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6. 不思議なことねー

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「浮気されてたんだって?」

「お姉様。」


結婚して出て行ったお姉様が、実家に帰ってきていた。妹を慰めるためと婚家から帰ってきてくれたと言ってるけど。

「息抜きよね?」

「婚約破棄するんでしょ?なら特にいう事ないわよ。」

(即、切り込んできたわ。)

お茶会での戦い方や社交界での振る舞い方をしっかり教えてくれたのは、お姉様だ。
このひと癖もふた癖もある性格で、いなしたり倍返ししたりと強く生きている。

尊敬しているが、真似できない私のお姉様。

「だってもう一度頑張ってみるって言ってたら、やめとけって言いにきたのよ。」

我がもの顔だ。家を出たとは思えないくらい自然と。別にいいんだけど。ここはお姉様の実家でもあるのだし?
「それはご心配おかけしまして…」
「またかもしれないって思い続けなきゃいけないもの。」

気持ちの整理がつきつつあった。長年、幼少の時からの婚約者とはいえ政略結婚の範囲だわ。恋ではなかったけど
愛情は感じていた、のかさえ今は混乱している。

(お姉様と一緒にお茶するのなんて、いつぶりかしら。)

そう考えを遠くにやっていると…

「ところで噂では浮気ってなってるけど、そこんとこどうなの?」
「愛し合っているそうですよ!」

「へえ。すぐ冷めそうね。いつまで持つか賭ける?」

賭けるの?傷心な妹の元婚約者の行く末に…
「何を?」

「ケーキ。果物たっぷりフルーツケーキをお姉様が買ってあげる。貴女の方はクッキーで良いわ。
あの懐かしのメイプル味クッキー。」

負担を考えてくださったのか、余裕の現れか?
お姉様は今年のうちに賭け、私は流石に来年まで持つと思ったので賭けは成立した。


「失恋ってわけなじゃないけど、ささっと次にいきなさいよ。何年か後には当然、興味が移ってわよ。」


「掘り返す輩がいても、ああそんな事もありましたねーで済むわ。」

説得力絶大の口調だった。



「あっさい付き合いなら、深い関係になるのかしら?」
「結婚まで卒業後すぐだったのよね。」

「これからどうするか、話しているのかもねえ。」
「そっちはどうでも良いけど、私どうするか決めないと。」


取り止めのない話から、気になっていたことへ。


「お父様には?」

「破棄の方が大変そうで。」


「時間を作ってくれるわよ。気にかけているもの。私に連絡来たのも、お母様とお父様もよ。


もやもやが吹き飛んだ。


卒業するまでには自分の身の振り方を決めて、あの婚約者、元婚約者の事は忘れる。


「友人と劇に行こうかな。」
「恋人が殺されるやつとか。」


物騒な言葉が飛び交っても、私達は楽しい時間を過ごしたのだった。
もう大丈夫と思えるくらいに。
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