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聖レスク学園

貴族の上級生

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マナーの授業というのは、貴族様へ失礼しない最低限のことを学ぶ授業だ。

ここには貴族家の学生は授業を受けていない。理由は明確で、平民との差を感じる。

「貴族の子がこの授業を受けないのは、家庭教師に教わった内容だからだって。」
「専任の教師がつくって想像できないわ」

言う事はわかるけど、口調も態度も悪い。
「ミミカは喋らない方がいいと思う。」

この友人はハキハキして元気が出るが、口は災いの元という言葉を送りたい。

“貴族との会話は細心の注意を払うべし”

実地で行うしかない。学園では身分は問わないとはいえ
まったく無視できるものでもないと教師の方も教えるのに必至ね。

実際に退学に追い込まれた生徒もいるらしいと、真面目に身につけるよう脅しのような言葉に
ミレーネは危機感を抱く。

学園で無事卒業できるためには、目をつけられないのが肝心らしいわ。
普段より緊張感の増した授業が終わり、先生が出ていかれると教室内の空気は弛緩する。

「堅苦しい雰囲気になると、肩が凝るわ」

ミミカの言葉に賛成だけど、苦笑をこぼすだけにする。
教師に聞かれたら、不敬になると怒られそうだ。あの教師も貴族であるらしいが上位貴族の関わりに苦労しているみたい。愚痴めいた例え話が、実際にあった怖い話だった。


帰るだけの教室は、友人同士でおしゃべりをしているところだったけど
王子様派閥の襲来と呼びたくなる出来事が起きた!

ガラッと乱暴に、複数人が入ってくる。皆、貴族様だろう。その一人が教壇に立った。

「我々は自由恋愛派だ。有志を募る!」

上級生だろうか?顔に覚えはない。静まり返る教室を見回して付け加えて言った。

「皆、賛成なんだな。」


断れる文句も出てこない。たった今、貴族様への言葉は慎重にと習ったばかりなのだ。
顔がわからないとはいえ、服装で貴族だと分かる。

彼らは勝手に納得して、去っていった。


何か返事を待っていたわけでは、なかったらしい。彼らは来た時と同じように即、消えていった。
隣のクラスにも突撃しにいくのだろう。

「何あれ?」
「何したかったんだろう」

「お貴族様のすることはわかんねー」


とりあえず、何もなかったんだと思いたいミレーネだが
本当にこのまま平穏に過ごせるかは、不安だった。
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