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21・未知への道へ
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巽は深凪の脚を大きく開かせ、その間に体を割り込ませた。そして再び硬くなったそれを秘裂に擦り付ける。
「あっ……お兄様……っ」
「いくよ」
巽はそう囁いてからゆっくりと腰を進めた。既に蕩けているそこは何の抵抗もなく巽を受け入れていく。
「……っあ! ああ!」
巽は奥まで挿入するとそのまま最奥を突くように腰を打ち付ける。その度に深凪の口から嬌声が漏れた。その甘い声と、肉同士がぶつかる音と、淫靡な水音が部屋に響く。
「ああっ! おにいさっ……あっ!」
「深凪……」
「ああっ! おにいさ、好き……っ」
巽が深凪の腰を抱えて激しく動くと、その度に奥の子宮口まで擦れる。その激しい抽挿に深凪は呼吸もままならないほどだった。
「あっ、おにいさま……もう、だめ……」
「俺もだよ……一緒にいこう」
「んっ、ああぁあ!」
巽が最奥を強く突くと、深凪はその衝撃で達し膣内をきつく締め付けた。そして巽もまた同時に達し、深凪の中に欲望を放つ。
「はっ……はあ……」
巽がずるりと自身を抜くと、深凪の蜜壺から白濁が流れ落ちる。それを見た巽は再び自分のものが反応してしまうのを感じた。
「……お兄様」
「ん? ああ……」
深凪の目線で巽は自分がまた興奮してしまったことに気が付いた。そしてそれを見抜いた深凪も頬を染める。しかしそれは決して嫌悪などではなく、期待だった。
「もう一回……する?」
深凪はうつ伏せになり、膝を曲げた。巽は背後から深凪の細い腰を掴み、ゆっくりと挿入する。先ほどとは当たる箇所も違い、また違う快楽に二人は同時に熱い吐息を漏らした。
「あっ……ああ、ん」
「はっ……深凪……」
深凪は繋がったまま背中に口付ける巽の首に腕を回した。そしてそのまま起き上がり耳元で囁く。
「お兄様、愛しています」
「……っ!」
その言葉に反応して膣内の巽のものが大きくなるのを感じた。そして抽挿が速くなる。
「あっ! ああ……っ」
「はあっ……深凪、愛してる……」
「んんっ! おにいさま……私も愛しています」
二人は愛を囁きながら、そのまま何度も体を重ね合ったのだった。
***
(鬼に憑かれた人間は体力も向上すると言うが……)
飽きもせずに何度も体を重ねる深凪たちに月禍は少し呆れていた。特に巽は耀鬼の力が完全には回復していないというのにすでに絶倫だ。今後耀鬼の力が回復すればどうなるのか――その懸念は深凪にはしばらく伝えておかないことにした。
(ああ……気持ちいいな、これは)
かつて耀鬼に抱かれたことがある。それは欲を喰らうために舞で男を散々惑わし、たっぷり欲は食べられたが、踊り子に化けた月禍もいただかれてしまった、そんな日の後だった。他の男に抱かれたのがそんなに気に入らなかったのか。その真意まではわからない。けれどそこから互いの存在に耽溺したのは覚えている。
(だが、そのまま二人で閉じていくこともできなかった)
二人だけで、他には何もいらないと言えれば幸せだったのかもしれない。けれど月禍は人の欲を、耀鬼は人の穢れを食わなければ生きていけないのだ。
(鬼の生は人のものより長いが……それでも長かった)
深凪と巽を通してではあるが、こうして触れ合えるまでの時間は永遠かと思うほどに長かった。あの村に行かなければ――そんなことを思ったこともあった。
(愛している……兄上)
誰かを通してでしか触れ合えない距離がもどかしい。それでも以前のように触れられている感覚は確かにあった。
***
最小限の荷物だけをまとめ、二人は夜中に村を出た。昼間だと見つかってしまう可能性があるし、鬼に取り憑かれている二人は夜目がきくようになっているので夜の方が都合が良かったのだ。
村を出た深凪は辺りを見回しながら巽ときつく手を繋いだ。ここから先は全てが未知の世界なのだ。
「お兄様、行くあてはあるのですか?」
「とにかくまずは雨風を凌いで生活できる拠点を見つけなければならない。少し遠いが帝都ならそういった場所もあるだろう」
「帝都?」
それは深凪にとっては全く未知の単語だった。村の外があることはわかっていたが、そこがどうなっているかはまるでわからないのだ。
「帝都というのはこの国の中心のことだ。人も物も村より多いから、目を回してしまうかもしれないな」
「想像がつきません……」
「そうだな。俺も話で聞いただけだ。最近では大きな駅ができたという話もあったが、俺もそもそも駅というのがどういうものなのかがわからないんだ」
巽は外から来る人間との関わりもあったから、多少の知識はある。しかしそれは全て知識でしかない。実際はどんなものなのかはまるでわからないのだ。
「でも、お兄様が一緒なら大丈夫です」
深凪はそう微笑んだ。巽はそれに微笑み返す。
「それに、少し楽しみでもあるの」
「楽しみ?」
「ここからは私にとっては全部が初めてだから」
夢見たことすらない世界に行くのだ。不安もあるが、それと同じくらいの期待がある。
「……そうか」
巽は深凪の頭を撫でた。そしてそのまま手を滑らせて深凪の頰に触れる。
「もっと早く、こうしていたら良かったのかもしれないな」
「お兄様……」
「でも、これからは必ず……俺が深凪を守るから」
深凪は巽の手に自分の手を添えた。巽は深凪を守るために鬼を受け入れた。そしてそれは深凪も同じなのだ。
「鬼がいなくてもお兄様は私を守ってくれていました。それに……これからは、私もお兄様を守ります」
巽は虚をつかれたような顔をしたが、やがてそれは優しい笑みに変わった。
「そうだな……これからはお互いに守り合っていけばいいのかもしれないな」
二人は笑い合い、まだ見ぬ土地に向かって歩き出した。村から帝都に向かうには二つの峠を越えなければならない。しかし二人は互いの存在を頼りにその道を進んで行った。
――そして一月が過ぎた頃、二人の旅はとうとう終わりを迎えたのだった。
「……お兄様、これは」
「そうだな……ここまで来るのに駅はいくつか見てきたが……」
ここまでも何もかもが未知であったが、噂にしか聞いていなかったその煉瓦造の駅は二人を圧倒した。行き交う人も多く、この駅の周りだけで村の人間を超えてしまうのではないかと深凪は思った。
蒸気機関車の汽笛の音が響く。辺りを歩く人たちの中には深凪が見たことのない服を着ているものもいた。
「ここまで来たはいいものの……ここからどこに行けばいいかわからないな」
「私もです」
「ひとまず宿を探すとしようか」
巽は煉瓦造の建物から目を離して歩き出す。深凪はそれを追いかけながらも、振り返ってもう一度その巨大な駅を見た。先のことは何もかもがわからない。けれど見たことのないような建物と行き交う人々は深凪の心を微かに躍らせていた。
「あっ……お兄様……っ」
「いくよ」
巽はそう囁いてからゆっくりと腰を進めた。既に蕩けているそこは何の抵抗もなく巽を受け入れていく。
「……っあ! ああ!」
巽は奥まで挿入するとそのまま最奥を突くように腰を打ち付ける。その度に深凪の口から嬌声が漏れた。その甘い声と、肉同士がぶつかる音と、淫靡な水音が部屋に響く。
「ああっ! おにいさっ……あっ!」
「深凪……」
「ああっ! おにいさ、好き……っ」
巽が深凪の腰を抱えて激しく動くと、その度に奥の子宮口まで擦れる。その激しい抽挿に深凪は呼吸もままならないほどだった。
「あっ、おにいさま……もう、だめ……」
「俺もだよ……一緒にいこう」
「んっ、ああぁあ!」
巽が最奥を強く突くと、深凪はその衝撃で達し膣内をきつく締め付けた。そして巽もまた同時に達し、深凪の中に欲望を放つ。
「はっ……はあ……」
巽がずるりと自身を抜くと、深凪の蜜壺から白濁が流れ落ちる。それを見た巽は再び自分のものが反応してしまうのを感じた。
「……お兄様」
「ん? ああ……」
深凪の目線で巽は自分がまた興奮してしまったことに気が付いた。そしてそれを見抜いた深凪も頬を染める。しかしそれは決して嫌悪などではなく、期待だった。
「もう一回……する?」
深凪はうつ伏せになり、膝を曲げた。巽は背後から深凪の細い腰を掴み、ゆっくりと挿入する。先ほどとは当たる箇所も違い、また違う快楽に二人は同時に熱い吐息を漏らした。
「あっ……ああ、ん」
「はっ……深凪……」
深凪は繋がったまま背中に口付ける巽の首に腕を回した。そしてそのまま起き上がり耳元で囁く。
「お兄様、愛しています」
「……っ!」
その言葉に反応して膣内の巽のものが大きくなるのを感じた。そして抽挿が速くなる。
「あっ! ああ……っ」
「はあっ……深凪、愛してる……」
「んんっ! おにいさま……私も愛しています」
二人は愛を囁きながら、そのまま何度も体を重ね合ったのだった。
***
(鬼に憑かれた人間は体力も向上すると言うが……)
飽きもせずに何度も体を重ねる深凪たちに月禍は少し呆れていた。特に巽は耀鬼の力が完全には回復していないというのにすでに絶倫だ。今後耀鬼の力が回復すればどうなるのか――その懸念は深凪にはしばらく伝えておかないことにした。
(ああ……気持ちいいな、これは)
かつて耀鬼に抱かれたことがある。それは欲を喰らうために舞で男を散々惑わし、たっぷり欲は食べられたが、踊り子に化けた月禍もいただかれてしまった、そんな日の後だった。他の男に抱かれたのがそんなに気に入らなかったのか。その真意まではわからない。けれどそこから互いの存在に耽溺したのは覚えている。
(だが、そのまま二人で閉じていくこともできなかった)
二人だけで、他には何もいらないと言えれば幸せだったのかもしれない。けれど月禍は人の欲を、耀鬼は人の穢れを食わなければ生きていけないのだ。
(鬼の生は人のものより長いが……それでも長かった)
深凪と巽を通してではあるが、こうして触れ合えるまでの時間は永遠かと思うほどに長かった。あの村に行かなければ――そんなことを思ったこともあった。
(愛している……兄上)
誰かを通してでしか触れ合えない距離がもどかしい。それでも以前のように触れられている感覚は確かにあった。
***
最小限の荷物だけをまとめ、二人は夜中に村を出た。昼間だと見つかってしまう可能性があるし、鬼に取り憑かれている二人は夜目がきくようになっているので夜の方が都合が良かったのだ。
村を出た深凪は辺りを見回しながら巽ときつく手を繋いだ。ここから先は全てが未知の世界なのだ。
「お兄様、行くあてはあるのですか?」
「とにかくまずは雨風を凌いで生活できる拠点を見つけなければならない。少し遠いが帝都ならそういった場所もあるだろう」
「帝都?」
それは深凪にとっては全く未知の単語だった。村の外があることはわかっていたが、そこがどうなっているかはまるでわからないのだ。
「帝都というのはこの国の中心のことだ。人も物も村より多いから、目を回してしまうかもしれないな」
「想像がつきません……」
「そうだな。俺も話で聞いただけだ。最近では大きな駅ができたという話もあったが、俺もそもそも駅というのがどういうものなのかがわからないんだ」
巽は外から来る人間との関わりもあったから、多少の知識はある。しかしそれは全て知識でしかない。実際はどんなものなのかはまるでわからないのだ。
「でも、お兄様が一緒なら大丈夫です」
深凪はそう微笑んだ。巽はそれに微笑み返す。
「それに、少し楽しみでもあるの」
「楽しみ?」
「ここからは私にとっては全部が初めてだから」
夢見たことすらない世界に行くのだ。不安もあるが、それと同じくらいの期待がある。
「……そうか」
巽は深凪の頭を撫でた。そしてそのまま手を滑らせて深凪の頰に触れる。
「もっと早く、こうしていたら良かったのかもしれないな」
「お兄様……」
「でも、これからは必ず……俺が深凪を守るから」
深凪は巽の手に自分の手を添えた。巽は深凪を守るために鬼を受け入れた。そしてそれは深凪も同じなのだ。
「鬼がいなくてもお兄様は私を守ってくれていました。それに……これからは、私もお兄様を守ります」
巽は虚をつかれたような顔をしたが、やがてそれは優しい笑みに変わった。
「そうだな……これからはお互いに守り合っていけばいいのかもしれないな」
二人は笑い合い、まだ見ぬ土地に向かって歩き出した。村から帝都に向かうには二つの峠を越えなければならない。しかし二人は互いの存在を頼りにその道を進んで行った。
――そして一月が過ぎた頃、二人の旅はとうとう終わりを迎えたのだった。
「……お兄様、これは」
「そうだな……ここまで来るのに駅はいくつか見てきたが……」
ここまでも何もかもが未知であったが、噂にしか聞いていなかったその煉瓦造の駅は二人を圧倒した。行き交う人も多く、この駅の周りだけで村の人間を超えてしまうのではないかと深凪は思った。
蒸気機関車の汽笛の音が響く。辺りを歩く人たちの中には深凪が見たことのない服を着ているものもいた。
「ここまで来たはいいものの……ここからどこに行けばいいかわからないな」
「私もです」
「ひとまず宿を探すとしようか」
巽は煉瓦造の建物から目を離して歩き出す。深凪はそれを追いかけながらも、振り返ってもう一度その巨大な駅を見た。先のことは何もかもがわからない。けれど見たことのないような建物と行き交う人々は深凪の心を微かに躍らせていた。
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