Fake Dancers(フェイク ダンサーズ)

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【1章】峠との出会い①

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「涼太(りょうた)ー!お前、愛車(CBX400F)どうしたの?」

「もう気付かれたか~!」
「隼人(はやと)、俺たちもうすぐ高校卒業だぜ。いつまでもガキの女(乗り物)にまたがってちゃ、大人になれねぇぜ!」

「どうした涼太? 頭でもイカれたのか」

「まぁ隼人、いいから帰り俺ん家寄って行きなよ。驚かせてやっからよ!」

 鳴海(なるみ)隼人 (18)と上川(かみかわ)涼太 (18)の二人は中学校からの親友だ。

 小学校は、わずかな校区の違いから別の学校となってたが近所の間柄だった。

 A中学校を卒業後、別のN市内にあるN工業高校へと共に進学を決めるほどの親友なのだ。

 それほどの仲であるのに涼太は、今回の件を隼人には気付かれまいと年末に密にと遂行していたが案の定、年明け早々に気付かれることとなってしまった。


 二人は電車に乗り5駅ほどで到着する地元の駅の改札口を抜けると、自転車を漕ぎ涼太の家へと向かった。

 N市からわずか5駅ほどで着く市内であるが、N市ほどの高層ビル群は無くなり、緑の景色が広がるのどかな場所だ。



 しばらく自転車を漕ぐと二人は涼太の家に着いた。隼人は何かに気付いた。


「涼太!お前まさかB子(CBX400F)売ったんじゃないよな!?」


「まぁ隼人、そう慌てんじゃねぇぜ!」
「今から俺の新しいスケ(女)を紹介してやっからさ!」


 涼太は自宅に到着するなりポケットからスマホを取り出すと素早く操作する。するとスマホの操作でシャッターが上がり出した。


 上川家は一戸建てだ。平均的な家庭の家柄だが、五年前に家を建て直しているため現代のシャレた造りの家となっている。家の正面には楽々車3台収納可能なシャッター付きの車庫が備わっている。今、完全にシャッターが開放された。


「ジャジャーン♪ これが俺の新しい彼女シルビアちゃんだぜ!」
「平成元年式S13シルビアの、あえてのQsだ。Ksと違ってターボは無くパワーも低いが、キャンキャンと鳴く甲高い声(音)が魅力だぜ!」


「涼太ふざけんなよ!」
「お前、漢(男)は単車一筋って言ってたよな!」


「隼人、それは本当の女を知らないガキ(中坊時代)の頃の話だぜっ!つまり平成の頃の話であって、今は令和だぜっ!」
「まぁ俺たちも大人になったってことだ。いつまでも跨(またが)るばかりじゃなくて、時には相手に包み込んでもらってもいいんじゃねえかってことよ。分かるか!?」


 隼人は一瞬、お互い女を知らない童貞の身で何を上から目線で言ってるのかと思ったが、そこは涼太には言わないようそっとしておいた。


「早速なんだが隼人、お前週末空いてんよな」


「涼太、俺をいつまでも女の居ない暇人扱いすんじゃねえぞ!」
「まぁだけど、お前がどうしてもって言うなら付き合ってやってもいいけど」


「おいおい隼人、急に忙しい男ぶってんじゃねえぞ!まぁでも結果的にはOKってことだよな。お前に楽しい世界、魅せてやるよ!」



 週末の約束を交わしている二人の横で、涼太の新しい愛車シルビアは真紅なボディ(色)を纏(まと)い妖艶に輝(微笑んで)いていた。



    このS13 シルビア Qsは、派手なパーツこそは身に付けてはいないが、足回りやマフラーなどの排気系をカスタムした、ライトチューンな仕上がりとなっている。俗に言う『峠仕様』ってところだ。


 中学を卒業後、涼太と一緒に単車の中型免許を取り単車を買ってツーリングを楽しんでいたが、今回隼人は涼太に何の相談も無く先を越される形となって、少し複雑な気持ちだった。


                 






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