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第3話 訃音
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「記憶喪失の生首ねえ……」
「だからそういう事件に心当たりがないかと思って」
民警会社ハートピアの社内で、蛍は榛斗に昨日の出来事を報告していた。ちなみにくだんの生首は仕方がないので部屋に置いてきている。
「落武者とかではないんだよね」
「髪型が明らかに現代の人間だったので、それで生首になるような事態があれば確実にニュースになると思ったんですが」
「事故で、内々に処理されていたとしても情報は出てくるだろうしなぁ」
「でも私の方で調べても見つけられなくて」
「俺が部屋に行って調べようか?」
榛斗も蛍にあの部屋を紹介した手前、多少負目はあるらしい。しかし蛍は首を横に振った。
「いえ、いざというときは全然倒せる相手なので。何か知ってればと思ったんですけど」
「ちょっと心当たりがないなぁ。一応こっちでも調べてみるよ。普通の調べ方で出てこないタイプもあるし」
榛斗はそう言うとどこかに電話をかけ始めた。蛍はコーヒーを飲みながらそれを眺める。
「葛城先生、俺からの電話そんなに嫌ですか?」
かすかに向こう側の声も聞こえてくる。どうも葛城は榛斗の電話とわかるとあからさまに面倒そうな声を出しているらしい。
「大丈夫ですって、今回はそんなに面倒な案件じゃないので。ただ訃音通信をとりあえず五年分手に入れてくれればいいので」
『めんどくさいじゃないですか』
蛍は訃音通信という初めて聞く言葉に首を傾げる。榛斗はどうにかそれをもらってくることを葛城に頼み込み、ほかにいくつかの条件を言ってから電話を切った。
「訃音通信って?」
「ああ、日本妖怪のコミュニティで発行されている新聞の……普通の新聞で行くとお悔やみ欄みたいなところをそう言ってるんだけど、要は彼らにとっては新入りのお知らせみたいなものだから、人間の新聞より情報がしっかりしてることがあって」
「それなら何かわかるかもしれないと」
「そう。でも日本妖怪しか手に入れられなくて。そういう意味では古井戸さんも手に入れられると思うんだけど、五年分手に入れたいとなると社会的信用もある葛城先生の方が他突っ込まれにくいかなって」
「めちゃくちゃめんどくさがられてましたけど」
「あれは……ハルコさんが何度も面倒な案件を頼んだからだろうね」
ハルコと葛城は同級生だということだが、それをいいことに時折無茶なことを頼んでいるらしい。正当な報酬は支払っているとはいうものの、それは嫌がられても仕方ない。そして榛斗は榛斗で葛城に面倒なことを頼んだ実績がある。
「……そういえば、碧都って記憶喪失の扱いになってたのね」
「まあ、実際本人の素性についてはこの前までわかってなかったわけだしね。その手続きと民警の試験が受けられる状態にするのと、あと魔法銃の登録と聖別弾の支給に関しても葛城先生に頼んだな、そういえば」
「それは……あの態度も納得ね」
蛍はマドラーでコーヒーをかき混ぜた。もはや弁護士の仕事を通り越している気がしなくもない。二人の横暴に振り回されている葛城に蛍は密かに同情した。
「とりあえず訃音通信が来るのは明日以降になるから、それまでは――」
「わかりました。ちょっとこっちでも調べてみます。ちなみに、生首がご飯食べたらどうなるか知ってます?」
「知らないなぁ。食べられるの?」
「食べられましたよ、少なくともあの生首は。でも食べたものはどこかに行ってしまいましたね」
それを聞いて榛斗は何かを思案しているようだった。蛍は首を傾げる。
「何か?」
「いや……ちょっともうひとつの可能性を思い出して」
「もうひとつの可能性?」
「その首、生霊の可能性も検討した方がいいかも」
民警がアクセスできる資料で一番調べにくいのが生霊だ。しかし榛斗が言うことももっともだ。
「そっちは俺の方で調べるよ」
「ツテはあるんですか?」
「俺じゃなくてハルコさんの方にね」
ハルコは魔力が全くないため戦闘に関しては蛍たちに任せているが、謎に広い人脈の持ち主である。その人脈はサーペンティン潰しのときにも遺憾無く発揮されていた。
「じゃあそちらはお願いします。私は……とりあえず邪魔にならない限りはうまくやって行こうと思うので」
「だからそういう事件に心当たりがないかと思って」
民警会社ハートピアの社内で、蛍は榛斗に昨日の出来事を報告していた。ちなみにくだんの生首は仕方がないので部屋に置いてきている。
「落武者とかではないんだよね」
「髪型が明らかに現代の人間だったので、それで生首になるような事態があれば確実にニュースになると思ったんですが」
「事故で、内々に処理されていたとしても情報は出てくるだろうしなぁ」
「でも私の方で調べても見つけられなくて」
「俺が部屋に行って調べようか?」
榛斗も蛍にあの部屋を紹介した手前、多少負目はあるらしい。しかし蛍は首を横に振った。
「いえ、いざというときは全然倒せる相手なので。何か知ってればと思ったんですけど」
「ちょっと心当たりがないなぁ。一応こっちでも調べてみるよ。普通の調べ方で出てこないタイプもあるし」
榛斗はそう言うとどこかに電話をかけ始めた。蛍はコーヒーを飲みながらそれを眺める。
「葛城先生、俺からの電話そんなに嫌ですか?」
かすかに向こう側の声も聞こえてくる。どうも葛城は榛斗の電話とわかるとあからさまに面倒そうな声を出しているらしい。
「大丈夫ですって、今回はそんなに面倒な案件じゃないので。ただ訃音通信をとりあえず五年分手に入れてくれればいいので」
『めんどくさいじゃないですか』
蛍は訃音通信という初めて聞く言葉に首を傾げる。榛斗はどうにかそれをもらってくることを葛城に頼み込み、ほかにいくつかの条件を言ってから電話を切った。
「訃音通信って?」
「ああ、日本妖怪のコミュニティで発行されている新聞の……普通の新聞で行くとお悔やみ欄みたいなところをそう言ってるんだけど、要は彼らにとっては新入りのお知らせみたいなものだから、人間の新聞より情報がしっかりしてることがあって」
「それなら何かわかるかもしれないと」
「そう。でも日本妖怪しか手に入れられなくて。そういう意味では古井戸さんも手に入れられると思うんだけど、五年分手に入れたいとなると社会的信用もある葛城先生の方が他突っ込まれにくいかなって」
「めちゃくちゃめんどくさがられてましたけど」
「あれは……ハルコさんが何度も面倒な案件を頼んだからだろうね」
ハルコと葛城は同級生だということだが、それをいいことに時折無茶なことを頼んでいるらしい。正当な報酬は支払っているとはいうものの、それは嫌がられても仕方ない。そして榛斗は榛斗で葛城に面倒なことを頼んだ実績がある。
「……そういえば、碧都って記憶喪失の扱いになってたのね」
「まあ、実際本人の素性についてはこの前までわかってなかったわけだしね。その手続きと民警の試験が受けられる状態にするのと、あと魔法銃の登録と聖別弾の支給に関しても葛城先生に頼んだな、そういえば」
「それは……あの態度も納得ね」
蛍はマドラーでコーヒーをかき混ぜた。もはや弁護士の仕事を通り越している気がしなくもない。二人の横暴に振り回されている葛城に蛍は密かに同情した。
「とりあえず訃音通信が来るのは明日以降になるから、それまでは――」
「わかりました。ちょっとこっちでも調べてみます。ちなみに、生首がご飯食べたらどうなるか知ってます?」
「知らないなぁ。食べられるの?」
「食べられましたよ、少なくともあの生首は。でも食べたものはどこかに行ってしまいましたね」
それを聞いて榛斗は何かを思案しているようだった。蛍は首を傾げる。
「何か?」
「いや……ちょっともうひとつの可能性を思い出して」
「もうひとつの可能性?」
「その首、生霊の可能性も検討した方がいいかも」
民警がアクセスできる資料で一番調べにくいのが生霊だ。しかし榛斗が言うことももっともだ。
「そっちは俺の方で調べるよ」
「ツテはあるんですか?」
「俺じゃなくてハルコさんの方にね」
ハルコは魔力が全くないため戦闘に関しては蛍たちに任せているが、謎に広い人脈の持ち主である。その人脈はサーペンティン潰しのときにも遺憾無く発揮されていた。
「じゃあそちらはお願いします。私は……とりあえず邪魔にならない限りはうまくやって行こうと思うので」
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