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第1章『始まりの森編』

間話 運命の出逢い(少女視点)

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「……ここ最近、魔物の数が増えて来たわね。この数を相手にしていたら流石に疲れてしまうわ!」

 そんな事を呟いた彼女の前には10……、いや14匹のゴブリンの死骸がある。

「そろそろ私も従魔を手に入れないと駄目かしら?」

 小さい頃からの従魔であるブラックスライムのノワールが死んでしまってから、里の皆は早く次の従魔を手に入れなさいと急かして来る。だけど、……もうあんな辛い思いはしたくない。

 私の親も『生きる者は全ていつかは土に還り、新たな生命を育む』なんて言うけど。

「……新しい従魔を手に入れれば、この悲しみも紛らわす事ができるのかしら?」

 でも、私は『代わりに』なんて言葉は嫌いだわ。もし新しく従魔を手に入れたとしたら、その子の事をちゃんと愛してあげないと駄目ね。

「うーん、……さっきからゴブリンしか見つからないわね!」

 先程から従魔になりそうな魔物を探して森を探索しているが、見つかる魔物はゴブリンばかりだ。

「あっ!あの青い鳥、可愛いわね。……育てれば強くなるし最初は弱くても良いわ」

 青い鳥が地面に降りたと思ったら黒い芋虫になり、今度は紫色に染まってゆく。……そしてグレップルに姿を変えた。

「え?こんな魔物、初めて見たわ!それにどうしてグレップルに変身したのかしら?」

 グレップルがゴブリンに拾われ、食べられる!?と思ったらゴブリンの仲間割れが始まった。

 そして両者がボロボロになったところでグレップルが芋虫に戻り、ゴブリンを殺して食べ始めた。

「食事中に話し掛けたら怒るかもしれないわね。食べ終わるまで待ってみようかしら」

 芋虫が食事を終え、移動しようとした所で声を掛ける。

「ちょっとそこの芋虫!待ちなさい!!」

 芋虫が振り返り、こちらを見つめた。……ランクの低い魔物が言葉を理解する筈がないが、少し気恥ずかしくなり言い訳を漏らした。

「いや……魔物に言葉は通じないわね、声に反応して振り返ったのかしら?……まぁいいわ止まったんだから、誰も聞いてないし問題ないわ!」

 グレップルに変身する魔物なんて初めて見たわね。ちょうど従魔になりそうな魔物を探していたところだし、この子にしようかしら?

「貴方、影から見ていたけど中々面白いわね!私の従魔にしてあげるわ、感謝なさい!!」

 ……そういえば『従魔にするには相手を守れる力がある事を証明しなければ、契約してくれない』って母さんが言ってたわね。

「従魔契約の前に上下関係を理解させた方が契約しやすくなるし、力の差を見せつけてあげるわ!」

 目の前の魔物から、何故か驚いているような気配を感じる気がするわね。……そんな事気にしていてもしょうがないかしら?

「行くわよ!」

『ちょっと待ったぁ!?止まってくれ!!』

「きゃあっ!?……誰よ、出て来なさい!私を驚かせた事への落とし前をつけてあげるわ!!」

 急に頭の中に話しかけられて、ビックリしたわ!それにしても誰が話し掛けてきたのかしら?さっき他に誰も居ないことを確認した筈なのに。

『目の前に居るだろ?』

「え……?誰も居ないわよ!大体、[念話]で話し掛けてきた時点で貴方が隠れている事は分かっているのよ!」

『……お前から話し掛けて来たんじゃないか?』

 呆れた声が返ってきた。

「もしかして魔物が話した?そんな知性のあるモンスターは、ランク:A以上の化け物しかいない筈なのに。……そういえば、魔王も弱かった頃から会話できるほどの知性があったと聞いた事があるわ」

 この魔物ならノワールみたいに私を置いてこの世を去ったりしないかもしれない。

「私と従魔契約をしないかしら?貴方にも色々な利益があるのよ」

 ……なかなか待っても返事が無い。

「ねぇ、聞いてる!?返事くらいしなさいよ!!」

『少し待ってくれ、考える時間が欲しい。……従魔契約はどういう物なんだ?』

 これだけ悩む程には迷っているようね!きっと私のパートナーになって貰うわよ!!

「興味があるのね?説明してあげるわ!従魔契約は契約者同士の魂を結びつける事によって、経験値を分け合ったり、契約した相手の場所が何となく分かる……みたいな感じね!!」

 従魔契約の基本的な内容を説明していく。

「基本的には弱い魔物と契約するわ!成長するまでは守ってあげて、成長してからは一緒に強くなっていくパートナーになるのよ!!」

 ……ノワールは従魔になってすぐに死んでしまったから、一緒に強くはなれなかったけど。

「それに、魔物は進化するとステータスがかなり下がってしまうの!逆にエルフやドワーフ、人間、魔族はレベルが上がりにくい代わりに、ステータスは下がらないから安心して進化できるわ!!」

 あれ?あんまり反応が良くないわね。……この魔物が1番求めているのは何なのかしら?

「他には従魔の世話をしてあげるのよ!身体を洗ったり、美味しいご飯を作ってあげたりね!!」

 ノワールとの日々を思い出して少し感傷的になってしまったわね。

『……分かった、従魔になろう』

「本当!じゃあ早速契約を始めましょう!!」

 やったわ!きっと良いパートナーになってみせるから、これからよろしくね!!

『……ところで、従魔契約はどうやってやるんだ?』

「あっ、まだ説明してなかったわね![契約]と[精霊魔法]を使うの。人との間で契約する場合は[契約]だけで良いんだけど、魔物と契約するには[精霊魔法]が必要なのよ!!」

 ……私達の間では当然の常識だから、説明するの忘れていたわ。

「[精霊魔法]を使えるのはエルフとドワーフだけだから、人間や魔族は従魔契約ができないわ!」

『そうなのか、種族同士はどんな関係なんだ?』

 この子、本当に魔物かしら?……里の従魔達はいつもご飯のことしか頭に無いのに。

「魔物なのにそんな事が知りたいだなんて、……貴方って本当に変わった魔物ね?」

 ……別に教えても問題無い筈。

「人間と魔族は対立していて、エルフとドワーフは中立を保っているわね。だから、人間の国と魔族の国のどちらにエルフやドワーフがいても問題ないわ!」

『じゃあ、従魔契約とやらを始めてくれないか?』

 えぇ……何かリアクション返しなさいよ!本当に何であんな事聞いたのかしら?契約は取り消しだ!ってならなかったからいいけど。

「そうね始めるわよ!『汝と倶に歩んだ行く末に栄光あれ』ソウルコントラクト!!」

 私と魔物を優しい光が包み込んでいく。……魂の結び付きを感じるのは、本当に久しぶりね。ノワールと一緒に過ごした時以来だわ。

 光が消えた時には、もう魔物は眠ってしまっていた。

「もう……仕方のない子ね。貴方の名前は[ネラ]よ!貴方と過ごす日々が待ち遠しいわ。……きっと、退屈させてくれないのでしょうね?」
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