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やっと手切れ

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「で?」

「婚約解消は待ってほしい!」
頭を下げる(今日限りの)婚約者、親睦を深める(最後の!)お茶会。

「予想通り、お母様の取りなしで最後のお茶会をぶち込んできた。」
ぽそっと扇で独り言を遮るも、メイドには聞こえたようだ。

「“ぶち込んできた”は良くないのでは?」

「“ぶっ込んで”、いらっしゃった?」

「…“強行して来た”くらいで。」

諫めてくるティンは、メイド服での参加だ。
お茶会の練習に良いと、本人の希望でもある。

このやり取りしている間に、
謝っているくせして、目線がメイド服に行くのがモロわかりで。

「詫びの態度じゃないわね。」

あたしの言葉に、シュバっと頭を下げる。

「こちらが散々、気を遣ってもてなした時はダンマリだった癖に。
嫌なら婚約解消すれば良いじゃない?性格の不一致なんてよくある事よ。

そんなにうちが怖かったのかしら?」

侯爵家で力もそこそこある。
昔からの付き合いで、婚約話も出た。

一存で断れないとしても、方法がなかったわけじゃない。
「どうしたかったのよ?」

疑問はそこだ。

聞くも、首を垂れるばかり。また沈黙をするつもりか
その態度に飽き飽きしてため息を吐く。
タイミング良く出された熱々のお茶を飲んだ。

客扱いなので、もう一つも出される時…メイドに熱視線を送ているのを見逃さない。


「ティンは?」

「かわいい!」

「あたしは?」

無言だ。

「(こいつ!)話しかけても何も答えなかったのは
あたしが可愛くなかったからとか、ぬかすんじゃないだろうな?」

態度がそう言っている。
そして言葉を発さない。このまま有耶無耶にする気に思えた。

「顔も見たくないわ。」

席を立とうとするも「待ってくれ!」
行く手を阻まれた。

「また会いたい。」


「両親にでしょう?」

あたしにではない事は確かだ。
とりつくれないのは幼いから?バカだからでしょ。



「他を探す方が互いのためよ」
そう別れを言い渡した筈なのに…

「待って!!」

その声の後、ドスンと音がした。

「お姉様に触れませんよう。」

「ティン。あなたもそんなのに触っちゃダメよ。」

「気をつけます。」


こうして、何の身にもならないお茶会終わりになった。



それからしばらく、ご機嫌取りのようなプレゼントが届く。


「大人って、諦めが悪いのね。」

クッキー、前とは違う種類のチョコレート、
フルーツ入りのパイなどあの手この手。


「あたしにだって最低限、付き合う上で敬意ってものを払おうとしたのよ?」

「あれは救いようがないかと。切る一択です。」


そうして消化したお菓子に、ウエストがキツくなったのが
意趣返しだったら成功だった。

ティンも何かとよく動いていたから、同じ状態なのでしょうね。
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