格好に着替えたシオネとラエルだ。
「スキルのことだな。わかった」
「負けませんよ! 」
「まずはラエルからだ」
「ええ......」
口を尖らせてそっぽを向いてしまったシオネ。そんなシオネを気にせず、ラエルは目の前の木に向かってスキルを使った。
「刃スキル......鎌」
そのスキルを使うと、ラエルが持っていてた剣はたちまち鎌のように見え、木を何度も斬りつけた。
「斬首」
振りの優しさに対して、木へのダメージは相当なものだ。真っ二つに割れること待ったなしだ。
「......まだこの二つだけだ......」
「よし......じゃあ次はお待ちかね、シオネだぞ」
「私ですね!! 」
木の陰でしょぼくれていたシオネは、水を得た魚のように元気になり、ユラシアの前にてスキルを披露した。
獣人のスキルは特殊で、まず変身をしないと使うことができない。それが必須条件なのだ。
「動物スキル......野生化」
すると、シオネの体は毛が逆立ち、かかとが上がり、顔が前に伸びてきた。それはだんだんと山犬のかたちになっていった。
やがて、毛並みの美しい完全な山犬へと変身した。さっきまで着ていた服はビリビリに破れていた。
「その状態、喋れるのか? 」
「喋れます。これで戦っているときもお話できますね! 」
「......ああ」
「犬走り」
一瞬、シオネの姿が消えたかと思った。よく見ると、あちこちの木を蹴って、高速で移動しているのだ。
「爪」
そのスキルは、シオネの爪を極限まで伸ばし、硬化させた後、鋭い斬撃を繰り出すというものである。木は、気付かぬうちにズタズタに切り裂かれていた。
「牙」
これは爪の応用技であり、さっきしたことを牙でやるということだ。最後に木に噛みついて、思い切り力を入れると、シオネは木を噛み千切ってしまった。
「あ、やっちゃいました」
「まあ、強いことには変わりないな」
これでシオネのスキルは終わりのようだが、シオネは山犬の姿のまま、その場でくるくるしていた。
「あの......変身解除する時は見ないで下さい......」
「どうした? 何かまずいのか? 」
シオネのことを知っていたラエルは、シオネをユラシアから遠ざけ、茂みの中へ隠した。
「ユラシア殿、シオネは今、人間で言うと裸だ。山犬の時は毛皮があったからいいが、変身を解除したらどうなると思う? 」
「あ......」
そう、服が破けているのだ。あのまま獣人の姿になってしまったら、色々見えてしまう。
茂みの中から、赤面しながらも拗ねているシオネが出てきた。ラエルが持ってきていた服を着ている。
そして、シオネの決めの一言だ。
「ユラシアさん、エッチです」
「......」
ハプニングはあったが、これらが現在確認できる二人のスキルである。
突然こんなことをし始めたのにも、理由があるのだ。
-酒場-
いつも通り、ユラシアが酒場で依頼を見ていた時、横からフードを被った男が話しかけてきた。
「あんた、最近有名な冒険者なんだろ? 依頼を引き受けてほしい」
「......来い」
ユラシアはその男を、テーブル席へと連れた。男は座ったタイミングでフードを外した。その反動で服も少し見えた。
「学生か? お前」
「そうだ......依頼っていうのが、俺の学校のことなんだけどよ」
「はーい! ドリンクお待ち! 」
テイルが二人分のドリンクを持ち、テーブル席へと来た。その行為で、男はなんとなく心に勢いがついたのか、内容を話し始めた。
「上下関係が酷すぎるんだ!! お嬢様とか御曹司とか!! 俺ら低級市民はまるで使用人のように扱われてる!! なあ何とかしてくれ頼む! あんたしか頼れない! 凄腕がいるっていうから小銭をはたいてこのギルドまで来たんだ! 」
「......依頼内容は分かった。しかしどうやって」
男は、持参した紙袋をテーブルの上に置いて、中身を広げた。中身は、男のものと同じであろう制服であった。
「これだけは用意した。中退した後輩から譲り受けたんだ。あとはあんたが何とかしてくれ! 凄腕なんだろ!? 」
勢いが凄い。口が開く度にどんどん顔が近付いてくる。熱意は伝わるが、そう簡単に学園に潜入できるかどうか。
「......ということで、あんたに頼もうかと思ったんだ」
ユラシアは、国王へ会いに行った。話を聞いた国王は、その頼みを快諾した。
「分かった。編入生という形で校長に取り合おう。依頼後のことは心配しなくてもよいぞ」
「ああ、恩に着る」
こういう時に国王は頼りになる。見返りとして、シオネが趣味で作った小さな獣人人形は、国王にとって何よりも価値のあるものだった。
「......ということで、俺はしばらくの間学生として生活をしてくる」
それを聞いたシオネとラエルは、それぞれ違う発想で、同じ結果にたどり着いた。
シオネ→ユラシアが学校に行く→ユラシアに会えなくなる→寂しい→ついていく
ラエル→ユラシアが学校に行く→学校は学ぶことがある→強くなれる→ついていく
「「一緒に行く!! 」」
「......」
こうして、ユラシアとその仲間たちは、キシェルステント高等学校に編入することになった。
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