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8・選択肢_2
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「天花ちゃん?」
部屋でのんびり休んでいた橙は、インターフォンの画面に映し出された人物を見て首を傾げた。恭一とは昔からの仲だが、天花とはほとんど言葉を交わすこともなかった。嫌な予感に襲われながらも橙は部屋のドアを開けて、天花を招き入れた。
「何かあったの?」
橙の問いに、天花は真っ直ぐに、どこか睨むような視線を橙に向けた。
「橙さん、お兄ちゃんから預かってるものがあるでしょ?」
「そんなんあったかな?」
橙は答えをはぐらかす。確かに預かった、というか処分を頼まれたものはある。けれど天花が求めているものがそれなのであれば、逆に何があっても渡すわけにはいかない。
「お兄ちゃんの荷物の中にはなかった。私だったら橙さんに預けると思う」
「心当たりはないなぁ。むしろこっちが色々あげてるくらいなんだけど」
「とぼけないで」
橙は天花が取り出したものを見て目を瞠った。細い注射器。中に何が入っているかはわからないが、それを見て嫌な予感がする程度の知識を橙は持っている。
「あの看護師からくすねたのか」
「効果は知らないけど」
その言葉に嘘がないなら、それが人を殺すための毒なのか、動きを奪う程度の効果しかないのかも天花にはわかっていないのだ。それでも天花が求めているものを考えれば危険には変わりない。それに、月野深色の持ち物だということを考慮すれば、打たれていい影響があるものでないことだけは確実だ。
「とにかくオレは恭一からは何も預かってない。オレが持ってるって思うなら、それが何なのかを言ってみろ」
「お兄ちゃんは銃を長い間自分で持っていられるような人間じゃない。でもあの廃墟を出るまでは確実に持っていた。多分途中で捨てるようなこともできない。――そしてお兄ちゃんは橙さんを信頼している」
橙は溜息を吐いた。根拠がある推論とは言えないが、天花の言葉は確かに当たっている。恭一は昭島を殺したが、本来は人を殺すことなど出来ない心根の持ち主だ。その相手にどんな恨みがあったとしても躊躇うだろう。殺人者とそうでない人間を隔てる線を越えておきながら、心はまだその一線を越えられてはいなかった。
人を殺した人間の頭の中には、その後もずっと殺してしまうという選択が浮かぶようになる。けれど恭一はその選択肢を自分で消そうとしていたのだろう。だからこそ銃は橙に処分を任せた。けれど――天花は違う。
「……もうとっくに処分したよ。オレだって銃刀法違反になるのは嫌なんでね」
「嘘でしょ。目が泳いでるよ」
必死に取り繕っても隠しきれない変化を読み取られる。天花の目には何もかもを見通してしまうような苛烈な透明さが宿っていた。
「銃を手に入れて、何するつもりだ?」
「まだ考えてないけど、でもここからはすぐに出ていくよ」
「恭一のことはどうするつもりだ?」
その瞬間に天花が浮かべた笑みに、橙は背筋が凍るような悪寒を感じた。天花は堪えきれないとでも言うように笑い始める。嫌な予感がした。橙は壁に天花を追い詰めて、その胸倉を掴んだ。
「――恭一に何をした?」
「橙さんは私よりもお兄ちゃんの方が大切でしょ? 急げばまだ助けられるかもしれないね?」
「っ……何で……アイツは誰よりも天花ちゃんのこと考えてたのに!」
天花が人を二人殺しても、もしかしたらもっと多くの人を傷つけているかもしれなくても、恭一は天花を見捨てることはなかった。やり直せることを、幸せに生きられることを望んでいた。それなのに天花はその優しさを全て踏み躙ったのだ。
「お兄ちゃんはどうしようもない馬鹿だよ。私に優しくするのがそもそも間違ってた」
「天花ちゃん……」
「私に関わった人間はみんな不幸になる。橙さんはお兄ちゃんほど馬鹿じゃないからわかってるでしょ? やり直せない、どうしようもない人間だってこの世にはいる」
橙は唇を噛んだ。恭一には言わなかったが、それは薄々感じていたことだった。恭一のように理由があって人を殺してしまって、けれど心が一線を越えていない人間ならまだ戻ってこられる可能性はある。けれど頭の中から「殺す」という選択肢を消せなくなった人間も存在するのだ。
「急げば助けられる可能性はあるよ。橙さんは、どっちを選ぶの?」
天花は橙がどちらを選ぶかわかっているのだろう。橙にとって大切なものを失わないようにするためには、ここで天花と無駄なやり取りをしている場合ではない。たとえ恭一が望むのがその逆だったとしてもだ。橙は天花の服から手を離し、笑みを浮かべる天花を見下ろした。
「――冷蔵庫の中にある。持っていくなら勝手にしろ」
橙はその場に天花を残し、急いで部屋を出た。天花の言葉を信じるなら急いだ方がいい。時間が経てば経つほどに状況は悪化していくのだから。このあとの天花の運命よりも、大切な友人を失いたくないという思いが勝った。そして天花は橙がそうすることを最初から読んでいたのだろう。掌の上で転がされているような状況に腹が立つが、かといって選択を変えることも出来はしなかった。
信号も何も全て無視して恭一の部屋に向かった。天花は鍵をかけなかったらしく、ドアノブをひねったらすぐにドアが開く状態になっていた。焦る鼓動を撫でつけながら恭一の姿を探す。狭い部屋の床に蹲るその姿を見つけて橙は一も二もなく駆け寄った。
「恭一!」
大声を出せば、恭一が薄目を開く。けれど身体には力が入らないようだったし、呼吸をするのも苦しそうだった。でも僅かでも意識がある今の状態なら助けられる可能性はある。救急に電話をかけようとする橙を恭一が止める。
「……天花、は」
「っ……お前、誰のせいで今自分がそうなってるかわかってんのかよ!?」
いつでも恭一の中で一番優先されるのは天花だった。大学を決めるときも、その後の道を決めるときも、恭一は橙ではなく天花のことを優先したのだ。そうしなければ、優しくなんてしなければ、殺されかけることもなかったかもしれないのに。殺されかけているこの状況でも、まだその存在を気にかけるのか。
「もうどうなったっていいだろ! あの子はもう戻れない」
現実を突きつける言葉を投げる。恭一が何を言おうが、橙は天花のことを許すことは出来なかった。一番に想われていたのに、それを踏み躙ったこと。引き返せると信じていた恭一を裏切ったこと。橙が得られなかったものを持っていたはずなのに、それをあっさり捨ててしまったこと。
「違うんだ、橙」
「何が違うんだよ!?」
恭一の言葉を無視して救急車を呼ぶ。力が入っていない手に触れることが怖かった。大切なものを失ってしまうかもしれない恐怖が目の前に迫ってきている。それなのに恭一の心は、目の前にいるはずの橙には向いていないのだった。
「いい加減認めろよ! あの子はお前を殺そうとしたのは事実だろ!」
「だから、それが違うんだ」
弱々しい声で、それでも切実さが伝わる口調で恭一が言う。橙の服を掴もうとする手に少しだけ力が入った。
「二つのコップがあって、毒は片方だけに入ってた。最後にどっちを飲むかを決めたのは天花じゃない。俺なんだ――」
橙は何も答えなかった。恭一がこんなところで嘘を言うことはないだろう。おそらく恭一なら天花が渡したものなら疑いなく飲んでしまっただろう。毒を盛るならその方が確実だったはずだ。それなのにどちらを飲むかを相手に決めさせたということは。
「天花を、止めないと」
「その身体で何が出来るんだよ!? 死にかけてんだぞお前!」
「それでも――天花を、死なせたくは……」
言葉が途切れる。声をかければ目を開きはするが、言葉を紡ぐのは難しいようだった。そんな状態なのに、死なせたくはないと思うのか。その想いは純粋で、真っ直ぐで、橙は血が出るほど唇を噛み締めた。
これだけの想いが、天花には届かなかった。
何よりも腹立たしいのは、悔しいのは、ただそれだけのことだった。天花は銃という簡単に人を殺せる道具を持って出て行った。そして銃で殺せるのは他人だけではなく、自分自身も含まれる。恭一が毒入りのコップを選ばなければ、ここで死ぬのは天花の方だった。二択を選び損なったのは恭一の方だ。いや、もしかしたら恭一は自分がそちらを選んだことに納得さえしているかもしれない。
恭一は体さえ動くなら今すぐにでも天花を止めに行くのだろう。近付いてくるサイレンの音を聞きながら、橙は内側に爪痕が残るほどに拳を握り締めていた。
「天花ちゃん?」
部屋でのんびり休んでいた橙は、インターフォンの画面に映し出された人物を見て首を傾げた。恭一とは昔からの仲だが、天花とはほとんど言葉を交わすこともなかった。嫌な予感に襲われながらも橙は部屋のドアを開けて、天花を招き入れた。
「何かあったの?」
橙の問いに、天花は真っ直ぐに、どこか睨むような視線を橙に向けた。
「橙さん、お兄ちゃんから預かってるものがあるでしょ?」
「そんなんあったかな?」
橙は答えをはぐらかす。確かに預かった、というか処分を頼まれたものはある。けれど天花が求めているものがそれなのであれば、逆に何があっても渡すわけにはいかない。
「お兄ちゃんの荷物の中にはなかった。私だったら橙さんに預けると思う」
「心当たりはないなぁ。むしろこっちが色々あげてるくらいなんだけど」
「とぼけないで」
橙は天花が取り出したものを見て目を瞠った。細い注射器。中に何が入っているかはわからないが、それを見て嫌な予感がする程度の知識を橙は持っている。
「あの看護師からくすねたのか」
「効果は知らないけど」
その言葉に嘘がないなら、それが人を殺すための毒なのか、動きを奪う程度の効果しかないのかも天花にはわかっていないのだ。それでも天花が求めているものを考えれば危険には変わりない。それに、月野深色の持ち物だということを考慮すれば、打たれていい影響があるものでないことだけは確実だ。
「とにかくオレは恭一からは何も預かってない。オレが持ってるって思うなら、それが何なのかを言ってみろ」
「お兄ちゃんは銃を長い間自分で持っていられるような人間じゃない。でもあの廃墟を出るまでは確実に持っていた。多分途中で捨てるようなこともできない。――そしてお兄ちゃんは橙さんを信頼している」
橙は溜息を吐いた。根拠がある推論とは言えないが、天花の言葉は確かに当たっている。恭一は昭島を殺したが、本来は人を殺すことなど出来ない心根の持ち主だ。その相手にどんな恨みがあったとしても躊躇うだろう。殺人者とそうでない人間を隔てる線を越えておきながら、心はまだその一線を越えられてはいなかった。
人を殺した人間の頭の中には、その後もずっと殺してしまうという選択が浮かぶようになる。けれど恭一はその選択肢を自分で消そうとしていたのだろう。だからこそ銃は橙に処分を任せた。けれど――天花は違う。
「……もうとっくに処分したよ。オレだって銃刀法違反になるのは嫌なんでね」
「嘘でしょ。目が泳いでるよ」
必死に取り繕っても隠しきれない変化を読み取られる。天花の目には何もかもを見通してしまうような苛烈な透明さが宿っていた。
「銃を手に入れて、何するつもりだ?」
「まだ考えてないけど、でもここからはすぐに出ていくよ」
「恭一のことはどうするつもりだ?」
その瞬間に天花が浮かべた笑みに、橙は背筋が凍るような悪寒を感じた。天花は堪えきれないとでも言うように笑い始める。嫌な予感がした。橙は壁に天花を追い詰めて、その胸倉を掴んだ。
「――恭一に何をした?」
「橙さんは私よりもお兄ちゃんの方が大切でしょ? 急げばまだ助けられるかもしれないね?」
「っ……何で……アイツは誰よりも天花ちゃんのこと考えてたのに!」
天花が人を二人殺しても、もしかしたらもっと多くの人を傷つけているかもしれなくても、恭一は天花を見捨てることはなかった。やり直せることを、幸せに生きられることを望んでいた。それなのに天花はその優しさを全て踏み躙ったのだ。
「お兄ちゃんはどうしようもない馬鹿だよ。私に優しくするのがそもそも間違ってた」
「天花ちゃん……」
「私に関わった人間はみんな不幸になる。橙さんはお兄ちゃんほど馬鹿じゃないからわかってるでしょ? やり直せない、どうしようもない人間だってこの世にはいる」
橙は唇を噛んだ。恭一には言わなかったが、それは薄々感じていたことだった。恭一のように理由があって人を殺してしまって、けれど心が一線を越えていない人間ならまだ戻ってこられる可能性はある。けれど頭の中から「殺す」という選択肢を消せなくなった人間も存在するのだ。
「急げば助けられる可能性はあるよ。橙さんは、どっちを選ぶの?」
天花は橙がどちらを選ぶかわかっているのだろう。橙にとって大切なものを失わないようにするためには、ここで天花と無駄なやり取りをしている場合ではない。たとえ恭一が望むのがその逆だったとしてもだ。橙は天花の服から手を離し、笑みを浮かべる天花を見下ろした。
「――冷蔵庫の中にある。持っていくなら勝手にしろ」
橙はその場に天花を残し、急いで部屋を出た。天花の言葉を信じるなら急いだ方がいい。時間が経てば経つほどに状況は悪化していくのだから。このあとの天花の運命よりも、大切な友人を失いたくないという思いが勝った。そして天花は橙がそうすることを最初から読んでいたのだろう。掌の上で転がされているような状況に腹が立つが、かといって選択を変えることも出来はしなかった。
信号も何も全て無視して恭一の部屋に向かった。天花は鍵をかけなかったらしく、ドアノブをひねったらすぐにドアが開く状態になっていた。焦る鼓動を撫でつけながら恭一の姿を探す。狭い部屋の床に蹲るその姿を見つけて橙は一も二もなく駆け寄った。
「恭一!」
大声を出せば、恭一が薄目を開く。けれど身体には力が入らないようだったし、呼吸をするのも苦しそうだった。でも僅かでも意識がある今の状態なら助けられる可能性はある。救急に電話をかけようとする橙を恭一が止める。
「……天花、は」
「っ……お前、誰のせいで今自分がそうなってるかわかってんのかよ!?」
いつでも恭一の中で一番優先されるのは天花だった。大学を決めるときも、その後の道を決めるときも、恭一は橙ではなく天花のことを優先したのだ。そうしなければ、優しくなんてしなければ、殺されかけることもなかったかもしれないのに。殺されかけているこの状況でも、まだその存在を気にかけるのか。
「もうどうなったっていいだろ! あの子はもう戻れない」
現実を突きつける言葉を投げる。恭一が何を言おうが、橙は天花のことを許すことは出来なかった。一番に想われていたのに、それを踏み躙ったこと。引き返せると信じていた恭一を裏切ったこと。橙が得られなかったものを持っていたはずなのに、それをあっさり捨ててしまったこと。
「違うんだ、橙」
「何が違うんだよ!?」
恭一の言葉を無視して救急車を呼ぶ。力が入っていない手に触れることが怖かった。大切なものを失ってしまうかもしれない恐怖が目の前に迫ってきている。それなのに恭一の心は、目の前にいるはずの橙には向いていないのだった。
「いい加減認めろよ! あの子はお前を殺そうとしたのは事実だろ!」
「だから、それが違うんだ」
弱々しい声で、それでも切実さが伝わる口調で恭一が言う。橙の服を掴もうとする手に少しだけ力が入った。
「二つのコップがあって、毒は片方だけに入ってた。最後にどっちを飲むかを決めたのは天花じゃない。俺なんだ――」
橙は何も答えなかった。恭一がこんなところで嘘を言うことはないだろう。おそらく恭一なら天花が渡したものなら疑いなく飲んでしまっただろう。毒を盛るならその方が確実だったはずだ。それなのにどちらを飲むかを相手に決めさせたということは。
「天花を、止めないと」
「その身体で何が出来るんだよ!? 死にかけてんだぞお前!」
「それでも――天花を、死なせたくは……」
言葉が途切れる。声をかければ目を開きはするが、言葉を紡ぐのは難しいようだった。そんな状態なのに、死なせたくはないと思うのか。その想いは純粋で、真っ直ぐで、橙は血が出るほど唇を噛み締めた。
これだけの想いが、天花には届かなかった。
何よりも腹立たしいのは、悔しいのは、ただそれだけのことだった。天花は銃という簡単に人を殺せる道具を持って出て行った。そして銃で殺せるのは他人だけではなく、自分自身も含まれる。恭一が毒入りのコップを選ばなければ、ここで死ぬのは天花の方だった。二択を選び損なったのは恭一の方だ。いや、もしかしたら恭一は自分がそちらを選んだことに納得さえしているかもしれない。
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