147 / 198
番外編7(2024年文披31題)
9・焚き火(ぱちぱち)
しおりを挟む
「カナエ、何聞いてんの?」
カナエは休み時間にヘッドホンをつけてぼんやりしていた。星音が話しかけると、カナエは黙ってヘッドホンを星音に手渡す。それをつけてみると、何が爆ぜるようなぱちぱちという音が聞こえてきた。どこか落ち着く音だとは思うが、あまりに予想外のものを聞いていたので星音は驚いた。
「何やこれ?」
「焚き火の音」
「何でそんなん聞いてるん?」
「んー……なんか落ち着く」
「夏に聞くとちょっと暑苦しいような……」
「でもキャンプは夏にもやるでしょ?」
確かに、と納得しかけたが、そもそも焚き火と言えばキャンプの認識で問題ないのだろうか。そう思いながらも星音はカナエにヘッドホンを返した。
「で、その写真集は一体……」
「これはねぇ、廃墟の写真集。いいでしょ」
「綺麗なのもあるけど不気味なのも結構多いな」
「それがいいんだよ。あ、星音も今度いっしょに廃墟探索に行く?」
「ちょっと前に旧校舎でえらい目に遭ったやろ……」
旧校舎も廃墟と言える。そしてそこにいる幽霊のおかげで大変な目に遭ったのは記憶に新しい。そもそもカナエに廃墟探索の趣味があったとは知らなかった。
「廃墟行って何するん?」
「まあ写真撮ったりとかもするけど、だいたいぼーっとしてる。面白いんだよ。そこはもう使われてないけど、誰かがいた痕跡だけは残ってるの。静かで落ち着く」
「わかるような……わからないような……やな」
カナエはそれからも淡々と、けれど少しだけ楽しそうに廃墟の話を続ける。友人の新しい一面を知った星音は、微笑みながらその話を聞き続けていた。
カナエは休み時間にヘッドホンをつけてぼんやりしていた。星音が話しかけると、カナエは黙ってヘッドホンを星音に手渡す。それをつけてみると、何が爆ぜるようなぱちぱちという音が聞こえてきた。どこか落ち着く音だとは思うが、あまりに予想外のものを聞いていたので星音は驚いた。
「何やこれ?」
「焚き火の音」
「何でそんなん聞いてるん?」
「んー……なんか落ち着く」
「夏に聞くとちょっと暑苦しいような……」
「でもキャンプは夏にもやるでしょ?」
確かに、と納得しかけたが、そもそも焚き火と言えばキャンプの認識で問題ないのだろうか。そう思いながらも星音はカナエにヘッドホンを返した。
「で、その写真集は一体……」
「これはねぇ、廃墟の写真集。いいでしょ」
「綺麗なのもあるけど不気味なのも結構多いな」
「それがいいんだよ。あ、星音も今度いっしょに廃墟探索に行く?」
「ちょっと前に旧校舎でえらい目に遭ったやろ……」
旧校舎も廃墟と言える。そしてそこにいる幽霊のおかげで大変な目に遭ったのは記憶に新しい。そもそもカナエに廃墟探索の趣味があったとは知らなかった。
「廃墟行って何するん?」
「まあ写真撮ったりとかもするけど、だいたいぼーっとしてる。面白いんだよ。そこはもう使われてないけど、誰かがいた痕跡だけは残ってるの。静かで落ち着く」
「わかるような……わからないような……やな」
カナエはそれからも淡々と、けれど少しだけ楽しそうに廃墟の話を続ける。友人の新しい一面を知った星音は、微笑みながらその話を聞き続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる