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【2章】チーム・ブラックドラゴン⑤
しおりを挟む「誠さん、ただ今 戻りました!」
「おう、隼人! お疲れ様」
「隼人、先程から長らくお前のために、お客様がお待ちだぞ。早く、こっちに来い」
「えっ、俺にお客ですか?」
「鳴海 隼人さん、お初にお目にかかります」
「アポ無しの突然の訪問となり、お忙しい中申し訳ございません」
「私は、こう言った者です」
天龍寺 司が、あいさつを切り出して光永の時とは別の名刺を渡すと隼人は驚きを隠せず、あたふたとした姿となった。
そして席へと着いた。
「ブッ、ブラックドラゴンの頭の天龍寺さんですか‥‥‥‥ !?」
「そうなると、店の駐車場に停まってる黒のFDは‥‥‥ !?」
「そうです。私の車です」
「やっぱり‥‥‥」
「あの、その様な方が俺に‥‥‥」
「あっ!? すみません、最近 峠のコースを利用させて頂いています‥‥‥」
「ハハハッ」
「そこは気にしなくても大丈夫ですよ」
「あのBコースは、誰でも使用していい様にフリーに解放しているコースですから」
「あっ、ありがとうございます」
「とても練習に適したコースで、感謝しています」
「ハハッ、それは良かった」
「ところで今日ここへ訪ねさせて貰った理由は、そのことに関係してるのですが‥‥」
「ウチの石神から聞いた話で、鳴海 隼人さんあなたに興味を抱いたので、来てしまいました」
天龍寺から名前の上がった石神が、あいさつを切り出した。
「鳴海さん、チーム・ブラックドラゴンのサポートをさせて頂いています私、石神 高広と申します」
「先日、ウチの野上 圭介から聞いたのですが、鳴海さんがウチの大山 聡のハチロクを撃墜したって話、本当ですか?」
「そっそれは、たまたま一回勝っただけで勝ったと言えるほどではないです」
「それよりも圭介さんと聡さんには、毎回みっちりと練習に付き合って頂き感謝しています」
その石神と隼人の話を、真剣な表情で聞き入ってた天龍寺が、その真剣な表情を崩し話し始める。
「気に入った」
「天狗にならないところがいい」
「良いドライバーは自分に自惚(うぬぼ)れない」
「ですが鳴海さん、勝負の世界では一回でも勝てば、勝ちは勝ちです」
「そう、その場で勝ち負けが決まる」
「それが故(ゆえ)に一度勝ったかといって自惚れていては、次回は負(やら)れる」
「とても気に入りました」
「どうです、次回よろしければウチのメンバーとAコース、通称『ドラゴンテール』にて勝負して頂けませんか?」
「えっ!?」
「俺が、あの本家ドラゴンテールを走らさせて頂けるのですか」
「練習期間は、しっかり1ヶ月あげましょう」
「その間は、優先的にAコースを使用していい様に管理の者に伝えておきますから」
「あっ、ありがとうございます」
「がんばります」
こうして簡単に勝負の日取りは決まって行った。今の隼人には、愛車FCで思いっきり走れる場所が必要だった。
隼人がスタンドの配達から戻る前に3名で交わされていた会話の内容には、隼人の父・涼介についての話しも含まれていた。
父・涼介についての件は、光永・天龍寺・石神の3名だけの秘密となっていた。また良い機会が訪れたら光永が隼人に話すと言っていた。
そして、この日を境に本格的に隼人の猛特訓がスタートされて行くのだった。
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