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影の戦い

再び

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席に座らされ
ローランド様とはまた離れてしまったけど。

皆での夕食は飲み会に変わっている気がする。
私は飲まないけど。こういうパーティでの裏方にはご褒美があったのを思い出した。

(台所に行けば甘いものがあるかな?)
かつてはそうだった。今は違うかも。

“我が儘を言っちゃいけない”と思っている。
結婚は嬉しい

メイドの仕事は楽しかった?
報告に上がる仕事は、大変だった。慣れない立ち回りと知らない情報。
私事の感情と情報を分けるのは、メイドの仕事にも役だったと言えなくもない。

(メイドの仕事とは思えなかったけど。)
役に立っていると実感できた。


それが変わる。

今度はメイドを使う側の人間になる。
社交に出て、お茶を淹れる方ではなくなる。

きっとあの、大変な招待状の山を前に頭を抱えて文を考えるんだわ。
手伝ってくれるのは誰だろう?知り合いのメイド?

それを決めるのは私?いえ。まだお義母様の意向を聞いて決めるんだわ。
紹介してくださるかも。

だから、私は“公爵家の嫁”。

そうなる。


手近にあったチキンを口に運ぶ。いつもの味だ。
賑やかに騒がしく。挨拶に来てくれた女性たちと会話して祝いの言葉を告げられる。
母の友人が来てくださった。

「めでたい!めでたいな~。」

王城では考えられない盛り上がりに、そろそろ女たちは場所を移動する。
男達の飲みや騒ぎやを避けて、少しの片付けと休憩。

帰るのはまだ先で、井戸端会議になっているかな。

(ちょっと覗きに行こうか。)これだけの準備、大変だっただろうし。
きっと母と料理できる女性たちが前々から、朝から準備して。食材は持ち寄りだろうか。

お祝いに持ち寄ったお酒はまだあるかな。
お土産に持って帰ってきたお酒出していいんだよ?

(ローランド様をひとりにするのは申し訳ないか)と見れば、
父が「未来の息子だ」と自慢している。

結構飲んでるようだけど、ご機嫌に声がでかくなるだけであとは寝るのよね。あの状態はまだ持つ。

ちょっと席を外しても大丈夫なくらい囲まれて、祝われているローランド様。
私の方はもうお祝いの言葉も順々にもらい、落ち着いたけど。

(ひと言かけて、席を外そう。)
そう決めて、輪の中に入り込んだ。

「ローランド様、大丈夫ですか?」
少々深めに席に座っている。顔は赤くなっていないけど、ふらついてないかな?
食事もあまり口にされていないようで、お祝いに次々と注がれ飲まされていたのを見ている。

お酒お強いのかしら?
ふわりと笑うローランド様は柔らかな表情だ。

(あ、昔見た笑顔だ)と思い出す。

「マライヤ」

呼ばれるまま近くに、正面に手を握られて。


「貴女が好きだから」
とろりと甘い瞳は真っ直ぐで、再びの求愛?
祝い客達の目の前で。

「うぉおおおお!!」盛り上がりが最高潮に!

家族の前はちょっと、いえ。だいぶ恥ずかしい!
父と兄。声に驚いて来た母とお義姉さんが見えた。


そんな冷静な思考と、混乱している私が見たもの。
「あっ」

仕事、長旅、お酒で限界なようで頭が揺れている。

「ローランド様!」
お水を渡し少し飲んでいただく。このままじゃ、寝てしまわれる?

「部屋にお連れしよう」と兄が支えて移動する後ろで…

「かんぱーい」

酒宴は主役がいなくても続くらしい。
実家らしいか。

私はというと
人前での「好き」の言葉が頭の中で繰り返されてる。
精悍な顔に、出会った頃の少年のような笑顔。
上気した顔に、潤んだ瞳。

(お、お酒をめされてたからよ、きっとそう!)

熱気に顔が赤くなったのを自覚した私だった。


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