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近づく男
ほろ酔い酒 ⑤
しおりを挟む思い出した!とばかりに言い出したのはカナンだった。
「そうだ!
セリちゃんと呑むのは~、この宿ではムリだよなあ。
王都までお預けかあ。セリちゃん、酒に強いかな?」
セリの限界量を知っておいた方が良いという理由で
酒に誘う予定だったな。
俺のいる安全なところで飲ませるぞ!
乱れても、寝ても大丈夫だ。
ちゃんとベットまで連れて行く。
着替えさせて、介抱して、そのまま…。
・・寝かせるしかないか。ポーションは口移しで飲ませるがな。
「このメンバーで呑ませちゃ可哀想だワ」
シュルトは、出会った頃に呑み潰されたのを根に持ってるのか?
ヒト族の酒量では、な。俺とカナンには足りない。
グスタフは体質か、爺さんに鍛えられたのか呑める方だ。
俺らじゃグスタフが酔ってもわからないんだがな。
ちょうど良いのでグスタフに聞いてみる。
「セリをどう思う?」
普段喋らないグスタフにセリがどう見えるか興味がある。
「あれはエルフの動きだな。」
出会った頃から斥候と言ってたが、狩人の装備でもある。森での動きも良かった。
「師匠ってヒトが、そうだったのかもネ」
「なるほどな」まあ考えられる。だが…
「貴族関係で、エルフから師事があった子供って、
どんな経歴だ??」
そう、エルフに会う場所は限定される。
セリのいた町のギルドマスターは、エルフだったが。
子供の時、師事できたとは思えない。
ヒト族の子供に、エルフが技を仕込む?
誰かからの紹介があっても、子供を大事にするエルフが
多種族の成人前の子を鍛える状況?
自分の子供と認知されたら別だが、その場合セリが独りで行動しているのはおかしい。
エルフの親は過保護だ。
独り立ちしたと認められる年齢までは手元に置いてきっちり鍛える。
教えや付き合い方、警戒方法諸々。
知り合いに預けた?
それもおかしいな。手習いにしては、練度が高い。
「実践的な森での生活ができなければ、ああはならん。」
グスタフの見解が添えられた。
過酷な暮らしだったのだろうか?
「傷は、ないけどな。」
全身を見たが、大きなものはなかった。
怪我をしたら手当てを受けられる環境。
ただし、監督する者がおらず、短期間に鍛えられただけ。
ほっておかれた?
ざわっと苛立ちに、魔力が乱れる。
「心の方はわからないワ」
シュルトが口惜しげに言った。
見えなものは見えない。だから怖いと。
「冒険者してて、楽しそうだったけどなあ。」
カナンが言うのもわかる。
嬉しそうにしているセリを思い出す。
依頼もしっかりこなして、旅を楽しんでいる。
同世代からは特出している方だろう。
それを身につけるのに、どれだけ大変だったか。
セリは話さないだろう。
そのうちの将来で、聞けると良いと思った。
酒を飲みながら。
苦い酒になったとしても…
甘く乱れさせて、溺れさせるだけだ。
…溺れるのは、俺の方か。
フッと笑って、酒を飲んだのだった。
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