般若と椿

ほーたん文子

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 長い長い戦争が終わったことで、少しの兵隊とたくさんの死体が帰ってきました。国には食べるものも親もなく、道で細々と生きる孤児や、物を求めて流れ着いた人々で溢れかえっておりました。二つの国はどちらも疲れきっており、法も人々も混乱した、泥のような時代が来たのです。
 そんな中、女は三人の男を捜すため奔走していました。いろんな人を探し、脅し、殺し、一年後にやっと一人の居場所を突き止めました。

 その男はかつて家の物をせっせと盗んだ痩身の男でした。どうやら男は財を成し、金に物を言わせて地位を得て、今も金をつくることに目をぎらぎらさせているようです。女は早速男の屋敷に忍び込みました。成金の男らしくびかびかして趣味の悪い屋敷を進んでいくと、一際立派な部屋に必死に金貨を数える男がいました。
 そうっと近づき、挨拶代わりに背中を袈裟切りすると、男は悲鳴を上げつつ金をかばって部屋の隅に逃げました。剣を出して応戦しようとしましたが、所詮は傷と金をかばう身。哀れにも右手を女に断たれてしまいました。後がなくなった男は「病気の娘のためだ」「俺は悪くない」「金だけは」とみじめに泣き叫びました。女は唾を吐きかけて男の腹を短剣で突き刺しました。事切れるまで金をかき集めていた男の死に顔が見苦しかったので、ついでに跡形もなく切り刻んでから、誰にも気付かれずに女は屋敷を出ました。

 後日、男の屋敷から一銭も金がなくなったのと同時に、道ばたで暮らす戦争孤児の手にはおいしいパンがあったといいます。
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