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第3章『冒険者の街アーバン』
旅立ちの日
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目が覚めてから、アーシャは大急ぎでお風呂に入って服を着替えたりというように身だしなみを整えていた。
俺はというと、アーシャに頼まれた物をどんどん収納している。流石に何にも準備していなかったわけではなかったが、まだ荷物としての整理はされていなかった。
「はー、やっと終わったわ!……これなら間に合いそうね。ネラ、早めに起こしてくれてありがと!あとは朝ご飯を食べたら出発出来るわね!!」
どうにか旅立ちの準備を終えられたみたいだな。これに懲りたんだったら、次からは準備をちゃんとしてから行動を起こして欲しいものだ。
『アーシャ、ところで待ち合わせの場所はどこなんだ?』
「……広場ね、いつも待ち合わせの場所って決めているから大丈夫よ!」
……まあ、場所はいいとしよう。だが時間はどうやって決めているんだ?『朝に出発する』と言っていたが、俺としては何時に集合なのかを知りたかった。時計がないみたいなのである程度は仕方ないと思うが、そういうところにもかなり違和感があった。
「今日の朝ご飯は私が作ってあげるから、ちょっと待っててね!」
おぉ、ついにアーシャが作ってくれるのか。昨日もアーシャは料理を手伝っていたが、残念ながら宴ではどの料理だったのか分からなかったからな。とっても楽しみだ。
今回の料理は鍋で作っているみたいだ。しばらく待っていると、アーシャは俺の前に出来上がった料理を置いてくれた。
「まだ熱いから、火傷しないようにゆっくり食べるのよ!」
『森の恵みに感謝を』
アーシャの作ってくれた料理はお粥だった。味は薄めで、素材の旨味がしっかりと生かされている。ナッツの類が入っているのか、ほんのりと苦いのもグッドポイントだ。昨夜の宴では味の濃い料理が多かったからか、この優しい味にどこかほっとした。
「食べ終わったみたいね。はい、お代わりよ!」
アーシャは俺が皿を空にすると、直ぐにお代わりをくれた。そしてそれもまたすぐに食べ終わった。
「ネラ、そろそろ広場に行くわよ!」
流石に一言ぐらいは家を出る前に伝えた方がいいんじゃないのか?少しの間ではあったが、仲が悪い家族というわけでもなさそうだったし。どういうことだろうか?
アーシャはそのまま家を出ようとした。そのとき、両親が起きてきた。
「アーシャ、もう……何も言わないで行ってしまうつもりだったのかしら?」
「……だって、だって何を言えばいいのか分からなかったんだもん!それに顔を合わせちゃったら、別れるのが辛くなると思って……会えなかった」
「そうかもしれないねアーシャ。だけど、ちゃんと別れは告げた方が良いと僕は思うよ?きっと後になって後悔するだろうし、それで別れに抵抗感を持ってしまうかもしれないからね。別れは悪いことではなくて成長するってことなんだから、アーシャの門出を僕とリリーで祝わせてくれないかい?」
「もうっ!あなたったら、話が長過ぎるわよ。でも私も言いたいことは同じよ。それに、別れの挨拶をしてくれないなんて悲しいわ」
「……ごめんなさい」
そう言ってアーシャは両親に抱きついた。……旅立てば今度はいつ会えるのか分からないんだから、ちゃんした別れ方をしておくべきだろう。
「アーシャ、身体には気を付けるのよ。怪我もそうだけど、旅の途中で病気に罹ったら大変なんだから」
「そういえばそんなこともあったね。……あの時は大変だった、リリーが急に意識を失って本当に驚いたよ。……昔話は後でじっくりしよう。とにかく、無事に帰ってきて欲しい」
「分かったからもう行くわ!それじゃあ……行ってきます!!」
「「いってらっしゃい、アーシャ!」」
アーシャは俺を抱えて家を飛び出し、広場へと走り出した。振り返る必要はない、既に別れは済ませたのだから。アーシャは前だけを見据え、まだ見ぬ世界への第一歩を踏み出した。
俺はというと、アーシャに頼まれた物をどんどん収納している。流石に何にも準備していなかったわけではなかったが、まだ荷物としての整理はされていなかった。
「はー、やっと終わったわ!……これなら間に合いそうね。ネラ、早めに起こしてくれてありがと!あとは朝ご飯を食べたら出発出来るわね!!」
どうにか旅立ちの準備を終えられたみたいだな。これに懲りたんだったら、次からは準備をちゃんとしてから行動を起こして欲しいものだ。
『アーシャ、ところで待ち合わせの場所はどこなんだ?』
「……広場ね、いつも待ち合わせの場所って決めているから大丈夫よ!」
……まあ、場所はいいとしよう。だが時間はどうやって決めているんだ?『朝に出発する』と言っていたが、俺としては何時に集合なのかを知りたかった。時計がないみたいなのである程度は仕方ないと思うが、そういうところにもかなり違和感があった。
「今日の朝ご飯は私が作ってあげるから、ちょっと待っててね!」
おぉ、ついにアーシャが作ってくれるのか。昨日もアーシャは料理を手伝っていたが、残念ながら宴ではどの料理だったのか分からなかったからな。とっても楽しみだ。
今回の料理は鍋で作っているみたいだ。しばらく待っていると、アーシャは俺の前に出来上がった料理を置いてくれた。
「まだ熱いから、火傷しないようにゆっくり食べるのよ!」
『森の恵みに感謝を』
アーシャの作ってくれた料理はお粥だった。味は薄めで、素材の旨味がしっかりと生かされている。ナッツの類が入っているのか、ほんのりと苦いのもグッドポイントだ。昨夜の宴では味の濃い料理が多かったからか、この優しい味にどこかほっとした。
「食べ終わったみたいね。はい、お代わりよ!」
アーシャは俺が皿を空にすると、直ぐにお代わりをくれた。そしてそれもまたすぐに食べ終わった。
「ネラ、そろそろ広場に行くわよ!」
流石に一言ぐらいは家を出る前に伝えた方がいいんじゃないのか?少しの間ではあったが、仲が悪い家族というわけでもなさそうだったし。どういうことだろうか?
アーシャはそのまま家を出ようとした。そのとき、両親が起きてきた。
「アーシャ、もう……何も言わないで行ってしまうつもりだったのかしら?」
「……だって、だって何を言えばいいのか分からなかったんだもん!それに顔を合わせちゃったら、別れるのが辛くなると思って……会えなかった」
「そうかもしれないねアーシャ。だけど、ちゃんと別れは告げた方が良いと僕は思うよ?きっと後になって後悔するだろうし、それで別れに抵抗感を持ってしまうかもしれないからね。別れは悪いことではなくて成長するってことなんだから、アーシャの門出を僕とリリーで祝わせてくれないかい?」
「もうっ!あなたったら、話が長過ぎるわよ。でも私も言いたいことは同じよ。それに、別れの挨拶をしてくれないなんて悲しいわ」
「……ごめんなさい」
そう言ってアーシャは両親に抱きついた。……旅立てば今度はいつ会えるのか分からないんだから、ちゃんした別れ方をしておくべきだろう。
「アーシャ、身体には気を付けるのよ。怪我もそうだけど、旅の途中で病気に罹ったら大変なんだから」
「そういえばそんなこともあったね。……あの時は大変だった、リリーが急に意識を失って本当に驚いたよ。……昔話は後でじっくりしよう。とにかく、無事に帰ってきて欲しい」
「分かったからもう行くわ!それじゃあ……行ってきます!!」
「「いってらっしゃい、アーシャ!」」
アーシャは俺を抱えて家を飛び出し、広場へと走り出した。振り返る必要はない、既に別れは済ませたのだから。アーシャは前だけを見据え、まだ見ぬ世界への第一歩を踏み出した。
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