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聖レスク学園

カップル成立

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「仲悪いなあ」
「しっ!ミミカ、聞こえる。」

試験結果の張り出された廊下で、第三王子と公爵令嬢が言い争っている。
正確には、従者同士で喧嘩腰に言い合いをして2人は黙って睨み合っている形だ。

この場にいる生徒は、挨拶なしに移動ができない相手だから増える一方。
そのおかげて私達の会話は、聞こえなかったらしい。

「だって!あんな真前で陣取るぅ?!」

ミミカを黙らせる方法をまじめに考えなければと思って
持っていた小さなクッキーを口に放り込んだ。

「友人を退学にしたくはないから、許してね。」

ミミカは少し固まった後、モグモグとクッキーを咀嚼していた。

お茶会を主催した公爵令嬢の女子生徒が集められた。あの記憶にまだしっかり残っている。
誰も何も言えない。


「皆さん!どうされたのですっ」

教師らしい女性が訪れ、やっと場所を移すようだ。
頭を下げたまま、足音が遠ざかるまで待った。


ようやく、皆んな動けた。


そんな衝突めいものが度々起こるようになって、先生方はすぐ駆けつけるようになった。

「やめれば良いのに」
「そうはいかないんでしょ。」

そんな問題解決とまではいかないが、小休止の状態で学園生活は進んでいく。


なに事もなく、過ごせますように。
そう願ってミレーネは毎朝、寮の玄関を出た。


トラブルは向こうからやってくるとは言うけど、今回のは嬉しい知らせに入るみたい。

「私に一目惚れしたんだって!」

ミミカに恋人ができたと嬉しそうに話がはじまった。

相手は、獣人の男の子だ。印象は、よく喋る。
どんだけかっこいいか、どこにデートに行くか。浮かれて声が大きくなっていたらしい。


「はしたない」

その言葉を発した方を見ると、公爵令嬢のお友達の方々。
格好でそうだとわかる、高い装飾品を身につけた人達だった。

お茶会にいた人達?
ミレーネの顔の血の気が引いた。多分、ミミカも固まっている。



「静かに、ね?」

高位貴族のお願い、を断れることなんてあるんだろうか?
マナーの教師に教えてもらいたい心境だった。


流石のミミカも言葉が出ないらしい。

彼女達の迫力に呑まれたものの、私とミミカは頷いて、か細い声で返事した。
それで許してもらえたらしい。立ち去って行った。


私達も早々にその場を離れる。拙かったかな、と口が重いけどミミカに声をかけた。

「気をつけて、ね」
「うん」


寒気が残っている気がする。寮に帰る気にもなれず。


幼馴染に怖かったと、聞いてもらおうと思ってミレーネは図書館に行った。
本が好きな彼の姿を思い描いて。
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