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異世界ダイブ

9-①

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白い空間の滞在は、今回ほとんどなかった。着いたと思ったら、すぐに黒が多くなり白い空間は小さくなってた。

(帰ってこられた。)

カプセルの窓は、濡れている。私もか。検査着は少しずつ乾いていく素材だったかな。
ぼーっとしてしまう、夢心地。慌ただしい音が、一枚膜の向こうみたいに少し遠い。

「立てるかね?」
「凄く、だるいです。」
クラークに否と答えると、ツナギの技術者に車椅子へ移動してもらえた。

かなり体力を削られたらしい。ぐったりな気分。白衣の人にチェックしてもらう。
プールの後くらいだるい。それにちょっと光が眩しい。

私は検査をされるがまま。寝てしまいたいが、寝れそうにない。着替えも手伝ってもらい、検査結果が出るまでの待ち時間にはクラークに話し相手になってもらう。報告のようなものもできるだろう。

「はしゃぎ過ぎました。」

ほんとに。ここ何年かないほど休憩もこまめに入れず、体調の心配もない解放感。
「凄く楽しかった。」

手元に残らない買い物の成果が少し虚しい。けど、食事のおいしさやファンタジーな服装。時代錯誤と取られかねないコーディネートが直に見れる。あのワクワク感は、久方ぶりというか。

「案内人の印象はどうだった?」
「印象?穏やかな男性。」

そう答えたら、たっぷり間があった。
「そうかゆっくり休むようにな。」

少し会話してそれで終わり。行動履歴みたいなのはあるし、話すにもこのくらいの情報しかない。誰か向こうの人と話すこともなかった。根幹に、私は深い関わりなど望んでいないのだろう。

なんとかゆっくり歩いて。部屋を移動した。呼べば人が来てくれる。病室代わりに使われている専用の部屋で、端末を見るために言葉を発する。

「ウインドウ」

出る訳もなく、側にあった端末を手に持った。じわっと恥ずかしさが湧く。今度は指で端末を開くと更新された中に、自身に関する情報の文章を見つける。

「掲載されたんだ」

討伐の人があまり来ない地域らしくて、あまり使える情報じゃないと思ったけど。本当に観光しただけの情報。
買ったものもデータとして残っていた。

「服の素材として、使えるかな?」

ゲームで使えたら面白いのに。そこのところを調べていたら、医師が訪れた。

「結果は良好です。ですが疲れが出ていますから、2日は安静にしていてくださいね。」

欲しいものはないかと聞かれ、米と味噌汁が欲しいと言ったら笑われてしまった。
結構、定番な注文らしかった。パン主体の文化だから米が、恋しくなるらしい。さがだろうか。
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