1 / 3
その令嬢
しおりを挟む
今日は雨が降りそうだ。
私の処刑の日は、気持ちの通りに曇天。
ようやく、この疲れも鬱々とした牢屋ともお別れできると
涙が出そうよ。
まあ、水だけはお代わりできたからね。
そろそろ、終わる。私の人生を振り返れば…
怒り?
この胸あたりで渦巻く気持ちをどうにか、相手にぶつけられないものか。
その機会は得られなさそう。時間がもう、ない。
せっかく溜め込んだ気持ちなんだから、
呪いに変わらないだろうか?
こんな陰気で曰く付きなところなんだから、それくらいできても
おかしくないでしょ?
お祈りのように、手を組んでみる。
私、アウラは…
一応、貴族のアウラ・レイヴィトン
は王と王子と言って憚らない馬鹿達と、あのケチくさい腰巾着に…
・
・
・
ついでに、おばさんがやってる食堂のツケを払わない酔っ払いおじさんに
呪いをぉおおおおおっ」
グググっと祈る手に力がこもる。
込める。
天に掲げる、もっと、もっと!
呪いくらい掛けられれば、磔(はりつけ)刑もらしいと思えるのに。
うら若い乙女を磔にするなんて、誰得なのよ?
そう冗談めいても、既に広場に用意はなされているらしい。
もう工事の音は聞こえないかった。
(呪いよ成就しろ!)
そうすれば、私が処刑に至る原因達に、
「ざまあみろ」と言ってやれるのに。
私は庶子だ。
タネ馬として有名な男は、貴族のクセに
(いや貴族らしいの?わからないケド)
アレを父親と呼ぶことなんてない。女に刺されて死んでるし。
タネ馬で十分。
探し出されるまで、それまではフツーに暮らしてたのに。
メイドをしていた母さんは、小さい頃に死んでいて。
(多分、“おてつき”とかよく聞く話で私ができた訳だ?)
食堂を開いているおばさんが育ててくれた。
「無茶してないとイイけど。」
掠れた声は、懐かしいおばさんのシチューを食べたいなと過去を思い出にした。
カビかけのパンひとつ、水はご自由にって
「これが最後の晩餐?!!」
(まあ食べたけど!)
水も飲める分何回もお代わりしたわよっ
それくらいしか、意趣返しができないのは悔しいわ。
そもそも、妹を害した罪って。
「誰よ?」
(どれよカシラ?)
勝手に探して、貴族の家に連れてきて
勉強しろって煩くて、パーティにも出さなくって
顔もよくわからない妹をいじめたって?
自称この町の王が、言うのよ。
「全く。碌なことにならなかったなあ。」
足音がこちらに来ている。
「時間だ。」
耳障りな金属の鎖の感触。
「ホント、ダッサイ腕輪ね?」
眩しくかんじる空は曇天で
この小さな集落での、自称王が座る。
磔られれば、その態とらしい高さに視線が合うはずだけど?
「私の目も見れないくせに、王だなんて嗤わせる。」
汚れた服でも、磔にされても
私は堂々とできるのに、アンタは私の目さえ見る事ができないのね?
私は最期に
フッと嗤ってやった。
私の処刑の日は、気持ちの通りに曇天。
ようやく、この疲れも鬱々とした牢屋ともお別れできると
涙が出そうよ。
まあ、水だけはお代わりできたからね。
そろそろ、終わる。私の人生を振り返れば…
怒り?
この胸あたりで渦巻く気持ちをどうにか、相手にぶつけられないものか。
その機会は得られなさそう。時間がもう、ない。
せっかく溜め込んだ気持ちなんだから、
呪いに変わらないだろうか?
こんな陰気で曰く付きなところなんだから、それくらいできても
おかしくないでしょ?
お祈りのように、手を組んでみる。
私、アウラは…
一応、貴族のアウラ・レイヴィトン
は王と王子と言って憚らない馬鹿達と、あのケチくさい腰巾着に…
・
・
・
ついでに、おばさんがやってる食堂のツケを払わない酔っ払いおじさんに
呪いをぉおおおおおっ」
グググっと祈る手に力がこもる。
込める。
天に掲げる、もっと、もっと!
呪いくらい掛けられれば、磔(はりつけ)刑もらしいと思えるのに。
うら若い乙女を磔にするなんて、誰得なのよ?
そう冗談めいても、既に広場に用意はなされているらしい。
もう工事の音は聞こえないかった。
(呪いよ成就しろ!)
そうすれば、私が処刑に至る原因達に、
「ざまあみろ」と言ってやれるのに。
私は庶子だ。
タネ馬として有名な男は、貴族のクセに
(いや貴族らしいの?わからないケド)
アレを父親と呼ぶことなんてない。女に刺されて死んでるし。
タネ馬で十分。
探し出されるまで、それまではフツーに暮らしてたのに。
メイドをしていた母さんは、小さい頃に死んでいて。
(多分、“おてつき”とかよく聞く話で私ができた訳だ?)
食堂を開いているおばさんが育ててくれた。
「無茶してないとイイけど。」
掠れた声は、懐かしいおばさんのシチューを食べたいなと過去を思い出にした。
カビかけのパンひとつ、水はご自由にって
「これが最後の晩餐?!!」
(まあ食べたけど!)
水も飲める分何回もお代わりしたわよっ
それくらいしか、意趣返しができないのは悔しいわ。
そもそも、妹を害した罪って。
「誰よ?」
(どれよカシラ?)
勝手に探して、貴族の家に連れてきて
勉強しろって煩くて、パーティにも出さなくって
顔もよくわからない妹をいじめたって?
自称この町の王が、言うのよ。
「全く。碌なことにならなかったなあ。」
足音がこちらに来ている。
「時間だ。」
耳障りな金属の鎖の感触。
「ホント、ダッサイ腕輪ね?」
眩しくかんじる空は曇天で
この小さな集落での、自称王が座る。
磔られれば、その態とらしい高さに視線が合うはずだけど?
「私の目も見れないくせに、王だなんて嗤わせる。」
汚れた服でも、磔にされても
私は堂々とできるのに、アンタは私の目さえ見る事ができないのね?
私は最期に
フッと嗤ってやった。
4
あなたにおすすめの小説
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
魔女の祝福
あきづきみなと
恋愛
王子は婚約式に臨んで高揚していた。
長く婚約を結んでいた、鼻持ちならない公爵令嬢を婚約破棄で追い出して迎えた、可憐で愛らしい新しい婚約者を披露する、その喜びに満ち、輝ける将来を確信して。
予約投稿で5/12完結します
まさか、今更婚約破棄……ですか?
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。
エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。
なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!?
色々こじらせた男の結末。
数話で終わる予定です。
※タイトル変更しました。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
帰還した聖女と王子の婚約破棄騒動
しがついつか
恋愛
聖女は激怒した。
国中の瘴気を中和する偉業を成し遂げた聖女を労うパーティで、王子が婚約破棄をしたからだ。
「あなた、婚約者がいたの?」
「あ、あぁ。だが、婚約は破棄するし…」
「最っ低!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる