3 / 15
【1章】峠との出会い②
しおりを挟む〈週末の金曜日の夜7時〉
[プォーーン、プォーン、プォーーン〕
〔ブボーーボボボボーーーー‥‥]
待ち合わせ場所である近所の某ホームセンターの駐車場に、今真紅のS13型シルビアQsが甲高い音を響かせて入って来た。
隼人は20分ほど先に着いて待っていた。涼太の車に同乗して行くために、自慢の愛車(ゼファー400)をバイト先であるガススタに停めて徒歩で来ていたこともあり、少しイラッとしながらもスマホをいじりながら待っていたのだ。
涼太の車が見えても、しばらくあえて知らぬ振りをしていた。
[パァパァーン]
涼太が、気付けよとばかりにクラクションを派手に鳴らす。
「うっせーなぁ、分かってるよ!」
隼人は涼太に聞こえないくらいの声でボソッと悪態づくと、ゆっくりシルビアの方へ進み歩いて近寄った。
「隼人! 俺のシルビアちゃんの隣は、超デリケートシートなんだから、優しく座ってくれよ」
隼人はイラッとしながらもシルビアのドアを開け助手席へと乗り込んだ。
「はいはい、優しくね~、了解、了解、失礼しますねーっと‥‥‥‥ !? 硬(か)ってー!!」
「なっなん何だ、この硬いシートは!硬くて座り心地悪いなぁー」
「とりあえず危ねぇからシートベルトをしねぇとなっ!んっ!? ‥‥‥‥ ? あれっ、コレどうやってベルトすんの?」
「やだねー、トーシロー(素人)くんはっ!」
「いいか、これは通常の3点式シートベルトと違って4点式のベルトなんだ。複雑に見えるけど真ん中でカチッと止めるだけの、簡単でしっかり安全なシートベルトなんだぜっ」
「あっ、出来た!なるほど簡単だ。」
「まぁ涼太の運転だと、これだけガッチリしたシートベルトじゃなきゃ危ねぇってことか」
「もう、いいんだな。いいなら出発するぜっ!」
「歯を食いしばっときなよ、舌噛むぜ!」
[ンキャキャキャキャッ!キャキャッ]
[プォーーン、プォン、プォーーーン、プォン、プォーーーー‥‥‥]
真紅のシルビアが急発進して駐車場を後にして行った。涼太がシフトを変えアクセルを踏み込む度に、隼人の身体は硬いバケットシートの背に押し付けられる。
これはG(重力)の力だ。仮に60kgの体重の人であれば2Gの場合には体重の倍の120kgの力が掛かることになる。これが横に掛かれば『横G』と呼ばれ、その力が同じく横に掛かることになる。実際のレース時には3~5Gは掛かっている。
そのためにも彼らのようにチューン(改造)が施された車には、4点式ベルトのようにガッチリしたベルトと、身をしっかりと固定するバケットシートが必要不可欠となる。
「とりあえずすげー山奥に行くから、今から3時間くらいは掛かるけど、その場所に行ったら隼人ぜってーにビックリするぜっ!」
走り初めてからまだ30分も走っていないのだが、隼人からの返事は戻って来なかった。度重なるGの影響により、隼人は早くも車酔い気味になっていた。シルビアの隣に座ったその時から既に隼人は、涼太とシルビアの中のまな板の鯉と化されていた。
40
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる